三溪ゆかりの古民家レストラン「隣花苑」
隣花苑 玄関までのアプローチ |
※追記:2020年8月2日に惜しまれつつ閉店
隣花苑の場所は、三溪園入口から徒歩約3分の静かな住宅街の一角です。電柱に道案内が出ているので、迷うことはないでしょう。「ここの奥です」という看板に従って進むと、入口がありました。手入れされた庭が、静かに迎えてくれます。さらに進むと、ここだけ時間が止まったような田舎家の入口にたどり着きました。
左:曲がり角にある看板 右:昔話に出てくるような玄関 |
まるで歴史博物館!
「ごめんください」──知人の家をたずねるように敷居をまたいで中に入ると、そこは囲炉裏がある土間でした。かまどや井戸など、歴史博物館でしか見たコトがない生活道具も置かれています。思わず、見渡してしまいます。歴史博物館のような昔の生活道具が置いてあります |
囲炉裏の後ろには、三溪直筆の書がかけてあります。
「隣花不妨賞(りんかしょうするをさまたげず)」
後で教えてもらうことになるのですが、三溪が好んで使ったとされる言葉で、「隣の家の花も自分の家の花も、皆で愛でられるようにしましょう」という意味だそう。この言葉が店名の由来になっています。
玄関を入ると囲炉裏が。店名の由来となった三溪の書がかけてあります |
「お待ちしておりました」──ほどなく、笑顔のステキな女性が出迎えてくれました。この方が女将さんの西郷槇子さんで、原三溪のひ孫にあたる方。パンフレットで見た原三溪の写真と、どことなく似ていらっしゃいます。
600年もの歴史を刻んだ建物を利用
江戸時代に増築されたとされる奥の間 |
隣花苑にまつわる季節の書や絵画が飾られています |
基本は飾らない家庭料理
どの部屋にも季節の花が活けてあります |
三溪麺(さんけいそば)セット4,042円(税・サ料込)……10月に訪れた際のメニューです。季節によって内容は異なります |
「料亭で板前さんが作る豪華な料理ではなく、旬の素材を使った家庭料理を、季節の器に盛り付けて、提供しています」と女将さん。家庭料理とはいうものの、前菜だけでも6品もあります。お吸い物には、サンマを細かくたたいたつみれが入っています。現代の家庭では、このような手間のかかった料理は出てこないですよね。どれも甘すぎず、辛すぎず、出汁がきいていて、ていねいに作られた味です。
左:手前からお椀(サンマのつみれ汁)、前菜(大豆甘煮)、前菜(いちじくゼリー寄せ、かぼちゃ茶巾しぼり、いんげんごま和え、しめじ茸、えのき茸、黄菊おひたし、柿・こんにゃく・春菊白和え) 右:松茸ごはん |
和洋中がひとつになった三溪麺(さんけいそば)
三溪が考案したメニューのひとつ、三溪麺(さんけいそば) |
「そば」といってもそば粉ではなく、小麦粉で作られた麺で、細いうどんという感じです。タケノコ、きぬさや、薄焼き卵、ハム、ひき肉、きのこなどが入った、とろみのついたあんがかかっています。「よくかきまぜて、どうぞ」ということで、お行儀悪く、ぐるぐるとかきまぜていただきます。
味は、一言でいえば中華風。とはいえ、和洋中がお椀の中でひとつになっている、という複雑な味です。当時は、ずいぶんとハイカラな食べ物だったにちがいありません。自信を持ってすすめる三溪翁の姿を思い浮かべながら、楽しく、おいしく、のんびりといただきました。
手入れされた庭。四季折々の風景が楽しめます |
■献立一覧(1名~40名まで、要予約)
・三溪麺セット4,042円(15:00まで)
・7品6,352円
・10品9,240円
・12品15,015円
・15品20,790円
※すべて税・サービス料(10%)込
※16:00以降は10,000円~
※三溪麺コースは1時間、その他のコースは2時間の部屋代込
延長の場合と19:00以降は、別途部屋代が必要となります。
隣花苑(りんかえん)※追記:2020年8月2日に惜しまれつつ閉店
・所在地:横浜市中区本牧三之谷52-1
・営業時間:12:00~20:00(入店は18:00まで)
※ランチのみの三溪麺セットは15:00(L.O.)まで、要予約
・定休日:水曜日、夏期(8月1日~8月31日)、冬期(12月26日~1月6日)
・交通・アクセス:根岸駅より1番乗り場《市バス58・99・101・108・126系統 》10分 本牧下車・徒歩7分
横浜駅東口より2番乗り場《市バス8系統》35分 本牧三溪園前下車・徒歩3分
・地図:Yahoo!地図情報
【関連サイト】
・記事:紅葉とともに愉しむ、横浜ランチ
・記事:空に赤、地に黄色──秋の三溪園
・横浜レストラン・グルメスポット