老後のお金や生活費が足りるのか不安ですよね。老後生活の収入の柱になるのが「老齢年金」ですが、年金制度にまつわることは難しい用語が多くて、ますます不安になってしまう人もいるのではないでしょうか。そんな年金初心者の方の疑問に専門家が回答します。今回は、年金の繰り下げ受給と働き続ける場合の損益分岐点についてです。年金についての質問がある人はコメント欄に書き込みをお願いします。
Q:65歳から働き続けるより、年金を繰り下げしてのんびり暮らすほうが得ですか?損益分岐点を教えてください
「65歳になり、働き続けるか年金を繰り下げるか迷っています。どちらが得なのか、損益分岐点がどこにあるのかを知りたいです」(Cさん)

A:繰り下げ受給は長生きするほど有利になります。損益分岐点は繰り下げる年齢によって異なり、おおむね12年が目安です
年金は繰り下げ受給すると、本来の65歳から受給を1カ月遅らせるごとに0.7%増額されます。1年(12カ月)で8.4%、最大75歳(120カ月)まで繰り下げると84%増額されます。損益分岐点は、受給開始より12年ほどが目安といわれています(昭和27年4月1日以前生まれの方は、繰り下げの上限年齢は70歳までで増額率は最大42%)。
ただし、年金額が増えると、所得税・住民税・国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)・介護保険料も連動して上がります。また、合計所得金額が一定を超えると、医療費や介護サービスの自己負担割合が1割から2割・3割に引き上げられる場合もあります。実質的な手取りへの影響も念頭に置いておきましょう。
では、主な年金を受け取る際の3つのパターンについて見ていきましょう。
65歳から働きながら年金を受給する場合は、給与と年金を同時に受け取れるため、今すぐ生活を豊かにできます。万が一早く亡くなった場合のリスクも最も低くなります。ただし、2026年4月以降は月収と年金の合計が65万円を超えると年金の一部が支給停止になる場合があるため、高収入の方は注意が必要です。
働かずに繰り下げる場合は、将来働けなくなったときの終身年金を最大化できます。一方、待機期間中は貯蓄を取り崩す必要があり、長生きしなかった場合は受取総額が少なくなるリスクもあります。
働きながら繰り下げる場合は、給与で生活しながら将来の年金も増やせる、老後対策として有効な方法です。ただし、厚生年金に加入して働いている期間中に支給停止となった分は、繰り下げによる増額の対象外となる点に注意が必要です。支給停止となった分は、あとで支給されることもありません。
繰り下げ受給の本質は、短期の受給を抑えて長期の受給を強化することにあります。65歳から受け取り始めれば手元に早く届きますが、70歳まで繰り下げると42%増額され、90歳・95歳まで長生きした場合の受取総額は大きくなります。高齢になるほど増える医療・介護費への備えとして、繰り下げを「長生きした場合のキャッシュフローを改善する手段」ととらえる考え方もあります。
なお、すでに十分な貯蓄があり趣味や生活を楽しみたい場合は、65歳から受給して「今」を充実させるのも1つの選択です。将来のインフレや長生きへの備えを重視する場合は、老齢基礎年金だけを70歳まで繰り下げ、老齢厚生年金は65歳から受け取る「部分繰り下げ」という方法も活用できます。
年金をただの損得で考えるのではなく、いつ受け取り始めると老後の生活の柱として安心して暮らせるかという視点で、ご自身の状況に合わせてお考えになることをおすすめします。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)






