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“美・知・動”を兼ね備えたシェルティー(2ページ目)

“シェルティー”の愛称で知られるシェットランド・シープドッグ。「犬種シリーズ」の第3回目は、美しさ、知性、そして運動性能をあわせもつ、魅力たっぷりのシェルティーをご紹介します。

大塚 良重

執筆者:大塚 良重

犬ガイド

毛色も最大の魅力の一つ

シェルティー(トライカラー)
当初は、ブラック系の毛色が主流だった。
公認されている毛色は、セーブル、トライカラー、ブルーマール、ブラック&ホワイト(=バイブラック=バイカラー)、ブラック&タンの5色。当初は、この犬種の成り立ちに関係があるとされるブラック・アンド・タンの毛色をもつキング・チャールズ・スパニエルの影響があってなのか、ブラック系の毛色が主流だったようです。セーブルは珍しい部類の毛色だったらしく、高値で取り引きされという話もあり。それがいつからか逆転。日本で一時大人気となった頃は、シェルティーと言えばセーブルといったイメージでした。

因みに、セーブルの中にも、その濃淡や表現の仕方によって、マホガニー・セーブルを代表として、いくつかの呼び方がありますが、ことゴールデン・セーブルは、ラフ・コリーには見られない毛色とされ、キング・チャールズ・スパニエルからきたルビーの因子が関係しているのではないか?と考えられています。

また、ブルーマールは、トゥーニーの時代には見られなかったことから、ラフ・コリーとの交配によって生まれた毛色と考えられ、毛色の歴史といった観点からすると、やや新しい毛色ということになります。なお、シェルティーに限らず、遺伝的にマール因子は、繁殖上、その扱いが難しいことはよく知られており、ホモ接合すると(ダブルマール)視力がない、眼球そのものがない、内臓の奇形……など、生まれてくる子犬に高いリスクを負わせる可能性が高くなってきますので、くれぐれも安易な繁殖はしないように注意が必要です。

愛情豊かで、繊細な、オンリー・ドッグ

羊飼いと一緒に羊をコントロールするという作業は、人との関係も密にさせますし、一方で、自分で考えて行動しなければいけない部分もあるため、独立した気質も育てます。シェルティーには、知性という言葉がぴったり。理解能力もたいへん高く、物事も早くに覚えます。ということは、好ましくない行動パターンなどもすぐに覚えてしまうということ。その辺は、しつけをする際、気をつけたいところです。

また、“目で話をする”というくらいに表情が豊かであり、また、相手の心情を察しようとするかのごとく思慮深く、勘も鋭い。それゆえに、繊細なハートをもっています。体罰や厳し過ぎるしつけ方は、折角の持ち味を潰してしまいます。昨今では、褒めてしつけるトレーニングが主流となってきていますが、そうしたしつけ方法が最も合う犬種の一つでしょう。

誰にでもシッポを振る犬種ではありません。飼い主、またはその家族に対しては、たいへんよく懐きますし、深い愛情を示しますが、他人にはそっけなく振舞います。俗に、“オンリー・ドッグ”と言われるゆえんです。それこそが、シェルティーの最大の魅力と言ってもいいくらい、一度彼らの魅力にはまった人は、逃れられなくなってしまいます。

運動性能のピカイチ! スポーツドッグとしても大活躍

シープドッグとして活躍してきただけに、運動性能もバツグンです。スポーツを楽しむ犬達も多く、ことアジリティーにおいてはシェルティーが大活躍。上位をシェルティーが独占することも珍しくありません。

長毛であるシェルティーが、風を切って走る様は、それはそれは生き生きとして、美しいものです。働く犬として登場しながら、そのシープドッグとしての能力はもちろん、知性、運動性能、そして優雅さ、美しさ、と三拍子が揃った犬種。それが、シェルティーです。

一点、気をつけることがあるとすれば、この犬種はやや太りやすい体質をしていることでも知られていますので、特にスポーツを楽しみたい場合には、脚腰に負担をかけないためにも、必要以上に太らせないよう、体重管理はきちんとしてあげたいものです。

小型化の傾向

前のページでも述べたように、シェルティーの場合は、サイズのばらつきが若干見られることがあります。それを修正しようという試みなのかはわかりませんが、近年では、コンパクト化の傾向が見られ、これまでには見られなかったような小さいサイズのシェルティーも目にするようになってきています。小型化の弊害は、歯や心臓などいろいろなところに影響してきますので、配慮のある繁殖がなされることを強く望むガイドです。

トゥーニーの時代には、確かに小型であったのかもしれませんが、その後ヤッキ・ドッグやラフ・コリーなどの血も混じって“シェルティー”という犬種が確立したのであれば、それなりの骨格、大きさがあってしかるべきとガイドは考えます。犬達自身の幸せと健康のためには、健全なる繁殖がなされることが望まれます。

気をつけたい病気など

シェルティーの場合、特に気をつけたい病気としては、以下のようなものがあります。

■てんかん
■コリーアイ(コリー眼異常/CEA)
■中心性進行性網膜萎縮症
■白内障
■甲状腺機能低下症
■家族性皮膚炎
■フォン・ヴィレブラント病
■腫瘍
■アレルギー
■イベルメクチン中毒症            など

この犬種は、やや腫瘍系ができやすい体質にあるとも言われますので、日頃からコミュニケーションをかねて体中どこでも触れるように慣らしておき、健康チェックは怠らないようにしたいものです。

また、シェルティーやボーダー・コリー、ラフ(またはスムース)・コリー……などの犬種は、薬剤に対する感受性が高く、特に、フィラリア予防薬として知られるイベルメクチン系の薬では、中毒反応を起こすことがある、ということが知られています。ただし、通常の量であれば大丈夫だということで、それほど心配する必要もないという獣医師もいますが、中には過剰反応を起こすようなコもいるので、リスク回避のためにイベルメクチン系以外のフィラリア予防薬使用を勧める獣医師のほうが圧倒的に多いと思います。どちらにしても、遺伝的にシェルティーはそういう体質をもっていますので、フィラリア予防薬を選ぶ際には、動物病院でよく相談なさることをお勧めします。


シェルティーと暮らしていると、まるで人間と生活を共にしているような錯覚にとらわれることがあります。それだけ情緒豊かな犬種。犬と本気で向かい合って暮らしてみたい、という方にはぴったりの犬種ではないでしょうか。



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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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