鉄道/寝台・夜行列車

最後の力走、寝台特急「富士・はやぶさ」(5ページ目)

半世紀にわたって東京と九州各地を結んできた伝統ある寝台特急ブルートレイン。最後まで残った「富士」「はやぶさ」もいよいよ2009年3月で引退となる。栄光ある列車の最後の姿をレポートする

野田 隆

執筆者:野田 隆

鉄道ガイド

朝の東海道本線を悠々と走る

藤沢を通過する「富士」「はやぶさ」
終着までもう少し。藤沢(神奈川県)を通過するブルートレイン「富士」「はやぶさ」
浜名湖
朝もやに煙る浜名湖を通過。新幹線の線路と並行して走る
もうひと寝入りして、まどろんでいると「ハイケンスのセレナーデ」のメロディーが流れて朝の挨拶が始まった。列車は夜通し走って定時運転だ。豊橋付近を通過中で30分もしたら浜松到着である。やがて朝もやに煙る浜名湖を渡っていく。まもなく車内販売が始まるとのこと。サンドイッチやコーヒー、お弁当が手に入るらしい。夜の車内販売はなかったから、これは嬉しい。

浜松6時30分着。ここでスーツ姿にアタッシュケースを持った人が降りていく。浜松に帰ってきたのかもしれないが、新幹線に乗り換えて東京へ急ぐ旅慣れた人という可能性もある。9時前に東京駅に着くには、浜松か静岡で乗り継ぐのが便利なのだ。

茶畑
静岡らしい茶畑の脇をのんびり通過
浜松を出ると、天竜川を渡る。古めかしい鉄骨で覆われた鉄橋が物々しい。掛川を過ぎ、牧の原台地の茶畑の中を、カーヴしながらのんびりと進む。静岡を出てしばらくすると、由比の海岸に出る。通路に出て駿河湾を眺めようとするが、朝日がまともに差すのと、並行する道路が邪魔でよく見えない。位置の関係で、右手前方に富士山が見えることがあるようだが、よく分からなかった。


富士山
ブルートレイン「富士」の車内から見た富士山
富士川を渡って、富士に到着する。「富士」が富士に停まるとは面白い。個室に戻れば、進行方向左手に富士山がよく見える。手前には工場や貨物ヤードが続くのが無粋だが、製紙工場が多い所なので致し方ない。

新幹線とは無縁の沼津に停まり、山中に入って丹那トンネルを抜ければ熱海。相模湾の絶景が見える早川、根府川を過ぎれば、東京が段々近づいてくる。陽も高くなり、ちょっと間延びした時間になった9時58分定刻に列車は東京駅10番ホームに滑り込んで行った。

東京到着
東京駅に到着すると、あっという間に機関車は切り離され、一旦、神田方面へ引き上げたあと9番線を通って新橋方で待機して品川への回送運転に備える。朝日を浴びた寝台車は老朽化が目立ち、ちょっと惨めだ
朝日を浴びた青い客車をホームに降りて眺めると、ところどころ剥げていて長年の酷使に疲れ果てたようだった。

車両が引退の時期を迎えているのは誰の目にも明らかだが、夜行列車の存在自体を抹消するのは、どんなものだろうか。工夫とやる気次第では活路は見いだせる気がするのだが、ともあれ「はやぶさ」「富士」の廃止は何とも残念である。

<関連リンク>
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