慶応ですら地方の高校に出向く現実
もはや、私立大学では定番となっているAO入試・推薦入試は国公立大学にも確実に広がっている |
このまま18歳人口が減少していけば、大学の存続も危ぶまれるような状況になるが、ただいたずらに定員を満たすだけのために学力を度外視して学生を集めれば、大学のランクが落ち、長期的に見れば、志願者が減少するという悪影響もある。
以前にも述べたように私立大学では定員のみを合格させてはいない。たとえば、慶応大学の文学部では、06年度募集人員580名に対して、1113名の合格者を出している。ほぼ2倍の合格者を出して、定員を確保しているわけである。つまり半数は国公立などの他大学に逃げると考えている。
ある私大の入試担当者によれば、他大学に流れる前に出来るだけ早く定員の何%かを確保したいという思惑があるという。というのも、国は募集定員に達しない私大の補助金を削減する方針を決めており、学生獲得は死活問題だからだ。また募集定員を大幅に超えても削減されるという。慶応大学の場合、07年度で総合政策学部では100名ものAO入試の募集人員を予定していた。それは、募集定員275名の内、約36%に及んでいる。
文部科学省は定員の50%までAO,推薦入試で生徒をとることを認めているが、このぎりぎりまでとっている大学も多い。特に付属高校を数校持っている大学は、50%まで確保しておいて、実際の入試で厳しく選抜するというやり方で、大学のランクを上げている。
去年予備校で指導していた兵庫県のある高校の現役の生徒が、慶応大学のSFCの推薦入試に合格したと報告に来たが、驚いたのは慶応の教授がじきじきにその公立学校まで出向き、生徒を個別に面接して選抜している点である。実質私立大学の頂点にあると考えられている慶応ですらこのように地方に出向いて、優秀な学生を集めているのは実に驚かされる。