アルコール依存症は治るの?
ガイド(二松):もし、依存症になってしまった場合、どういう治療を受ければよいでしょうか?
Dr.最上:
基本的にアルコール依存症は根本的には治りません。断酒、アルコールをやめるしかないのです。
一生アルコールを一滴も口にしてはいけないというのがアルコール依存症の治療の鉄則です。これは、まず医学的大原則なのです。一口でも飲めば、必ずまたアルコール依存状態に戻ってしまいます。
「妻の異変に気づいたら病院へ」 |
しかし、これはアルコール依存症の患者さんにとっては、苦痛です。当然、否認(事実を認めない防衛機制)して、あの手この手で酒を飲むために都合のいい考え(歪んだ認知)を主張するようになります。
そもそも、現実を見るのが苦手な人が酒に逃げるために生まれる病気といっていいわけですから、アルコール治療とは、まさにここを認められるかが非常に重要だと言っても過言ではありません。そこで現実と向き合わなければ治療ははじまらないわけです。
アルコール依存症に認められやすい「お酒に対する認知の歪み」としては
- 自分には問題はない、自分はアルコール依存症ではない = 問題否認タイプ
- 自分ならうまく飲める = 節酒派タイプ
- 感情や行動は、酒でコントロールできる(例:ストレス解消にはお酒が必だ、仕事の付き合いにはお酒がかかせない、眠れない時にはお酒がよい) = 逃避型飲酒タイプ
- ~だから飲んでしまった = 言い訳タイプ
- 酒が好きだから飲む、飲んで何が悪い!? = 逆ギレ居直りタイプ
- どうせ断酒なんてできない = 断酒あきらめタイプ
- 酒をやめてもいいことはない、どうでもよい = なげやりタイプ
- 自分ひとりで酒はやめられる、いつでも酒はやめられる = 独りよがりタイプ
- 大した問題ではないのに、周囲が大騒ぎしすぎだ = 責任転換タイプ
一言で言えば……先送りを許さな いということに尽きるのです。しかし、このような作業は、自分の弱い面に直面化しなければならず、相当な苦痛を伴う作業なわけです。そこで、患者会とかセルフヘルプグループといったようなグループ治療がとっても高い効果を持つこともわかってきており、現実の治療はこのようなグループ治療が積極的に利用されています。また、同時にお酒を飲むと具合が悪くなる薬(=抗酒剤)も投与がなされたりもします。
アルコール依存症のレベルまで行ってはいない、アルコール乱用やプレアルコール依存症の段階もまずは断酒が原則なのですが、この場合半年の断酒後、半数の患者は1滴もアルコールを口にしなくなり、残りの半数も大きく酒量が減らせることが研究などからも示されてきています。
ちなみに、アルコール依存症治療の成功率は、欧米のデータなどでは、治療をはじめたとしても(そもそも治療自体に行かない人が多いのが問題なのですが)、短期では50%前後と言われています。
現場関係者なんかの共通の認識としてはある程度の長い期間で見ると実感としては30~40%前後という認識のようです。
困った際には、アルコールの専門外来というものが存在しますので、そこでまずは本人受診、もしくは本人が行かなければ家族相談からはじめられてもよいでしょう。