鉄道/SL

SLばんえつ物語・鉄道の街に復活した貴婦人

新潟~会津若松間に運転される人気定番SL列車「SLばんえつ物語」。牽引する「C57 180」は、鉄道の街の人々の熱い想いで、約30年の眠りから覚めた蒸気機関車でした。力強く優しいその姿に会いに行ってみませんか。

執筆者:高橋 良算


C57180
約30年の眠りから覚めた「C57 180」
「SLばんえつ物語」号は、春から秋にかけての休日、新潟駅~会津若松駅間126.2kmを1往復する列車。そのルートの大半を占める磐越西線(ばんえつさいせん)は車窓の変化に富み、「森と水とロマンの鉄道」という愛称が付けられています。

この列車を牽引する主役が「C57 180」。C57型蒸気機関車は、戦争を挟んだ1937(昭和12)年からの10年間に201両が製造された型式で、「C57=シゴナナ」と呼ばれます(D51=デゴイチというのは有名ですね)。さらにその端麗な容姿から「貴婦人」と称され、今もたくさんのファンを魅了しています。

そのシゴナナのうち180番目に製造されたのがこの「C57 180」。1946(昭和21)年8月の製造ですから、今年でちょうど60歳の還暦。現役を引退した1969(昭和44)年からの30年間は静態保存され、1999年に復元・復活したという経緯を持っています。

そんな「C57 180」が牽引する「SLばんえつ物語」号の旅を、ご紹介しましょう。

汽笛一声、会津へ向けて出発進行

新潟駅のSLばんえつ物語号
新潟駅発車を前に、記念撮影をする姿が絶えない
「SLばんえつ物語」号は、新潟駅の新幹線ホームに一番近い、7番ホームから出発します。

蒸気機関車は転車台という設備がないと向きを変えられないため、ここまでは電気機関車に牽引されて後ろ向きにホームに入ってきます。先頭になった「C57 180」の周囲にはあっという間に人々が集結。運転台に乗って記念撮影ができるので、家族連れが長い列を作っています。

長い汽笛が聞こえ、夏休み中で満員の客を乗せた「SLばんえつ物語」号は、定刻9時43分、ガクンという衝撃があってから、そろそろと動き出しました。この「ガクンそろそろ」というのが非常に重要で、この感覚は、走り出したらすぐに加速する「電車」では決して味わえないのです。そのまま新潟駅の構内はゆっくりと走りますが、本線に出ると結構なスピードになります。

SLばんえつ物語号が運転を開始してからもうだいぶ経ちますが、やはり蒸気機関車は珍しいのか、踏切で、線路脇で、田んぼの中で、大人も子どもも皆一生懸命にこちらへ向かって手を振っています。電車にこれほど手を振る人はいませんから、これも「C57 180」の魅力あってこそなのでしょうね。

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