男のこだわりグッズ

缶→ソフトケース、丸軸→六角軸に変化。トンボ鉛筆の新商品に見る「子ども用色鉛筆セット」の最先端

12色セットの色鉛筆といえば、昔から子ども用文具の代表的存在。ただその中身は変わってきています。例えば白がなくなり紫が入り、はだいろという呼び名はなくなりました。トンボ鉛筆の新しい色鉛筆は、さらにソフトケース入りで六角軸、芯もリニューアルされた子ども文具の最先端なのです。

納富 廉邦

納富 廉邦

男のこだわりグッズ ガイド

「おとなのOFF」「日経トレンディ」「グッとくる文房具」「GetNavi」「夕刊フジ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな媒体で、文具などのグッズ選びや、いまおすすめのモノについて執筆。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方をお伝えします。

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トンボ鉛筆「ippo! ソフトケース入色鉛筆」商品写真

トンボ鉛筆「ippo! ソフトケース入 色鉛筆」1122円(税込)。内容色は、きいろ、きみどり、みどり、みずいろ、あお、むらさき、ももいろ、あか、だいだいいろ、うすだいだい、ちゃいろ、くろの12色。ケースのカラーは写真左から、ネイビー、パープル、ライトブルー、ホワイトの4色。中の色鉛筆はばら売りもあり(1本77円・税込)

文房具と一言で言っても、会社で使うものと学校で使うものでは、全く違うコンセプトで作られていたりします。例えば、「色鉛筆」は子ども向けのいわゆる学童文具か画材用の製品がほとんどで、あとはビジネス向けには赤青鉛筆があったり、大人の趣味向けの画材と文具の中間のような製品があったりします。

トンボ鉛筆の「ippo! ソフトケース入 色鉛筆」は、子ども用色鉛筆の12色セットですが、従来の缶ケースや紙箱ではなく、プラ製のソフトケースに入っているのが特徴です。しかも、子どもの弱い筆圧でも濃く塗れるソフトタッチ芯と、転がりにくい六角軸を採用。子どもが色鉛筆を使うシチュエーションを考慮した製品仕様となっています。
トンボ鉛筆「ippo!スライド缶入色鉛筆」

今回のソフトケース入の以前に売られていた缶ケース版「ippo! スライド缶入 色鉛筆」は、フタをスライドして開けて、ケースの下に重ねられるようになっていた

「トンボ鉛筆では、この『ソフトケース入』の前までは、缶ケースに入った12色セットを販売していました。フタがスライド式になっていて開けやすく、使う時はフタ部分をケース下に重ねることで、学校の小さい机でも場所を取らないと好評でした。

ただ、スライドさせるという開け方が苦手なお子さまもいたり、フタ部分が平面なので、どうしても他の缶ケースに比べて歪みやすいという欠点もありました。また、リニューアルを考えていた時に、缶ケースは重かったり、落とした時にガシャンと音が鳴ったりするなどの理由から、実は敬遠されがちという話も聞きました。今回ソフトケースにした大きな理由は、現場からの声を取り入れた結果です」と、開発の経緯をお話してくださったのは、株式会社トンボ鉛筆プロダクトプランニング部の水谷英里佳さん。

単にソフトケースに置き換えただけではない

フタを廻して裏に回す

ソフトケースのフタはこんなふうに360度開いて、本体の下に回すことができる

筆者が小学生だったはるか昔に、すでに缶ペンケースを禁止している学校もあるほど、缶ケースが机から落ちた時の音は大きくて不快だったのですが、芯が折れやすかったこともあって、色鉛筆は缶ケースが今でも主流なのだそうです。在庫管理や流通のことを考えても、省スペースで丈夫な缶ケースは有効だったのでしょう。

「他者の画材などでは昔からプラケースの製品もありました。ただし弊社の場合、スライド式のケースで机の上で場所を取らないとか、ランドセルやお道具箱の中でかさばらないことは大事にしたいと考えていました。そのため、ストッパーなしでもしっかり閉じられる構造や、フタ部分が本体の下に回って、しっかり水平に置ける機構を考えました。それも、ただフタ部分を折り返せるというだけではなく、中の色鉛筆を全て取り出しても持ち上がらないように知恵を絞りました」と水谷さん。
机の上の例

フタが完全に後ろに回ると机の上での収まりがいい。中の色鉛筆を全て出しても、フタは持ち上がらない

確かに、「ippo! ソフトケース入 色鉛筆」のケースは、フタを楽に後ろに折り返せるようになっていて、そのままペタンと本体下に回ります。これなら、机の上で場所を取りません。ケースの構造はDVDやBlu-rayのケースとあまり変わらないように見えるのですが、実は、背の部分に“秘密”がありました。

