2003年2月18日、韓国の大邱市地下鉄1号線 中央路(チュンアンノ)駅構内で、大規模な地下鉄火災が発生し、死者192名、負傷者146名を出す大惨事となりました。すぐに、日本でも緊急点検と現状把握が行われ、その結果に驚かれた方も多のではないでしょうか?

今年(2004年)2月には、モスクワ中心部を走る地下鉄2号線 ザモスクボレツカヤ線でテロによる爆発事件が発生しており、もしも日本で同様の「テロ」「火災」が発生すれば、大惨事に発展することは避けられません。

現在、一部の駅では既に改修が終わっていますが、ほとんどの地下駅は手つかずの状況です。このような状況の中でも、毎日地下鉄を利用しているという人はとても多いのです。

今回は、地下駅で火災に遭遇した時の避難方法を検証してみます。

階段を煙よりも早く上るのは無理?

階段では煙に注意
階段では煙に注意

1993年と2001年に発生した「ニューヨーク市 ワールドトレードセンター超高層ビル火災」では、避難経路である階段を下りていくのに要した時間は秒速5センチメートルだったというデータがあります。

煙というのは、横に向かっては秒速0.5~1mの速さですが上に向かっては秒速3~5mで移動するというのに、階段で避難をする場合、下るよりも上る方が大変です。つまり、上記のデータ以下の速度で避難することになってしまう可能性が高いのです。

ビルなどで火災が発生した場合は通常なら地上に向かって下へ避難しますが、地下火災の場合は地上に出る為には上に向かって避難をすることになります。地下で火災が発生すると、人体にとって非常に危険な煙と共に避難をすることになるのです。

韓国の地下鉄火災では、出火階である地下三階に排煙設備がありませんでしたので、乗客は煙と一緒に階段での避難を強いられました。

地下鉄火災の場合、避難方法はもう一つ考えられます。

それは、トンネル。
この火災でも、消防隊は地上からだけではなく隣駅からトンネルを使用して火災現場に到着しています。ただし、この避難方法にも注意しなければいけないことがあります。まず、線路に降りるということは禁止されています。

基本的には、火災によって停電になったとしても「非常電源設備」や「自家発電設備」によって電気は確保されます。線路に降りた人がいることによって、その駅から避難しようとした電車が発車出来なくなる可能性もありますので、駅係員の指示に従って行動しましょう。
(韓国の地下鉄火災のように何の指示も無かったり、火や煙が迫っている場合などは自分自身で判断しなければいけなくなります。)

トンネル内の排煙口
トンネル内の排煙口

排煙設備の設置場所で、避難方法は変わる

韓国の地下鉄火災では、出火階ではなく上層階に排煙設備が設置されていました。スプリンクラーが作動したことによって火勢が弱まった3,4番ホームを除けば、換気口からの排煙状況を見る限り排煙設備は、作動していたことがわかります。

しかし、上層階で排煙をおこなうと、出火階もしくは出火地点で排煙を行うのと違い、煙を引き込んでしまうという難点があります。

日本の地下鉄では、トンネル内に排煙設備が整備されていることが多く、駅員などの操作によって排煙機が起動するとトンネル内に煙を吸い込むことになります。

この場合、トンネルからの避難は不可能になり、階段はほぼ煙の脅威から逃れられます。

駅によって、避難方法が変わるのは困ったものです。私も、行ったことのない駅で火災に遭遇してしまったら、駅員さんの避難誘導が無しでは「トンネルか?」「階段か?」どちらの避難方法を取ればいいのか判断しかねます。利用したことがあったとしても、火災が発生したホームの天井、階段の天井などに「ガラリ」タイプの排煙口が付いている場合は、それを見つけるのはなかなか困難です。

地下模型による加圧排煙実験

また、火災報知器との連動がなく、手動で起動させる「排煙方法」の場合、乗客の運命は駅係員に委ねられます。まだ煙が達していないのに排煙機を起動してしまうと、煙を引っ張ってきてしまいます。逆に、煙が充満しているのに起動をかけるタイミングが悪ければ、被害が拡大してしまいます。



実用が待ち遠しい加圧排煙方式

やはり、地下空間では加圧排煙方式が一番いいのではないでしょうか?加圧排煙とは、火災時に階段や附室にクリーンな空気を給気することで、避難をするのも消防隊が進入するのも、煙による妨害を避けることができるシステムです。さらなる技術の開発と、地下空間への設置が望ましいものです。