『交通トラブル六法 「知らなかった」では済まされない道路の新常識』(藤吉修崇著)では、弁護士YouTuberの著者が、教習所では教えてくれない道路交通法の“危険な盲点”や、交通トラブルから身を守る法的知識を解説。
今回は本書から一部抜粋し、車で歩行者と衝突した場合の「過失割合の真相」を紹介します。
<目次>
事故の背景|車で「信号無視の歩行者」と衝突した場合
交差点で信号無視の歩行者が飛び出してきたら、「完全に向こうが悪い!」と思うのが普通ですが、現実はそう単純ではありません。歩行者との事故で車の過失がゼロと認められるのは、実は宝くじに当たるくらい珍しいケースなのです。過失割合のカギ|予見可能性という魔法の言葉
なぜかというと、車は歩行者に比べて圧倒的に強力で、怪我をさせる危険性が高い存在だからです。法律でも、ドライバーには歩行者よりはるかに重い注意義務が課されています。そのため「少しでも注意を怠った」と判断されれば、すぐに車側の過失が認められてしまうのです。具体的には「予見可能性」という言葉がポイント。つまり、「こんなことが起こるかも」と少しでも予測できる状況で注意が足りないと判断されれば、残念ながら過失ゼロは幻と化してしまいます。
よくある誤解|「完全に予想外」でも厳しい現実
じゃあ、「まったくの予想外」であれば車の過失はゼロになるの? という疑問が湧きますが、例えば夜間の高速道路で突然、忍者か幽霊のように歩行者が出現した場合や、ビルの上から人が降ってくるなど、本当に特殊でレアなケースしか認められません。普通に考えて「人が降ってくる」なんて予測不能ですからね!日常的な状況ではほぼアウトです。「赤信号を無視した歩行者が悪い」と言いたくなりますが、「それでも子供なら飛び出してくることは予想できるでしょう」と言われると、悲しいことに反論できなくなります。
実際の判断事例|1秒の差が明暗を分ける
例えば、歩行者が飛び出してきたときに「あと1秒でも早く気づけたのでは?」「もう少し減速できたのでは?」と思われるようなケースでは過失ゼロは厳しいでしょう。特に子供や高齢者が相手の場合は、さらにハードモードになります。「もっと慎重に運転すべきだった」と判断される可能性が高いのです。逆に、限りなく過失をゼロに近づけるためには、日頃からとにかくありとあらゆるケースを想定しながら、周囲を警戒して運転する必要があります。歩行者がどこから出現しても「あ、君の動きは読んでいたよ!」と言えるくらいの安全運転を心がけましょう。
ドライブレコーダーをつけておけば、「これは絶対に避けられないでしょう?」という証拠になることもあります。
弁護士からの対策とアドバイス
とはいえ、歩行者も無敵ではありません。明らかに無茶な横断を繰り返す場合や、わざと車の前に飛び込むような行動には歩行者側にも責任が発生します。ただし、一番大きな怪我をするのは歩行者自身です。どれだけ法律で守られていても怪我をしたら意味がありません。結局のところ、お互いが気をつけることが最も効果的な防御策というわけです。よく、歩行者優先だからと堂々と歩いて、車が近づいているのにお構いなしって人もいるけど、怪我をして損をするのは自分ですよ。
結局、ココが大事!
結局のところ、一番大切なのは日常から安全運転を徹底して、事故そのものを避けること。●車と歩行者の事故で車の過失ゼロはほとんど奇跡的
●「予測可能性」がある限り、過失は認定される
●歩行者が非常識でも車が不利になりがち
●ただし、「ビルの上から人が降ってくる」レベルの予想外なら過失ゼロもあり得る
交通事故の「想定外」を遠ざけることが最強の予防策ですよ!
藤吉 修崇(ふじよし・のぶたか)プロフィール
東京都出身。慶應義塾大学経済学部卒業。弁護士法人ATB代表弁護士。大学時代に演劇に没頭し、スコットランドへ留学後、舞台演出や空間プロデュースに携わる。30歳を過ぎてから一念発起し、猛勉強の末、司法試験に合格。弁護士法人ATBを設立。YouTubeチャンネル「二番煎じと言われても」では、道交法の理不尽な状況を法律の観点から解説し話題となり、登録者数は20万人を超える。







