7歳年上のバツイチ男性と出会って
サヨコさん(38歳)が、7歳年上の男性と知り合ったのは1年前。友達に「人数足りないからお願い」と頼まれた飲み会で出会った。「たまたま隣に座ったのが彼でした。いろいろ話しかけてくれたんですが、プライベートなことに踏みこんでくる感じはなくて、最近観た映画とか趣味のこととかで盛り上がりました。とにかく感じのいい人、もっと話したい。そんな気持ちになったんです」
それを察したかのように、彼から翌日、連絡があった。もう少し話したかったです、今度、食事でもいかがですかと。サヨコさんもすぐに返信した。「ぜひ」と。そこからはトントン拍子だった。
互いに忙しかったのだが、それでも週に2、3回、時間を作って会っては話した。30分くらいしか時間がないときでも「お茶しよう」と会った。
「本当に話が尽きなかった。彼はバツイチでしたが、若いときの結婚で子どももいないということも分かった。私は初婚ですが、彼がバツイチであることに抵抗はありませんでした。短い結婚生活だったと聞いていたし」
盛り上がってスピード婚
だんだん、サヨコさんが彼の家に泊まる日が多くなった。ある日、キャリーバッグに身の回りのものを詰めて彼の家に行くと「越してきちゃえば?」と言われた。ちょうど彼女の賃貸マンションの契約更改の時期だったので、彼に勧められるままに契約を更新せず、彼の家に越した。「彼が30歳のときに購入したマンションで、3LDKの広さ。立地もよくて私も会社に近くなってありがたかった。ローンもあと数年で終わると聞きました」
前の結婚について、彼はほとんど話さなかったが、それは完全に吹っ切れているからだとサヨコさんは思っていた。彼は彼女の過去の恋愛について軽く話題にしたが、「結婚まで考えた人はいなかった」と言ったとき、ホッとした顔を見せた。
「同居を始めると、彼はいろいろ気を配ってくれました。寝室は一緒がいいか別がいいか、食事は早く帰った方が用意しよう、でも連絡を取り合おうとか。何でも話し合ってやっていこうという気持ちが感じられてうれしかったですね」
この人とならやっていける。残りの人生、ともに手を携えていけたらいいなと本気で思った。知り合ってから3カ月目、二人は婚姻届を出した。
彼の言動に違和感を覚えるように
だが、一緒に生活するうち、サヨコさんが首をかしげざるを得ないことが増えていった。「例えば彼、私が生理になると、腫れ物にさわるような扱いをするんですよ。いつもなら彼が料理を作ってくれたあと、『皿洗い、手伝ってくれる?』と言うのに、その時期は『いいよ、座っていて。何か飲みたいものある?』と異様な感じで接してくる。どうしてかと聞いたら、『女性は生理中、メンタルが不安定になるでしょ』と。それは人による。私はメンタルには影響はない、普段通り接してと言ったら、そうかなあと悩んでいる。女はみんなそういうものだと思い込んでいるようでした」
何かというと、女性はこうだよねと決めつけてくる。それが優しさから出たものだとしても、サヨコさんは「人による」と言い続けた。自分を個人として見てくれていない気がしたからだ。
「結婚式も挙げなかったんですが、しばらくたってから互いの友人を集めて食事会をしたんです。全部で20人くらい。そのとき彼の友人から、こっそり『前の奥さんのこと、聞いてる?』と言われて。若いときの結婚だったんですよねと言ったら、『中学生時代からのつきあいだったんだよ』『彼がほれまくって10年後に結婚した』『彼は本気で彼女を愛し続けたけど、彼女が愛されることに疲れたと言って5年後に離婚した』とさまざまな情報を教えてもらいました」
中学時代からの思いを10年持ち続けて、やっと結婚して5年で離婚。30歳までの人生で彼は前妻と15年もつきあっていたのだと、サヨコさんは初めて知った。
自分は前妻の代わりではない
「それ以降、ほとんど恋愛もしなかった彼がなぜ私と結婚したかというと、私が前妻に似ていたからだそう。友人たちは、すごく似てるとびっくりしたそうです」その話を聞いてから、サヨコさんは彼が何か言うたびに「前妻と比べているのではないか」と思うようになった。彼の「女性の基準」が、全て前妻なのではないかと。それはあまり愉快なことではなかった。
「結婚して半年ほどたったころ、彼の部屋を掃除しようと入ったら、机の上に前妻らしい写真が数葉、あったんです。ツーショットもあった。確かに彼女と私は似ていました。ああ、やっぱり彼は前妻が好きで、私が似ているから再婚したんだと思った」
自分は前妻の代わりではない。そう言いたかったが、気遣いばかりする彼に何も言えなかった。それから半年たった今も、彼女は「前妻の代わり」として「比べられている」気がしてならないという。
「彼の好みの前妻さんを私が演じる必要はないんですが、なんだかこちらも気を遣ってしまう。彼は嫌われないように一生懸命になっているみたいだけど、私は自分が自分でいられなくなってきている。1度、ちゃんと話し合おうとは思います。できれば第三者を入れた方がいいのかも」
そのベストなタイミングを考えているところだと、サヨコさんは浮かない顔で言った。
<参考>
・「令和6年(2024) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」(厚生労働省)








