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【昭和100年】エレベーターガールだけじゃない、消えた「昭和の職業」、給料の「手渡し文化」

昭和ってどんな時代だった? 2025年は昭和元年(1926年)から100年の節目の年でもあり、昭和時代を振り返る機会が増えています。熱量にあふれた昭和のエピソードを読み解きます。※画像:PIXTA

All About 編集部

昭和時代、笑顔で客を案内したエレベータガール ※画像出典:PIXTA

昭和時代、笑顔で客を案内したエレベーターガール ※画像出典:PIXTA

働くことが人生そのもの。理不尽さも不満もすべて抱き込み、昭和の仕事場には驚くほどの熱量が渦巻き、今ではあり得ないエピソードが多くありました。昭和を知る人には懐かしく、知らない世代には驚きの連続となるでしょう。

眠れなくなるほど面白い 図解 昭和の話』(町田忍監修)では、庶民文化研究の第一人者の監修で「昭和の本当の姿」をひも解きます。今回は本書から一部抜粋し、昭和時代の仕事について紹介します。
<目次>

今はなき、昭和を支えた職業

昭和の街角を思い出すと、今ではすっかり姿を消した職業に出会えます。駅前の靴磨き職人は、革靴を光らせて出勤するサラリーマンに欠かせない存在でした。子どもたちにとっては、路地に自転車を止めて紙芝居を演じる紙芝居屋が楽しみのひとつで、駄菓子を買うことで物語を見せてもらえるしくみでした。

>昭和を彩った職業を見る

映画館や大衆娯楽の世界にも、今では失われた職業がありました。無声映画の時代には、活動弁士が映画のセリフや情景を語り、観客を引き込みます。映画が音付き(トーキー)へ移行すると、その役割を終えましたが、昭和初期まで観客の心をつかむ重要な仕事でした。

また、技術の発展は職業の存亡に多大なる影響を及ぼしていきます。たとえば、電話交換手はかつて人の手で電話回線をつなぎ、通話を取り次いでいました。しかし、自動交換機の普及で急速に衰退を迎えます。同じように、タイプライターを打つことを専門としたタイピストも、ワープロやパソコンの普及によって不要となりました。

このような消えた職業は、社会がどう変わったかを映す鏡です。生活のなかで必要とされていた仕事が、技術革新や娯楽の変化によって自然に消えていった過程は、昭和という時代そのものの移り変わりを示しています。

>昭和の職業が消えた理由を見る

給料日は“封筒の日”だった 手渡しが生んだドラマ

給料日になると、職場の空気がそわそわとしている——そんな昭和の光景を覚えている人も多いでしょう。銀行振込が一般化する以前、給料は封筒に現金を詰めて手渡されるのが当たり前でした。月に一度、上司から直接渡されるその瞬間には、労働の成果を実感し、封筒の厚みに安堵や不安を感じることもあったのです。
※画像出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 昭和の話』

※画像出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 昭和の話』

また、封筒を受け取る場面には、上司と部下の関係性もにじみ出ていました。ねぎらいの言葉をかけられることもあれば、無言で手渡されることもあり、渡し方ひとつに人間味が表れていました。部下にとって、給料の額だけでなく、そのやり取りまでもが記憶に残るものだったのです。ボーナスも同じく封筒で支給され、その厚みが半年分の頑張りを物語っていました。

そして、家庭に持ち帰った給料は、すぐに家計に組み込まれました。夫が封筒をそのまま妻に渡し、生活費や貯金に振り分けられていきました。暮らしを支える資金が、基本的に見える形で手元にあったというのは、今とは違う感覚です。一方で、自由に使える小遣いをめぐって夫婦間の駆け引きが生まれるなど、給料袋を中心としたドラマも数多くありました。

しかし、やがて銀行振込に移行すると、封筒をめぐる文化は消えていきます。効率的であるものの、ぬくもりは失われたのです。

>封筒から銀行へ、給料日のスタイルの変化を見る
  町田忍(まちだ・しのぶ)プロフィール
1950年東京都目黒区生まれ。和光大学人文学部芸術学科卒業。在学中の博物館実習をきっかけに博物学に興味を持つ。卒業後は約1年半、警視庁警察官として勤務したのち、庶民文化における風俗意匠を研究。チョコレートや納豆ラベルなどのパッケージ収集は2000枚を超える。著書に『戦時広告図鑑』(WEVE出版)、『納豆大全』(小学館)、『町田忍の銭湯パラダイス』(山と渓谷社)など多数。現在はエッセイスト・写真家・庶民文化研究家として幅広く活躍。
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