鉄道/SL

SLばんえつ物語・鉄道の街に復活した貴婦人(2ページ目)

新潟~会津若松間に運転される人気定番SL列車「SLばんえつ物語」。牽引する「C57 180」は、鉄道の街の人々の熱い想いで、約30年の眠りから覚めた蒸気機関車でした。力強く優しいその姿に会いに行ってみませんか。

執筆者:高橋 良算

新津駅では駅弁の種類の多さに思わず目移り

新津駅の駅弁台売り
新津駅は駅弁の種類が豊富でどれも美味
越後平野を快走すること約20分、最初の停車駅新津に到着します。

新津駅では15分の停車。この間にぜひホームに出てみましょう。「三新軒」と「神尾弁当」という2つの駅弁屋さんがホーム(3号車付近)で駅弁を売っているのですが、その種類の多さにびっくり。両者あわせて10種類以上あり、目移りしてしまってとてもすぐには決められません。

そこで新津駅のおすすめ駅弁ベスト3をガイドが独断と偏見で選んでみましたので、ぜひ参考にしてください。

 1.鮭の焼漬弁当(840円/三新軒)
 2.雪ん子姉妹ずし(970円/神尾弁当)
 3.SLキップ弁当(840円/三新軒)

その他に、SLばんえつ物語弁当(900円/神尾弁当)やSL浪漫弁当(1,000円/三新軒)などSLにちなんだものもありますが、どれももちろんお米は新潟コシヒカリです。

汽車旅になくてはならない駅弁。もちろん新潟駅やSL車内でも買えますが、ここはひとつ新津駅まで我慢して、ホームで買いましょう!

汽笛の音と煙の匂いを感じながら

阿賀野川に沿う
ほとんどの区間で車窓に沿う阿賀野川
新津を発車して馬下(まおろし)駅を通過するあたりで平野と別れ、にわかに山が迫ってきます。咲花温泉の下車駅、咲花(さきはな)駅からは阿賀野川をさかのぼって行きます。登り坂が続き、平野を快走していた時とはうってかわって苦しげな「C57 180」は、たくさんの煙を吐きます。

トンネルに入ると、車内に蒸気機関車独特の煙の匂いが立ちこめます。もしこの時窓を開けていると、煙と煤が充満して大変なことになるため、トンネルが近付いたことを知らせる汽笛が聞こえたらすぐに窓を閉める、それが昔の汽車旅の常識でした。

しかしこの「SLばんえつ物語」号の客車は冷房完備。夏でも窓を開ける必要はありません。煙に巻かれる心配がないのはよいことですが、「本物」の汽車旅の記憶がある方には、少々もの足りないでしょう。

それにしても、ちょっとの煙が車内に入ってきただけでも煙くてむせそうになるというのに、機関車の運転台はドアもないむき出しの状態。しかもそこで1,000~1,500度という高温のカマに石炭をくべ続けているわけで、機関士や機関助士の労働がいかに過酷なものか、想像を絶するものがありますね。

蒸気機関車の超アナログさを再確認

津川駅にて
停車時間には様々な作業が行われる
新津駅から約1時間で、津川駅に到着。ここでは給水作業のため15分停車します。車掌さんの車内放送の言葉を借りれば、「C57 180が水を飲みます」。

当たり前ですが、蒸気機関車を走らせるには「水」と「石炭」が必要。新潟~会津若松間を走行するのに、10トンの水と3トンの石炭を消費するのだとか。かつて蒸気機関車が走った路線の主要駅には必ず、「給水塔」や「給炭設備」がありましたが、今は遺跡のようになったものしか見かけません。この津川駅でも、給水はホースで行います。

ぜひ、機関車まで作業の様子を見に行ってみてください。特に跨線橋の階段の窓から見下ろすのが穴場。作業の様子を間近に眺めることができます。電車に慣れてしまって忘れがちですが、このような巨大な装置が、コンピュータなど一切使わない超アナログ方式で走るのだ、という現実を目の当たりにし、言い知れない感動を覚えることでしょう。

次のページからはSLばんえつ物語の旅、いよいよ後半です>>
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