残念ながら閉店が決まった横浜松坂屋(本館) |
レトロな装飾が美しい、横浜松坂屋本館
横浜松坂屋は7階建てのデパートである本館と、JRAエクセル伊勢佐木として利用されている西館があります。今回、閉店となってしまうのは本館です。本館は、1921(大正10)年に建築され、株式会社野澤屋呉服店として創業しました。その後、建物は増築を重ね、現在外壁に見られるアール・デコ調の装飾は、1934(昭和9)年の改装の際に鈴木禎次によって設計されました。横浜の歴史的建造物に精通する吉田鋼市氏(横浜国立大学大学院教授)の講演によると、鈴木禎次は名古屋にある松坂屋の本・支店も設計した優れた建築家で、この本館は希少な鈴木作品の現存例とのことです。
現在見ている外壁のデザインは、昭和9年の改装時のものとされています |
■名称が変わっても受け継がれてきた建物
この本館の名称は、1934(昭和9)年には野澤屋、その後、1973(昭和48)年にノザワ松坂屋となり、1977(昭和52)年に横浜松坂屋となりました。2004年11月には、本館・西館ともに横浜市歴史的建造物に認定されました。
認定後、外壁は横浜市の援助を受けてクリーニングされ、その際に吉田鋼市氏も立ち会われ、そのデザインを間近で見られたとのこと。外壁の装飾部分は、1枚1枚陶器(テラコッタ)パネルを張ったもので、力強く、派手なデザインが特徴的。近くでよく見ると、何種類ものデザインパターンがあるそうです。
クリーニングの際にアップで撮影された外壁。左はクリーニング前、右がクリーニング後。継ぎ目部分は弱いため、あまり汚れが落とせなかったそうですが、とってもキレイになりました(撮影:吉田鋼市氏) |
歴史的建造物のプロ・吉田氏が、「とにかく装飾がカッコいい。横浜市民は誇ってよい建造物」と太鼓判をおすほど価値がある本館。外から見るだけでなく、中にも入ってみましょう。レトロなデザインが店内のあちこちで見られます。