いよいよ線路上へ、DMV発車!
「戸締めヨシ、3番ゲート開ヨシ、発車!」ゲート(遮断機)というのが、通常の鉄道でいう「出発信号機」に該当するようで、これが開いている=青(進行)、ということのようですね。そして「プーッ」と汽笛一声……ではなくクラクション一声で、いよいよ発車です。
線路に乗り入れるとすぐにスピードを上げますが、それも10秒程度。その後は時速40km程度を維持して進みます。鉄道は、区間ごとの最高速度や走行速度が厳密に決められていますので、速度はある程度一定を保たねばなりません。
線路走行は鉄道の運転士が運転を担当していますが、足でアクセルとブレーキを操作するというのは、通常の鉄道車両ではあり得ないことです。
試乗後に、DMVの運転はどこが難しいですか?と鉄道の運転士さんに聞いてみたところ「やっぱり足で行なう速度調節ですね」とおっしゃっていました。鉄道というより車を運転している感覚なのだとか。
釧網本線を行くDMVの前面展望 |
DMVの乗り心地は?
一般的な鉄道車両の場合、走行中は「タタンタタン、タタンタタン……」という音がします。これは、レールの継ぎ目を車輪が通過する時の音で、左右の車輪をつなぐ「車軸」が2本ずつあるのでそうなります。しかし、DMVは「タンタン、タンタン……」。車軸が前後に1本ずつしかないからです。
音はよいのですが、その時の衝撃がちょっと強いんですね。感じ方は人によると思いますが、お世辞にも乗り心地がよいとはいえないでしょう。例えばこの車両で線路上を30分乗車するとしたら、ちょっと疲れそうです。
【参考】2軸貨車を改造した予土線のトロッコ車両 |
もちろん座席はトロッコ車両とはまったく違うのですが、印象としてはほとんど同じ乗り心地なのでした。DMVが日常の乗り物となるには、このあたりの改善は必須でしょう。
列車からバスへ、藻琴駅で再びモードチェンジ
車窓に広がるオホーツク海を眺めながら |
ただ、時速40kmとゆっくりなので、並行する国道を走るクルマにどんどん追い越されますが……
途中駅の原生花園駅や北浜駅を通過する時には、多くのギャラリーたちがこちらに向かってカメラを構えています。「有名人になった気分で手を振ってあげてください」と、ガイドさん。
鉄車輪を格納し線路外へ(藻琴駅) |
この藻琴駅では線路から道路に下りるだけなので、浜小清水のような複雑な機構はありません。踏切にある渡り板のようなものの上で一旦停車、鉄車輪を格納すればもうモードチェンジ完了です。
その後、線路外の「列車停止位置目標」までハンドルを切り移動します。ここはまだ鉄道運転士の担当なのですが、これはもう完全に「自動車の運転」ですね……。
停止位置まで移動すると、再び「閉塞カギ」が係員に渡されます。DMVが線路走行を終えたことの確認と閉塞方式を変更する作業が終わり「閉塞カギ」が戻され、「照査閉塞終了!」の一声で鉄道の運転士は役目が終了。
ここで鉄道の運転士からバスの運転士に交代、藻琴駅前からバスとして道路走行のスタートです。
バスになったDMV
バスになったDMVは道路へ(藻琴駅) |
列車に添乗しているガイドさんも、ここからはバスガイドさん。沿道の見どころやとっておきの小ネタを織り交ぜながら、ガイドしてくれます。
このガイドさん、あまりに饒舌だったので、下車後にプロのバスガイドさんですか?と聞いてみたら、「いえいえ違うんです」と笑っておられました。普段は釧網本線の観光列車「釧路湿原ノロッコ号」の乗務員や、浜小清水駅での切符販売などをされているとのこと。
さてバスとしてのDMVの乗り心地ですが、これも残念ながらよいとは言えません。ちょっとした道路の段差を通過するだけでもかなりの衝撃で、音と振動も大きい。
もちろん、乗り心地の向上については相当な試行錯誤があったようで、開発初期段階に比べればずいぶんよくなっているということですが、利用者からすればまだまだ、というのが率直な感想でした。
北海道らしい景観の中を行く道路走行ルート |
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