JRの「大都市近郊区間」というのをご存知でしょうか。これは、多数の路線が入り乱れている都市圏で、主として運賃計算を簡便にするために定められたもの。東京、大阪、福岡、新潟の4都市圏にあり、それぞれ「東京近郊区間」「大阪近郊区間」「福岡近郊区間」「新潟近郊区間」といいます。都心などの電車内で、ドアの上あたりに大きな路線図が貼ってあるのを見たことがあると思いますが、あれが近郊区間路線図です。
■東京近郊路線図(PDF形式)
大都市近郊区間という特例
さて、この各「大都市近郊区間」では、次のような規則が適用されます。大都市近郊区間内相互発着の普通乗車券及び普通回数乗車券(併用となるものを含む。)を所持する旅客は、その区間内においては、その乗車券の券面に表示された経路にかかわらず、同区間内の他の経路を選択して乗車することができる。
(旅客営業規則第157条第2項)
(旅客営業規則第157条第2項)
これをわかりやすく言うと、こんな感じです。
大都市近郊区間内の駅から大都市近郊区間内の駅へ行く切符を持っている乗客は、その大都市近郊区間から出なければどのルートを通ってもかまいません。
新宿から東京へ行くルートは何通り? |
ルート1)新宿→<中央本線>→東京(10.3km)
ルート2)新宿→<山手線外回り>→東京(17.1km)
ルート3)新宿→<山手線内回り>→東京(17.4km)
鉄道の運賃は距離ごとに決められていますから、本来ならばそれぞれ別々の運賃になる可能性があります。しかし実際には、どのルートを通って来たのかを乗客ごとに判別することは不可能ですし、いちいちどのルートを通るか決めなくてはならないのでは、乗る側にとっても不便ですね。
そこで、先ほどの規則があるわけです。新宿駅も東京駅も大都市近郊区間である「東京近郊区間」にある駅で、かつ上記3つのルートはこの「東京近郊区間」内にあるので、どのルートでも「一番安い運賃のルート」(新宿~東京間だと中央本線経由のもの)を通った場合と同じ運賃で結構ですよ、ということになります。これが「大都市近郊区間」の運賃特例です。
もっとも、自動券売機で買う近距離切符には、「新宿→130円区間」といったように、初めからルートは記載されていませんし、Suica(ICカード)や磁気カードなどを使っていると運賃すら意識していないですよね。
次のページでは、ルートについて考えてみましょう。