鉄道/おすすめ鉄道旅行

沼津~黒磯290キロ、グリーン車だけの旅(2ページ目)

首都圏を走る普通列車グリーン車。一定の条件を満たせば一枚のグリーン券でどこまでも行けるのです。その中で最長になると思われる静岡県の沼津から栃木県の黒磯まで、グリーン車だけを乗り継いだ旅の顛末。

執筆者:高橋 良算

旅のスタートは静岡県・沼津駅

沼津駅舎
旅のスタートは静岡県の沼津駅
3月のある土曜日、朝5時過ぎに都内の自宅を出発、約3時間かけて沼津へ。

沼津駅でまず最初にすることはグリーン券の購入である。乗る前にグリーン券を買わないと「事前料金」の適用が受けられない。しかも沼津駅から乗る場合には「グリーン車Suicaシステム」が使えないので、窓口で購入する必要がある。せっかく一枚のグリーン券で乗車できる最長距離を行くのだから、もとより紙の切符は欲しい。

いったん改札を抜けてみどりの窓口へ行くと、3人ほど並んでいる。偶然かどうかわからないが、この3人ともグリーン券を東京駅まで購入した。やはりなかなか人気があるようだ。

そんな中「黒磯まで!」なんて言ったらちょっとたじろぐかもしれないぞ、などと思いながら行先を告げる。しかし予想に反して特に反応は示さず、事務的に発券終了。まあ彼にとっては何百枚と発券するうちの一枚に過ぎないのだろう。

ともあれ、本当に750円で黒磯まで290キロ相当のグリーン券を手にすることができた。左隅に「ホリデー」と印字されているのを眺めていると、なんだか心も浮き立ってくる。

第一列車:沼津 9:00 → 9:20 熱海332M・2階建グリーン車・サロE230-1080

沼津駅
記念すべき?一番目のグリーン車
3番ホームに上がると、既に折り返しの準備が整ったグリーン車が待っていた。意気揚々と2階席へ上がる。ホームの売店には沼津の駅弁「港あじ鮨」と書かれた幟が立っていて心が動くが、朝食は済ませてきたし、駅弁は小田原で買う予定なのでここではがまんしておく。

まもなく、この旅の栄えある一番列車が定刻に発車した。乗車している4号車2階席の乗客は5名で、思っていたよりは少ない。霞んではいるものの、左に富士山の姿が見える。やはり2階席は気分がよい。

三島を出るとすぐに山間部に入る。新幹線は長い新丹那トンネルで一気に抜けてしまうが、在来線は伊豆半島の付け根を走っていることを実感させてくれる。そういえば、伊豆半島が乗っかっている地殻は、今も本州に向かって移動し続けていると聞いたことがあるが、数万年後、いや数百万年後、このあたりはどうなっているのだろうか……などと要らぬ心配をしているうちに、丹那トンネルを抜け熱海が近づいてきた。

にぎやかな朝の熱海駅で小休止

熱海駅
にぎやかな熱海駅で小休止
海と温泉街を見下ろしながら熱海着。まだ20分しか乗っていないけれど、このまま行っても時間が余ってしまうので下車する。だが、一枚のグリーン券でグリーン車を乗り継ぐ場合の規則上、今日は黒磯まで改札を出ることはできない。

満員の乗客を乗せてやってきた特急踊り子号が出発していくと、今度は伊豆方面から伊豆急行の看板列車が入ってくる。それが発車し、次に乗る折り返し列車がすぐに到着。土曜朝の熱海駅は結構にぎやかだ。

ホームには立ち食いそばがあり、常に3人くらいがそばをすすっている。店頭には『列車の座席でも召し上がれます』との張り紙。容器代の30円をプラスすると、車内に持ち込んで食べられるらしい。粋なサービスに食指が動くが、これも泣く泣く見送る。なんだか修行僧のようになってきた。


次のグリーン車へ乗り継ぐにはこちら>>
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 6
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます