
「火災保険って、火事のときしか使えないんじゃないの?」と思っている人は多いはずです。しかし実は「落雷で冷蔵庫が壊れた」「台風で室外機が飛ばされた」「子どもがテレビを倒して壊した」といったケースも、条件が合えば火災保険の補償対象になります。
ただし、なんでも補償されるわけではありません。「どんな原因か」「どんな補償内容に加入しているか」によって、もらえる・もらえないが変わってきます。また、補償額は時価になることが多く、満額は支払われないことも。まずは火災保険で補償が受けられるケースについて具体例を添えて解説していきます。
火災保険には「2つの補償対象」がある
火災保険の補償対象には「建物」と「家財」の2種類があります。どちらを対象にしているかは、加入した保険の契約内容で決まります。
- 建物:住宅本体、および取り付けられた設備(エアコン本体・室外機、給湯器、アンテナ、ソーラーパネルなど)
- 家財:建物の中にある動かせる財産(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、パソコンなど)
エアコンは家電に見えますが、壁に固定されているため「建物」扱いです。一方、コンセントに差して使うテレビや冷蔵庫は「家財」扱いになります。動かせるか、建物に固定されているかが判断のポイントです。
賃貸の場合、建物部分は大家が加入する保険の対象なので、自分で加入する保険で「家財」の補償を付けておかないと、家電への補償は受けられません。多くの場合は、入居時に火災保険に加入するかと思います。
家電の修理・買い替えで保険金がもらえるケース4選
実際に保険金がもらえたり、補償が受けられたりするシーンを4パターン見ていきましょう。
1. 落雷(雷サージ)による故障
最も多いのが、落雷による家電の故障です。自宅に直接雷が落ちなくても、近くの電柱に落雷した際に発生する過電流(雷サージ)が電線を伝って室内に流れ込み、家電を壊すことがあります。落雷による損害は火災保険の基本補償に含まれていることが多く、ほとんどの場合は火災保険で補償されます。
補償対象の例(東京海上日動・ソニー損保などの公式FAQ・事例より)
- テレビが雷サージで故障した
- パソコンが落雷の過電流で壊れた
- 雷サージでエアコンが動かなくなった
- 落雷で電子レンジ・電話機・監視カメラが壊れた
ただし、「家財の補償」が付いていない場合、テレビやパソコンなどの家電は対象外です。落雷時点で壊れたのか、もともと故障していたのかの証明が求められることもあるため、落雷日時は気象庁のWebサイトなどで記録を残しておきましょう。また、パソコン本体の修理・買い替えは補償の対象になりますが、本体に保存していたデータ・ソフトウェアは対象外です。
著者にも、落雷とは異なりますが、家族のパソコンが2006年に発生したクレーン船接触による首都圏停電によって壊れた事故の経験があります。この場合は火災保険ではなく、事故を起こした会社の保険から補償がおりました。
2. 火災・爆発・破裂による焼損
家電が火災で焼けてしまった場合、基本的に建物(エアコンなど)・家財(テレビ・冷蔵庫など)ともに補償対象です。隣家からの「もらい火」も補償されます。ただし、地震が原因の火災は火災保険の対象外のため、地震由来の損害には別途「地震保険」が必要になるケースが多いです。
3. 台風・強風・雪災による損害(エアコン室外機など)
台風で室外機が飛ばされたり、大雪の重みで破損したりした場合も補償対象になります。室外機は「建物」扱いのため、建物の補償に入っていれば対象です。また、例外として床下浸水のみで家電が壊れた場合は契約によっては水災補償が付いていても補償対象外になることがあります。
4. 不測かつ突発的な事故(破損・汚損特約)
特約に入っていれば、「子どもがおもちゃを投げてテレビを壊した」「掃除中に掃除機をぶつけて家電が壊れた」といった、以下のような日常的な偶発事故にも対応できます。
- 子どもが物を投げてテレビが壊れた
- 掃除機をぶつけてドアや家電を傷つけた
- 家具を移動中に倒して家電を壊した
ただしこれは特約(オプション)のため、加入時に付けていないと使えません。対象かどうかは加入中の保険証券を確認しましょう。
保険金がもらえないケース5選
続いて、補償が受けられないケースについて解説していきます。
1. 経年劣化による故障
使い続けることで自然に壊れた場合は補償対象外です。「何年も使っているエアコンが動かなくなった」という状態がこれに当たります。落雷や事故ではなく、劣化が原因だと判断されると保険金は支払われません。
2. 故意による損傷
わざと壊した場合はもちろん対象外です。「買い替えたくて自分で壊した」は保険金詐欺になりかねません。
3. 家財の補償に加入していない
テレビやパソコンなどは「家財」扱いのため、「建物のみ」の契約しかしていない場合は補償されません。
4. 地震・噴火・津波などの災害が原因の故障
これらは火災保険の対象外です。別途、地震保険への加入が必要です。
5. 修理費が免責金額を下回る
火災保険には「免責金額」(自己負担額)が設定されていることがあります。修理費がその金額を下回る場合は保険金は支払われません。
申請時の注意点
申請前には必ず以下の注意点に気を付けるようにしましょう。
1. 修理の前に保険会社へ連絡する
先に修理・処分をしてしまうと損害の確認ができなくなり、保険金が支払われなくなる可能性があります。必ず「保険会社への連絡→指示を受けてから修理」の順番で動きましょう。
2. 被害状況を写真に残す
損傷した家電の状態や被害の様子を、可能な限り複数の角度から撮影しておきましょう。修理前後の写真は申請時の証拠になります。
3. 落雷の場合は発生記録を取る
雷サージが原因の場合、気象庁のWebサイトで落雷の発生記録を確認し、印刷またはスクリーンショットを保存しておきましょう。保険会社によっては「落雷の発生状況を確認できる資料」の提出を求められることがあります。
4. 請求期限は被害発生から一般的に3年
保険法第95条に基づき、火災保険の請求権は被害発生から3年で時効になります。また、すでに修理済みの場合でも3年以内であれば請求できるケースもあります。
5. 申請サポート業者には注意
「火災保険で無料で修理できる」「請求期限が迫っている」と訪問や電話で勧誘してくる業者には注意が必要です。保険の申請は自分または保険会社に直接行うのが基本となります。実際に国民生活センターにも多数の相談が寄せられており、不審に感じたら迷わず消費者ホットライン(188)に相談しましょう。
自分の保険証券を確認してみよう
火災保険で家電の修理・買い替え費用がカバーされる可能性は、意外と広くあります。ただし「どんな補償を付けているか」「原因が何か」によって、もらえるかどうかは大きく変わるのです。
家電の補償には「新価(再調達価額)」と「時価」があり、「新価」の場合は同じ物を購入するための費用の満額が受け取れます。それに対して「時価」は価値の消耗分を引いた補償額です。現在のスタンダードは「新価」となっており、満額の補償が受け取れるケースが多いです。
まずは、加入中の火災保険の証券(または保険会社のマイページ)を開いて、「家財の補償」や「破損・汚損特約」が付いているかを確認しましょう。
※本記事の補償事例は、東京海上日動・損保ジャパン・ソニー損保・チューリッヒなど各社の公式FAQ・事例集をもとに作成しています。保険金の実際の支払い可否・金額は、加入している保険の契約内容および保険会社の審査によって異なります。詳細は必ずご自身の保険証券または保険会社にご確認ください。また、この記事は保険の加入・変更を勧めるものではありません。







