ドラマ『熟年離婚』―定年退職当日、妻の退職願い
いつも賑やかだった食卓―妻が去り子どもが巣立った今……。 |
■豊原夫妻&近しい関係者
・夫:幸太郎(60歳)……渡哲也
会社一筋の人生だったが、定年退職。購入した一戸建てのローンも終わり、3人の子どもたちも大学を卒業。再就職話も断り、妻と趣味や旅行を楽しもうとしていたが……。
・妻:洋子(57歳)……松坂慶子
幸太郎とは見合い結婚。以来専業主婦でいわゆる良妻賢母タイプ。家庭を顧みない夫に対し積年の不満を募らせてきた。自分らしさを生かして残りの人生を送りたいと、夫の定年退職を機に離婚を切り出す。
・英会話学校講師:菊村沙織(27歳)……真中瞳
幸太郎が定年後夫婦で学ぼうと思っていた英会話学校の講師でバツイチ。幸太郎に好意を寄せており、海外旅行に誘ったり積極的なアプローチを開始する。
・雑貨輸入会社経営:佐竹一郎(57歳)……長谷川初範
洋子の高校の同級生。独身。高校時代、洋子に憧れていた。同窓会で再会し、洋子の相談相手となる。自分の会社に洋子を雇い、洋子の離婚成立後、愛を告白するが……。
・幸太郎の母:豊原喜久枝……草笛光子
一時は同居していたが、嫁姑の確執から山梨で一人暮らしをするようになる。趣味の陶芸に没頭。幸太郎と洋子が別居を開始したと同時に豊原家にやってきて、妻に出て行かれた息子の世話を焼き、何かと口を挟み始める。
幸太郎の定年退職の日、子どもや孫も集まりご馳走が用意されます。しかし洋子は離婚を切り出すためにこの日を待っていました。両親に離婚をして欲しくない子どもたちは、母親洋子に思い留まって欲しいと願い、ひやひや。
ところが、幸太郎は、その席で長男俊介の女性関係について、一方的に悪いと決め付け張り倒します。話も聞かず、自分の考えを押し付ける幸太郎の高圧的な態度に、黙っていられなくなった洋子は、一瞬のうちに自分たちの問題に話をすり替え、
「離婚させてください」
と切り出します。
寝耳に水といった状態の幸太郎は、カッとなりテーブルの上に並んだ心づくしのご馳走をクロスを引いてめちゃめちゃにして引っ込んでしまいました。残された妻と子どもたちは、泣きながら片付けをするのですが……。
こんな時のやりきれない情けない気持ちといったらないんですよね。やった人、幸太郎が片付ければよいのですが、それがあり得ないのがわかっているから、惨めさ、悔しさを堪えながら、片付けるしかないわけです。
幸太郎は自分で作ったのではないから、作った人の気持ちがわからない。自分で片付けるわけでもないから、片付けなければならない人の気持ちがわからない。だから、こんなことをしてしまうのでしょう。
似たような目に遭われたことのある妻たちは、「わかるわ~」と洋子に共感・同情を覚えたのではないでしょうか?
一方、わき目も振らず働き尽くめでやっと定年を迎え、これから第二の人生を、という矢先、妻から離婚を切り出されてしまった幸太郎に同情した夫の立場の方も多いでしょう。
「妻のために、家族のために必死で働いてきたのに、何という仕打ちか?!怒れ!幸太郎!!」。
第一回のこのシーンで、全国の夫と妻たちの心を一気につかんでしまいました。
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