悲しみを乗り越えるために。
ペットとの死別。考えただけでも暗~くなってしまいそうですが、いつかは自分もそれと向き合わなければなりません。そんなとき、経験者たちはその悲しみをどう乗り越えてきたのでしょうか。
ペットロス体験を書いた3冊の本のご紹介、今週はその第2弾です。
『ダメ犬グー---11年+108日の物語』 ごとうやすゆき著 イラスト・ながおひろすけ 発行:文春ネスコ 発売:文芸春秋 ¥1300 |
グーのほんとの名前はグレイス、ドーベルマンの女の子です。それまで家で何頭も犬を飼ってきた「ぼく(ごとうさん)」に初めてなつかなかった犬だそうです。そんなグーも、ぼくが散歩に連れ出すようになり、少しずつ少しずつ仲よくなっていきます。 『ダメ犬グー』は、仲よしになった「ぼく」とグーが11年+108日にわたって過ごした、楽しいとき苦しいときを、ポエムのようなシンプルな文章で書きつづった記録です。
「鼻チョン」「鼻パンチ」「鼻はじき」「頭のっけ」「肩もんで」のポーズ……ここに書かれたグーのクセのこまやかな描写は、飼い主なら誰もがあ~そうだよな~と思いつくような犬の仕草ばかり。「ながおひろすけ」さんのシンプルこの上ない線画とともに、そんな愛らしいグーの生態や、「ぼく」の思い出の中にあるグーとの生活の記憶が描写されていきます。それらは、長いセンテンスによる状況説明などを極力省いたほんとに凝縮された瞬間瞬間のお話なのですが、だからこそ強い印象をもって心に残ります。
たくさんの季節がすぎて、
グーはたいせつな家族のひとりになっていた。
これはちょうど半分読み進んだあたりで出てくる一文ですが、このあとグーは10歳を超え、しだいに体力もなくなり、病気がちになっていきます。それを象徴するようなのがつぎの下り。
あのがっつきグーが
なんにも食べなくなるなんて
思いもしなかった。
「ぼく」をはじめ、家族はみんなでグーのがんとの闘病を見守り、栄養剤をスポイトで飲ませたり、マッサージをしたりします。一度は回復を見せたグーでしたが、やはり最期のときはいやおうなくやって来ます。その下りはやはり涙、涙、涙……涙でくもって活字が読めません。「ぼく」は、グーが逝ったあとこんなことを思います。
グーはぼくの親友みたいだったね。
ぼくの恋人みたいだったね。
ぼくの妹みたいで、
ぼくの子供みたいだった。
グー、ありがとう。
いっぱい助けてくれて、ありがとう。
いっぱいいっぱい、ありがとうね。
グーのこと、ずっとずっと忘れないよ。
そして最後はこう結ばれていました。
「また会おうね。みんなで。」