男女間の力関係のアンバランスが、最も大きな原因
DVは、構造的な暴力
夫婦というものは、ごく個人的な関係のため、夫婦間暴力の問題も「特殊な、個人間の問題」と扱われやすい。しかし、社会的な土壌の上に成り立っている部分も多いのだ。その元凶をとらえ、社会構造を見つめ直すことなしに、DVの問題を考えることは出来ないだろう。
「結婚によって女性の立場が弱くなり、劣位に置かれることによって、暴力が繰り返される土台が出来上がってしまうんです。当然、『何故逃げないのか、耐えるのか』という疑問が出てくるんですが、そもそも『逃げ出せない、耐えるしかない』という構造が背後にあるんですね」
そして、その構造をわかりやすく図式化することに成功した、アメリカのグループがいる。ミネソタ州ドゥルースのグループである。また、その図を日本に紹介されたのは、現在も米大学で社会福祉に従事されている、ミシガン大学社会福祉学助教授の吉浜美恵子さんという方である。吉浜さんが自ら修正、邦訳されたものを紹介するとともに、小島弁護士に解説をお願いした。
「これはパワーとコントロールの車輪と呼ばれている図で、暴力が止まらず、回り続ける構造を説明しています」
つまり、「身体的暴力」の車輪が、「経済的暴力」「性的暴力」などの要因によって、延々と回されていくことを示しているのだと言う。
「車輪の内部が家庭の問題とすると、車輪の外側は社会の問題と言えるでしょう。つまり、この車輪は決して内側の力だけによらず、外側の力によっても支えられ、回され続けていくのです」
家庭(車輪の内側)の中の理不尽な常識が、社会(車輪の外側)の構造によっても正当化されてしまう恐ろしさを、小島弁護士は指摘する。