最後は私の元に戻ってくると信じていたのに
20代後半で結婚、その後、夫の転職、起業を助けながら子ども二人を育ててきたユウカさん(54歳)。50歳になったとき、突然、夫から「離婚したい」と言われた。「当時、夫は55歳。起業した会社が軌道にのってかなりいい感じになっていたようです。浮気しているかもしれないと思ったことも何度かあるけど、夫が特に私や子どもたちに冷たくなることもなかったから、夫の浮気は遊びに過ぎない、最後は私の元に戻ってくると信じていたんです」
ところが夫の方は離婚の意志を固めていたというわけだ。私は離婚したくない、何が原因なのかとユウカさんは聞いた。
「なんかオレたち合わないと思うんだよと夫は言う。合わないも何も20年以上、夫婦としてやってきて何が問題だったのか、私はずっとあなたを応援してきたし、子育ての大変な時期だって何かしてくれって頼んだこともない。家庭のことは私が完璧にやるというつもりで頑張ってきたと言いました。すると夫は『そういうのがうっとうしいんだよね』って」
自分の努力を盾にして、夫に感謝してほしいと言ったことはない。離婚という言葉が出たから頑張ってきたことを分かってほしかっただけだ。だが夫は、聞く耳をもたなかった。
愛情がなくなったから別れるのは当然だと夫
「子どもたちはもう一人でもやっていける。きみが住める部屋も用意する。生活費もある程度は援助する。仕事も紹介できると思う。とにかく愛情がなくなったのだから、夫婦としてやってはいけない」夫の言葉は、ある意味では正論かもしれないが、今まで専業主婦だった女性が急に社会復帰するのは難しいし、何よりどうして50歳を過ぎてそんな目にあわなければいけないのか分からなかった。
「『ずっと養ってもらうのが当然だと思ってた?』『人間、自分で食べる分くらい自分で稼いだ方がいいと思うよ、きみだってまだ若いんだし』と、夫に言われて、私は何だか自分が人間失格みたいな気がしました」
友人に話すと彼女は激怒、弁護士を紹介してくれた。互いに弁護士を立てて話し合ったが夫の離婚の意志は固かった。結局、慰謝料を加算、お金で解決するような形になった。愛情をお金に換算されたのがなんともせつなかったとユウカさんは言う。
夫は「トロフィーワイフ」を望んでいた
別れた夫の紹介で仕事を始めたユウカさん。最初は慣れずに戸惑ってばかりいたが、大学時代に留学経験もあり、主婦時代も続けていた英語が役立った。社内でも英語が堪能だと評判になり、総務部勤務だったのに1年後には輸出入がらみの部署に異動、必死で勉強して少しずつ仕事をこなせるようになっていった。夫に関する話はなるべくシャットアウトして聞かないようにしていたが、どうやら離婚後、ほどなくして再婚していたと知った。
「相手は二回りも年下の控えめな美女だそうです。モデルみたいなことをしていたとか。夫は仕事関係のパーティーなどに彼女を帯同しては美人妻を見せびらかしているらしい。ああ、結局、トロフィーワイフがほしかったのかと納得がいきました。同世代で専業主婦の私じゃ、パーティーには一緒に行きたくないでしょうしね。誰もきれいな奥さんですねと言ってくれないでしょうから」
別れても敬意を抱ける人でいてほしかった
ユウカさんはそう言って苦笑いした。自分の社会的地位が上がると、それに応じて若くてきれいな妻をほしがる。一部の男性にはいまだにそういう欲求があるのかもしれないが、それは女性をアクセサリーにしているだけ。周りから見れば、女性を平等に見ていないというだけで今の時代はあきれられる可能性も高い。「つい最近、元夫と共通の知り合いに会ったんですが、『あんなヤツだと思わなかった』と言っていました。それは私を慰めるためではなく、若い妻をもらってから元夫がやけに外見を気にするようになり、仕事にも以前のように身が入ってないとうわさされているって。まあ、失脚しようとどうしようと私の知ったことではないけど、私自身、そういう人と結婚していたというのが悔しいですね。別れても敬意を抱いていられるような人でいてほしかった」
若い女性と一緒になったのがいけないわけではないけど、周りの話を総合すると、元夫は自分の経済力や地位を、若い妻をきらびやかにすることで表現しているとしか思えないのだという。自分の過去を否定せざるを得ないような気持ちになるのが、なんともつらいとユウカさんは吐き捨てるように言った。








