期待できる問題行動治療への応用 「ぼく、マッサージも大好きだよ!」 とアッシュ こうしたTタッチの効果は、問題行動の改善に生かされており、しつけやトレーニングと併用されることも多いそうです。 たとえば、うちのハービーは威嚇で吠える時、後ろ足をパッパッと蹴る仕草をしますが、この時に後ろ足にバンテージを巻いてやると「あれ、なんか変だぞ?」と後ろ足に意識が行き、それを繰り返すうちにだんだん落ち着いてくるということが起こるわけですね。 「トレーニングとかの前にTタッチをしてあげて、犬が理性的になってから行うと、信じられないぐらい教えたことがスーッと入るということが起こります。問題行動の治療にしてもそう。私が体験した中で印象的だったのは、山に捨てられていた子で、サークルから出てこれなかった子が、たった1回のグランドワークをやっただけで、人の目を見ることができるようになったこと。Tタッチは行動を左右する気質に働きかけるんです。ですから、Tタッチとしつけやトレーニングはとても相性がよいと思いますよ」(松江さん) これはなかなか朗報ではないでしょうか。 大切なのはテクニックよりハート 「イヤータッチ」をしてもらって恍惚状態 しかしながら、しっかりコマンドが聞ける犬にTタッチを施したくなることもあるとか。しつけがよくできている犬の中には、飼い主がそばにいる時、つねにその人の動きを目で追う“指示待ち犬”が多いそうです。このような犬にTタッチをすることで“自分で考える”ことを教えてあげることが、犬の感情のバランスを整えるのに有効だからですね。 「飼い主がいなくなって、ケージに戻ったとたんにリラックスする犬もいます。自分の意志でリラックスできるということは、普段あまり考えないことですが、じつはとても大切なことなんですね。まったくしつけをしないで問題犬にしてしまうのも困りますが、逆に指示を待つだけの犬にするのも、気質や感情までを考えるとアンバランスになりがちだと思います」(松江さん) 同じ意味で、松江さんが開いているマッサージやTタッチの教室や、ドッグマッサージセラピストの養成講座に来られる人たちにも、すんなりできるようになる人とそうでない人がいるとのこと。 どちらかといえば頭で理解しようとするタイプの人より、テクニックにはあまりこだわらずに、感じたことを素直に受け入れ、犬をじっくり観察しながらやるタイプの人がいいそうです。 身体全体をゆっくりなでて被毛の感触や身体のこわばり、皮膚の状態などをチェックする「カーミングタッチ」松江さんが言われるには、犬と接する仕事をしている人は、普段のクセや思考回路をいったん切り離せるかどうかが上達のキーポイントだとか。「テクニックよりハートが大切。それと素直な気持ちで犬を観察しながら接することでセンスが培われます」(松江さん) わたしも、言われるままTタッチに挑戦してみましたが、アッシュとハービーに触れていくうち、不思議に自分の気持ちも少しずつゆるんでいくのがわかりました。犬と飼い主の双方が気持ちで通じあい、お互いがいい波動を出しあっていく。そんなTタッチの奥義に少しだけ触れたような気がしました。 そんな松江さんは、これからシニア犬のケアのためのセミナーや、ハーブを使ったホリスティックケアの講座なども開催し、Tタッチ+ドッグマッサージの考え方にもとづく様々な犬の健康管理の方法を広めていきたいと考えているそうです。 「もう駄目、おやすみなさ~い」ハービー多くの飼い主さんに言いたいのは、1日に少しの時間でもいいからテレビも携帯もなしで、じっくりその子と向き合う時間をつくってあげてほしいということです。犬たちは、もっとボクの気持ちを感じ取って!と言っているような気がします」(松江さん) ほんの5分でも1分でもいいから、さっきまで考えていた仕事のことを忘れて、愛犬との密な時間をつくってあげてくださいと松江さん。それがTタッチを始める前に、ぜひやっておいていただきたいこととか。簡単なようで、意外と忘れがちなこと。わたしも、胸にしっかり刻み込んでおこうと思いました。 松江さんの著書『ドッグホリスティックケア』(小学館) ■ドッグリレーション http://www.dogrelation.com ドッグマッサージやTタッチをはじめとする 最先端の「ホリスティックケア」を 日本に広める活動を展開中!【編集部おすすめの購入サイト】Amazonで犬用のペットグッズをチェック!楽天市場でペット用品をチェック!前のページへ123※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。