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箱根駅伝でシェアNo.1となるか?「asics」のバナナより軽いシューズに見る日本メーカーらしい特許技術(3ページ目)

毎年恒例の箱根駅伝が迫ってきましたが、来年は例年以上にシューズシェア争いが激しくなる予感がします。そうした中、日本メーカーのasicsがバナナよりも軽い超軽量シューズでシューズシェアNo.1を取れるか注目です。そんな超軽量シューズに用いられている特許を解説します。※画像:amanaimages

藤枝 秀幸

藤枝 秀幸

弁理士 ガイド

弁理士

弁理士・行政書士。IT会社等でのプログラマ・SEとしてのシステム開発等を経て、2009年に当事務所(現:藤枝知財法務事務所)を開業。現在はIT分野やエンタメ分野のクライアント様を中心に契約書業務や知的財産業務を日々行わせて頂いております。

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METASPEED RAYに用いられている日本人向けの機能

「METASPEED RAY」を実際に履いて走ってみると、他のシューズを履いて走っているときと比べて、「足が真っすぐ進んでいる感覚」を受けます。
 
これは、asicsが特許出願中の技術によって、いわゆる「プロネーション」の発生が抑制されているためと考えられます。プロネーション(回内)とは、図2のように着地の衝撃を分散させるために、着地するときにかかとが内側に倒れ込むように働く、人間の自然な動きのことです。
プロネーションのイメージ図※画像は筆者作成

図2:プロネーションのイメージ図 ※画像:筆者作成

日本人ランナーは、マラソン大国のケニアランナーらと比べると小指の付け根あたりで着地するために、激しくプロネーションを起こしているランナーが比較的多いといわれています。マラソンを走る筆者もかなりオーバープロネーション気味です。

過度なプロネーションには、着地エネルギーが吸収されてしまい、地面からの反力をうまく推進力に転換しづらいというデメリットがあります。
 
asicsは、こうした日本人ランナーの悩みともいえるプロネーションの発生を抑制するための特許をこれまでも多く取得しており、最も新しいプロネーションに関する特許出願(特願2023-172773)による技術が、この「METASPEED RAY」にも用いられていると考えられます。

日本メーカーらしい細やかな技術

この特許出願(特願2023-172773)による技術は、前足部において、外側よりも内側の溝の深さを絶妙に浅くし、かつソールの外側よりも内側を柔らかくすることで、プロネーションの発生を抑制するようになっています。
 
「METASPEED RAY」は、履いて走ると軽さをすぐに実感しますが、プロネーションの発生を抑制できていることも同時に実感でき、走っていて推進力を感じやすい理由の大きな一つになっていると思われます。

また、日本メーカーのasicsらしい細やかな技術として、ミッドソールにV字形状の切り込みを入れることで着地時の衝撃性を緩和することができる、という特許出願中(特願2025-148518)の技術(図3)も用いられていると推測できます。
シューズのミッドソールにV字形状の切り込み※画像出典:特許情報プラットフォーム

図3:シューズのミッドソールにV字形状の切り込み ※画像:特許情報プラットフォーム

特許文献においても、ミッドソールにV字形状の切り込みを入れることにより、厚底シューズのデメリットである安定性の低下という問題を解消し、かつ地面からの反発性と耐衝撃性を向上させることができる、といった内容が記載されています。
 
このような日本メーカーらしい細やかな技術が随所に用いられているところも、「METASPEED RAY」の特徴といえるのではと考えます。
 
次の箱根駅伝で「METASPEED RAY」を履く選手がどれだけ出てくるか、そしてasicsがシェアNo.1になるかどうか、シューズという側面からも箱根駅伝での注目点は多くあり、今から箱根駅伝本番が非常に楽しみです。

>次ページ:バナナよりも軽いasicsの超軽量シューズ「METASPEED RAY」
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