特に、10年先を見据えるような大切なお金は、普通預金に預けっぱなしにするのが正解とは限りません。
「元本は守りたいけれど、少しでも有利に増やしたい」。そんな切実なニーズに応えるのが、定期預金と個人向け国債(特に変動10年)の組み合わせです。
今回は、なぜ資産を分けて持つのが理想的なのか、そのメリットを解説します。
<目次>
なぜ「分けておく」のがいいのか?
当面使わないお金をどこか1カ所にまとめておけば、管理はシンプルで楽になるでしょう。ただし、その分リスクも大きくなります。どちらか一方に偏ってしまうことで、思わぬデメリットが出てくるからです。
●全て定期預金にした場合の心配な点
今は金利がじわじわと上がっているタイミングです。もし、今の金利で10年間の定期預金に預けてしまうと、今後さらに金利が上がっても、その恩恵を受けられないままになってしまいます。これを「機会損失(あとで上がった金利に乗り換えられない損)」といいます。
また、定期預金はペイオフ制度により、1金融機関当たり元本1000万円とその利息だけしか保護されません。例えば、老後資金のような大きなお金を1つの銀行に預けるのは、少し心配が残ります。
●全て国債にした場合の心配な点
個人向け国債は安全性の高い商品ですが、購入後1年間は原則として中途換金できません。この間に、急な入院や自宅の修繕などでまとまったお金が必要になっても、すぐに引き出せないという不便さがあります。
「流動性(動かしやすさ)」と「収益性(増えやすさ)」のバランスを取るには、資産を分けておくことが大切です。
定期預金の特長は?
定期預金は、多くの方にとって昔からなじみがあり、使い慣れている安心感が魅力です。①いつもの銀行で気軽に利用できる
これまで使ってきた銀行の窓口で、手続きも完結できるという点で、心理的なハードルが低く、「新しい仕組みを覚えるのが不安」という方にも向いています。
②預ける期間を自分で選べる
定期預金は、預ける期間を「3カ月」「1年」「3年」「5年」など細かく選べます。また、「300万円を3つに分けて、1年・3年・5年の定期にそれぞれ預ける」といった工夫をすることで、途中でお金が必要になったときにも柔軟に対応できます。
なお、定期預金は一部だけ引き出すことができず、原則として全額を解約(解約して普通預金に戻す)する必要がある点は注意しましょう。その場合、利息は普通預金並みになるケースが多いため、できるだけ満期で引き出せるよう、分散して預けておくと安心です。
個人向け国債「変動10年」の特長は?
国が発行する個人向け国債は、元本保証があり、預けていて安心できる金融商品です。なかでも「変動10年」は、今のような金利上昇期に人気のあるタイプです。①安心の元本保証
満期までしっかりお金が守られるのは、国債ならではの安心感。株や投資信託のように、価格が大きく上下する心配がありません。
②金利が上がれば利息も増える
変動10年は、半年ごとに利率が見直される仕組みです。金利が上がれば、それに合わせて利息も増えていきます。また、最低でも年0.05%の金利が保証されています。
③途中でお金が必要になっても大丈夫
「10年も預けっぱなしはちょっと……」と思われるかもしれませんが、実際は購入から1年が経過すれば、1万円単位で中途換金可能です。一部だけを引き出すこともできるので、柔軟な使い方ができます(※直近2回分の利息が引かれますが、元本割れすることはありません)。
両方の特長を理解しながら、「使う予定が近いお金」と「育てたいお金」を分けておくことで、資産も安心して運用していくことができます。
定期預金と個人向け国債、どちらが「有利」なの?
ここまで紹介してきたように、定期預金と個人向け国債(変動10年)には、それぞれ異なるメリットがあります。では、どんな状況でどちらが力を発揮するのか? 主な場面別に整理してみましょう。
●定期預金が向いている場面
・「今の金利がピークかも」と感じたとき
高い金利のまま、満期まで固定できるのが魅力です。
・身近な銀行で相談したいとき
新しい銀行よりも長年使ってきたメインバンクを大切にしたいという方、対面で相談したい方には安心感があります。
・柔軟に使えるお金も確保しておきたいとき
預入期間を工夫することで、計画的に引き出しやすくなります。
●個人向け国債(変動10年)が向いている場面
・金利がこれから上がっていくと思うとき
個人向け国債(変動10年)は、半年ごとに利率が見直されるので、金利上昇の流れに乗れます。
・大きな資金を安全に預けておきたいとき
国が元本を保証しているため、1000万円を超える資産を1カ所で安全に守りたいときに適しています。
・1年以上使う予定がないお金を預けたいとき
満期まで10年ありますが、購入から1年がたてばいつでも中途換金可能です。
「7:3」に分けてみたらどうなる?
ここでは一例として、シニア世代が老後資金を「個人向け国債に7割、定期預金に3割」で分けてみるとどうかを考えてみます。どちらか一方に偏らず、両者のメリットをうまく取り入れたバランス型の方法です。
●個人向け国債・変動10年(7割)は「未来の安心づくり」に
当面使う予定がない老後資金は、変動10年でじっくり育てるのが有効です。金利が上がれば自動的に利息も増える仕組みなので、「定期預金の金利固定」の弱点を補うことができます。
また、変動10年は1年後から1万円単位で中途換金できるため、長期預け入れでも柔軟性があるのがポイント。100万円ずつ分けて購入しておけば、必要に応じて一部だけ取り崩すことも可能です。
●定期預金(3割)は「もしもの備え」に
定期預金の3割は、近いうちに使う可能性がある「予備費」として確保しておくのがおすすめです。
例えば、1年以内に満期になる商品を選べば、急な出費にもすぐ対応できます。資金の一部をすぐに動かせる状態にしておくことで、「いざというときも大丈夫」という心の安心感につながります。
ただし、将来的に金利が下がる可能性もゼロではありません。常に「増える」と思い込まず、状況に応じて見直していくことも大切です。
分け方の正解は1つじゃない。自分のペースで調整を
この「7:3」というのはあくまで1つの目安。人それぞれ、置かれている状況や安心できるバランスは違います。例えば……
もっと手元に現金がないと落ち着かない
→「5:5」くらいから始めてみてもよいでしょう。
なるべく利息を多くもらいたい
→「8:2」など、国債の比率を高めるのも一案です。
将来の大きな支出(住まいの修繕・車の買い替え・子どもや孫への援助など)や、自身の健康状態などもふまえながら、「自分に合った心地よい配分」を見つけることが、何よりも大切です。
国債と定期預金、それぞれの良さを活かしながら、自分にとって心地よいバランスを見つけることが、将来の心の平穏につながる「最適解」といえるでしょう。