「試作品では、背の部分に台紙が挟まった構造だったのですが、背の部分の反発が強くなって折り返せませんでした。そこで、背とケースをつなぐ部分を、皮1枚でつながっているような構造にして、背の部分には台紙も入れないようにすることで、きれいに後ろに回り込むケースができました」と水谷さん。
ソフトケースの背の部分の構造

背の部分は薄いビニールだけでつながっている状態。フタがきれいに回り込むのは、この構造のおかげ

背の部分の台紙はもともと入れる予定だったのを、入れるとうまく回り込まないということで外したのだそうです。プラケースとしては思い切った仕様ですし、こういうブック型のケースだと背表紙を作りたくなるところですが、機能を優先させた潔さが、新しい子ども用文具を生んだという気がします。

丸軸から転がりにくい六角軸への移行が始まっている

六角軸

六角軸に名前を書き入れるためのスペース付き

六角軸の色鉛筆は、トンボ鉛筆ではすでに「Hello Nature.」シリーズがあり、リニューアルした大人用の「色鉛筆 木物語12色」でも六角軸が採用されています。色鉛筆といえば丸軸が当たり前だった時代から、徐々に六角軸が増えている印象がありますし、実際に使う側から見ても、転がりにくく握りやすい六角軸はありがたいものです。

「やはり六角軸は反響はいいと思います。転がりにくいことと、持ちやすいところが好評ですね。本気で絵を描く人であれば、自由な持ち方ができるため丸軸がいいと思うのですが、お子さまが持つ場合、プロのように持つわけではないはずなので六角軸がいいのではないでしょうか」と水谷さん。

「正確には分からないのですが、昔は色芯が黒い芯よりも強度が弱かったので、丸軸にしないと落とした時に中で折れてしまうことがあったようです。六角軸では弱い部分と強い部分があって、圧力がかかる場所によっては折れやすかったらしいと伝えられていました。ただ、改めて『Hello Nature.』で六角軸にした時に試してみたところ、特に折れやすさは変わらなかったそうです。「当時と比べて、芯の性能や木工技術が上がっているのかもしれません」と、水谷さんが分かっている範囲でお話してくださいました。

柔らかく、滑らかで濃く塗れる「ソフトタッチ芯」

紫と黒、軸色の比較

水谷さんのこだわりで軸の塗装の色を変えた紫は、間違えやすかった黒と比べても、はっきり違う軸色になっている

その芯も、今回使われているのは「ソフトタッチ芯」という、ひと塗りで以前のモデルである「ippo! スライド缶入 色鉛筆」よりも30%濃く塗れて、滑らかさも10%向上しているという芯です。

「『ソフトタッチ芯』は柔らかいので、同じ筆圧で書いた時に色が厚めに盛れるというイメージです。従来の芯では、薄く塗り重ねていってグラデーションを作っていくような使い方ができますが、今回この芯はひと塗りで濃く発色するため、短時間できれいに仕上げられます。お子さまの場合、グラデーションを作るというより、時間がない中で塗りたい色をしっかり塗るといった使い方が中心になるだろうと考え、作り上げました」と水谷さん。

実は、軸の塗装についても、水谷さんなりのこだわりがあったと言います。

「これは、細か過ぎるためあまり言っていないことなのですが、弊社の製品も他社のものも紫色の軸の塗装が濃くて、パッと見た時に黒と区別が付きにくいのが気になっていたんです。介護現場などでも見分けが付きにくいという意見もあったり、実際の利用者からもそういうお話を聞いていたりもしたので、少しだけ赤みを足したような色にしています。芯自体の発色も鮮やかになっているので、それに合わせたというところもあります」と水谷さん。
木物語との比較

上がippo!、下が木物語の色鉛筆の軸。木の材質や塗装、印刷の違いが児童用と大人用の違い

「ippo! ソフトケース入色鉛筆」は“子ども用の色鉛筆の現在”を凝縮したようなセットなのですが、大人用には、同じくソフトタッチ芯と六角軸を採用した「色鉛筆 木物語12色」があります。

こちらは、子ども用と違い、紙箱ですし、ばら売りはなく12色セットでの販売ですが、軸には森林の保全に配慮したPEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes)森林認証材を採用したり、薄めの塗装で木の味わいを楽しめたりするなど、大人の道具としての色鉛筆に仕上がっています。

画材用の色鉛筆と子ども用色鉛筆の間のような製品なので、ちょっと絵を描きたいという人に向いた製品。今の色鉛筆の進化具合を知るのにも最適です。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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