離婚/離婚を決意する前に

DVを考える

全殺人事件の42.6%が親族間に起きるのだそうです。DVから殺人事件に至るケースが多いということ。家庭という小さな箱の中で閉ざされているから逃げ道がなく、人目もないことから加害者が凶行にも至り易いのです。

岡野 あつこ

執筆者:岡野 あつこ

離婚ガイド

DV(ドメスティック・バイオレンス)を考える

DV被害者・関係者の保護

こんにちは! 夫婦問題カウンセラーの岡野あつこです。
今回はDVについて考えてみましょう。

以前にもお伝えしましたが、全殺人事件の42.6%が親族間に起きるものだそうです。DVから殺人事件に至るケースが多いということです。家庭こそあたたかく癒される場所だというのは実は幻想で、親しいからこそ憎しみが強くなる。家庭という小さな箱の中で閉ざされているからこそ逃げ道がなく、人目もないことから加害者が凶行にも至り易いのです。
 

つい先日は、DV防止法による接近禁止命令を受けていた夫が、妻の居場所を知ろうとして、知人の女性を訪ねて、「事件を起こせば妻が戻ると思った」とその女性を殺してしまうという事件が起きましたよね。これは、本当酷い事件です。とばっちりで命を落とした女性が気の毒でなりません。たぶんこの妻も本当に危険な状況にあったのでしょう。
 

DV防止法が施行されて2年近く経ちますが、保護対象者や関係者が事件に巻き込まれるケースが後を絶ちません。これまでに裁判所から保護命令が出されたのが176件。そのうち接近禁止命令が832件。妻ではなく、妻の親兄弟知人など第三者への規定がないことから、上のような事件が起きてしまったのです。DV加害者の立ち寄り先まで保護の対象を広げていかなければ、またこのような痛ましいケースが起きてしまうかもしれません。

言葉の暴力もDV

今でこそDV防止法などが施行され、あってはならないものとして注目されるようになりましたが、昔からあったのです。夫が妻を殴るという図式は。逆も昔からありましたが、体力差があるので、大事には至らないからあまり目立たないのです。女性の方が圧倒的に被害者が多いのですが、体力差の他にもう1つ、女性の方が口が達者であるということがDVを誘発しているということもあるのです。
 
女性は不満があると一方的にまくしたてる傾向にあります。みんながみんなそうではないですが。男は口では勝てませんから、ジッと耐えています。まくしたてている方は、黙られるとヒートアップしてしまうのですね。もう止まらなくなって、それを言ったらお終いよ、っていうことまで口走ってしまう訳です。そうすると、男性はキレます。爆発して手が出てしまう。だからといって暴力は決して許されるはずもありませんが、こんな場合もあるのです。
 
DVの種類は、身体的暴力・性的暴力・精神的暴力に分けられます。身体的暴力は、殴る蹴るなど。性的暴力は、セックスを強要する・レイプ・避妊に協力しない・ポルノを無理矢理見せるなど。精神的暴力は、妻のやること為すことに文句をつける・オマエはバカだ、誰に食わして貰っているんだ等言葉の暴力・人前で叱る・監禁する・電話や友人との付き合いを監視する、などなど。全女性の4割ほどがDVを体験しているのではないかと言われています。
 

そしてDVは周期性を持っています。日常の中でストレスが溜まってくると爆発してDVを起こします。爆発してしまうと今度は後悔をして「悪かった。もう二度としないから」と謝ります。そして優しくいい夫に戻る。ところが、またストレスが蓄積されると爆発。このサイクルを断ち切ろうとせず繰り返しでそのまま放っておけばエンドレスで妻は泣かされ続けてしまう訳です。

バトラーとバタードウーマン

DVで暴力を振るう者をバトラーと言います。振るわれる者はバタードウーマンです。バタードウーマンには、これもある種の傾向があります。子どもの頃どんな風にしてその家庭内で育ったか、というところに起因しているのです。
 
バタードウーマンは世話焼き型の長女が多いのです。長女は母親をサポートして家事を手伝い弟や妹の面倒をみて育ちます。すると、大人になっても、人の世話をするという行為に生き甲斐を見出す人間になります。本人はまるで意識はしていないうちに、世話のし甲斐のある男と一緒になるのだそうです。いつも人の世話をしていないと自分に居場所がないような気がしてしまう。それからいつも忙しく立ち働いていてきたので、穏やかで落ち着いた生活では生きている実感が湧かないのです。
 

それで、暴力を誘発させて、そのお付き合いをする、お世話をする。夫は優しい時もあるのだから…私さえ耐えればいいのだ、と思う。この人がこうなるのは、私のせいだ、と思う。だからこそ、私がお世話をしなければいけないのだ、と思う。ますます、私がお世話をしなければ、と思い込む。このような悪循環に陥ると、脳にこのパターンが記憶されて、断ち切ろうとしても断ち切れなくなってしまうのです。
 
また、始終ののしられたり虐げられておると、プライドが低くなり弱い人間になってしまう。そうすると、更にバトラーから逃げようという心理が働かなくなります。私はこの人から逃げても、生きてはいけないんだ、と思うわけです。

DVは絶つ!

本気で双方ともに治療すれば、この悪循環を断ち切れます。この関係は片方が変われば一方も変わらざるを得ないようになっているのです。でもそれならDV加害者と被害者の夫婦は、皆治療すればいいと思いますよね。でも、なかなか今の場所から一歩外へ抜け出すことが出来ない人たちが多いのです。 
 
命の危険を感じる程のDVを受けると、本来とは逆に、逃げたくなくなる、という心理が働くのです。命に危険が及ぶ程の閉塞した極限状況になると、バタードウーマンはバトラーの気持ちと一体化してしまうのです。自分の考えがなくなり、自分と他人が分けられなくなってしまいます。それで、危険な状態にある程逃げない、ということになるわけです。これは本当に間違っています。
 
また、子どもがいるから家を出られない、という人もいます。子どもがいるなら、尚更すぐにでも出た方がいいでしょう。母親が父親に暴力を受けているのを子どもが見て育つと、その子どもも暴力を平気で振るうバトラーになるか、暴力を受ける側のバタードになるか、もしくは全く別の形で何かへの依存症を抱える人間になってしまいます。
 
とにかく、一度でも酷い暴力を振るわれたら、別れた方が身のためです。一度やったという事実は消せません。バタードの身体の傷はいつか癒えても、心の傷は治りません。命の危険を感じたら、警察・DV保護センター・サポートセンターなど各自治体にすぐに助けを求め、バトラーから離れて下さい。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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