『交通トラブル六法 「知らなかった」では済まされない道路の新常識』(藤吉修崇著)では、弁護士YouTuberの著者が、教習所では教えてくれない道路交通法の“危険な盲点”や、交通トラブルから身を守る法的知識を分かりやすく教えてくれます。
本書から一部抜粋し、自転車の違反行為に関する衝撃の検証結果を交えながら、来年度(2026年4月)から導入される反則金制度(青切符)と、段階的に強化される自転車の罰則について紹介します。
「自転車なら大丈夫」は通用しない?
街中でよく見かける「自転車の逆走」。通勤や通学中、右側を堂々と走る自転車を目撃したことはありませんか?「自転車なら大丈夫だろう」と軽い気持ちで右側通行をしている方もいるかもしれませんが、実はこれ、大きなリスクと罰則が伴う違反行為です。知らずに走り続けていると、思わぬ落とし穴にはまってしまうかも。
自転車の「段階的な厳罰化」が始まった
道路交通法では、自転車は「軽車両」に分類されており、自動車やバイクと同様、左側通行が義務付けられています。近年、自転車の違反行為を取り締まる法律が段階的に強化されています。まず2024年11月1日から、特に危険な違反行為に対する刑事罰が導入されました。
「2024年11月1日施行の刑事罰(赤切符)」として、ながら運転(スマホ操作や画面を2秒以上注視)は6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金(危険を生じさせた場合は1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)、酒気帯び運転は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となります。
これらは刑事処分なので、赤切符が交付され、前科が付く可能性があります。
一方、2026年4月1日からは、より幅広い違反行為に対して反則金制度(青切符)が導入されます。これは16歳以上が対象で、反則金を納付すれば刑事処分は免除される仕組みです。
2026年4月1日から導入される主な自転車の交通違反に対する反則金は以下の通りです。
●「ながら運転」(携帯電話使用):1万2000円
●遮断機が下りている踏切立ち入り:7000円
●信号無視:6000円
●逆走や歩道通行などの通行区分違反:6000円
●一時不停止:5000円
●ブレーキ不良などの制動装置不良:5000円
●傘差し運転やイヤホン使用:5000円
●無灯火:5000円
●並進禁止違反:3000円
●二人乗り:3000円
2024年と2026年の違いを理解しよう
「注意だけで済むんじゃないの?」これは段階的に変わります。2024年11月1日からは特に危険な「ながら運転」と「酒気帯び運転」に刑事罰が導入され、赤切符(前科が付く可能性)が交付されます。そして2026年4月1日からは一般的な交通違反に反則金制度が導入され、青切符の対象になります。「一方通行は自転車OK?」これも間違いです。特別な標識がない限り、自転車も逆走禁止です。
「自転車だから処罰されても軽いはず。」これも甘い考えです。2024年から特に危険な違反には刑事罰が、2026年からは幅広い違反に反則金が科されるようになります。また、16歳以上が対象なので、高校生でも青切符を切られる可能性があります。
【実際の事例】驚愕! 3時間で32万9000円の違反
2024年11月1日から自転車の罰則が大幅に強化され、関西テレビが大阪・梅田で実施した検証では、その実態が明らかになりました。関西大学社会安全学部の伊藤大輔教授とともに行った3時間の調査で、自転車の違反件数はなんと合計61件確認されました。これは実際に摘発されたわけではなく、取材班が独自に違反行為をカウントし、2026年4月から導入予定の反則金額で計算したものですが、仮に全て取り締まりを行った場合、反則金の合計は32万9000円という驚愕の結果となったのです。
特に多かったのがイヤホンをしながらの運転で、3時間で41件も確認されました。1件あたり5000円の反則金なので、合計20万5000円。取材班が声をかけても逃げる人、「5000円? どっちでもいいかな」と開き直る人まで現れました。
逆走(通行区分違反)も8件確認され、1件6000円で合計4万8000円。中には5分間で逆走と信号無視を繰り返し、1人で2万4000円(逆走6000円×2+信号無視6000円×2)の反則金計算となった男性もいました。
ちなみに最も高額なのは「ながら運転」で1万2000円。スマホを操作しながらの運転は、自転車でも車と同等に重い処罰が待っています。
この検証結果は、実際の取り締まりではありませんが、いかに多くの自転車利用者が違反行為を行っているかを示す貴重なデータとなっています。
弁護士からひと言!
逆走は正面衝突の危険性が非常に高く、速度が合算され衝撃も大きくなります。車の運転者は右側からの自転車を予想していないことも多いため、重大事故につながりやすいのです。なぜ今、自転車の罰則が段階的に厳しくなるのかというと、近年、自転車事故の件数が高止まりしているからです。2024年には自転車関係の事故が6万7531件も発生し、交通事故全体の約4分の1を占めました。特に亡くなった自転車乗車中の人の約82%に法令違反が確認されており、違反が重大事故につながっている実態があります。
2024年11月からは特に危険な「ながら運転」と「酒気帯び運転」に刑事罰を導入し、見せしめ的な効果を狙っています。そして2026年4月からは幅広い違反に反則金制度を導入することで、日常的な違反も含めて実効性のある取り締まりを行う方針です。
意外と知らない人も多いのですが、自転車運転者講習として、危険な違反を3年以内に2回繰り返すと、講習の受講が義務化されます。講習時間は3時間、受講料6150円。受講しない場合、さらに5万円以下の罰金となります。「ながら運転」と「酒気帯び運転」も2024年11月から講習対象の危険行為に追加されました。
結局どうすればいい?
自転車の逆走は単なるマナー違反ではなく、重大な交通違反です。安全のためにも、自転車の交通ルールを正しく理解し、快適なサイクルライフを送りましょう!●2024年11月から特に危険な違反(ながら運転・酒気帯び運転)に刑事罰導入
●2026年4月1日から幅広い違反に反則金制度が導入される
●取り締まりが強化され、「自転車だから大丈夫」とは言えなくなった
●16歳以上が反則金の対象(高校生も青切符を切られる可能性)
●逆走は法律違反であり、事故の危険が非常に高い
●違反を繰り返せば講習義務が発生し、受講しないとさらに罰金
藤吉 修崇(ふじよし・のぶたか)プロフィール
東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒業。弁護士法人ATB代表弁護士。大学時代に演劇に没頭し、スコットランドへ留学後、舞台演出や空間プロデュースに携わる。30歳を過ぎてから一念発起し、猛勉強の末、司法試験に合格。弁護士法人ATBを設立。YouTubeチャンネル「二番煎じと言われても」では、道交法の理不尽な状況を法律の観点から解説し話題となり、登録者数は20万人を超える。







