
元気な人でも、発熱やちょっとした体調不良から短時間で容体が急変することがあります。よく知られているものの1つが「インフルエンザ脳症」です。インフルエンザが流行すると、発症者は100人以上に上り、大人の発症も毎年報告されています。いざというとき、家族や自分を守るためにどう備えればよいのか……。命にかかわる深刻な病気のリスク・後遺症を防ぐために、覚えておくべき知識をご紹介します。
Q. インフルエンザにかかったら、大人でも「脳症」で死亡するリスクはありますか?
「『インフルエンザ脳症』は、小さな子どもがかかる怖い病気だと思っていたのですが、大人もなることがあるのでしょうか? 高熱が出ると、だるくて意識がもうろうとしますが、命にかかわる状態になる前に気付けるポイントがあれば知りたいです。具体的にどのような病気なのか、どこまで様子見でいいのかが分からないため、不安です」
A. 大人も発症し、死亡例も報告されています。油断せず、十分な注意を
インフルエンザ脳症は、インフルエンザにかかった際に免疫の働きに異常が起こり、急速に意識障害などが現れる病気です。「ウイルスが脳にまわった」と考える人も少なくないようですが、ウイルスが直接脳に入るわけではありません。ウイルスとたたかうための体内の免疫反応が、自分の脳の組織まで傷つけてしまうことで起こると考えられています。
主に5歳以下の子どもに多い病気ですが、大人も無関係ではありません。2009~2015年に報告されたインフルエンザ脳症(急性脳症)748例のうち、20~59歳が72例、60歳以上が66例と、全体の約2割を大人が占めていました。直近の2025/26シーズン(2026年9月時点)では、大人・子どもをあわせて全国で176例のインフルエンザ脳症が報告され、そのうち14例の死亡が確認されています。2023/2024シーズンでは189例のインフルエンザ脳症が報告され、19歳以上は19例でした。多いときは、大人の発症だけで40例以上報告される年もあります。
インフルエンザ脳症の症状は、発熱から主に48時間以内に現れます。けいれんや意識障害のほか、家族のことが分からない、意味不明な言葉を発する、幻覚を訴える、急に怒ったり泣いたりするといった異常な言動が見られることがあります。異常行動は必ずしも脳症の証拠とは限りませんが、高所からの飛び降りなどの思わぬ事故につながることもあるため、家族が注意深く見守る必要があります。
インフルエンザ脳症は適切な治療を受けなかった場合、致死率が約30%にものぼる怖い病気です。現在では、適切な治療法が普及したことで、致死率は10%以下に下がりましたが、約15%に後遺症が残るとされています。また、医療者が十分に認識しているため処方薬の場合は大丈夫ですが、インフルエンザの場合、解熱剤はアセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)が基本です。ジクロフェナク(ボルタレン)、メフェナム酸(ポンタール)はインフルエンザ脳症の発症が増えたり、死亡率が高いことが報告されています。アスピリンも使用は避ける必要があります。
インフルエンザ脳症を予防するためには、子どもだけでなく大人も、日常から次のような点を心掛けることが大切です。
- 手洗い・うがいをし、流行期はなるべく人混みに行くのを避ける
- ワクチンを接種する ※感染を完全に防ぐことはできませんが、脳症リスクを低減できます
- 解熱剤はアセトアミノフェンを基本とする
インフルエンザにかかってしまったときは、熱の高さだけでなく、意識の状態や言動の変化にも注意することが大切です。正しい知識を持って、もしもの場合は適切な治療につなげましょう。
さらに詳しく知りたい方は、「インフルエンザ脳症の症状・治療法・予防法…後悔しないよう大人も注意を」をあわせてご覧ください。







