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今のままでは“介護難民”が増えてしまう…大切な司令塔「ケアマネジャー」が減り続けている深刻な理由(2ページ目)

要介護者は増え続ける一方で、介護サービスの中心的な役割を果たす「ケアマネジャー」は減少し続けています。このままでは、必要な介護サービスを受けられない要介護者や介護家族が増えてしまうリスクがあります。※画像:PIXTA

横井 孝治

横井 孝治

介護・販促プロモーション ガイド

2001年の夏から急に始まった両親の介護を通して、多くのことを考え、悩み、そして学んできました。現在は、正しい介護情報を多くの方々と共有するため、介護情報サイトの運営や、執筆、講演活動を行っています。2011年からは、20年以上のキャリアをもとに「販促プロモーション」ガイドにも就任しました。

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国や自治体に求められている対策は?

こうしたケアマネジャーが減っていく状況を踏まえたうえで、国や自治体に求められている対策にはどのようなものがあるのでしょうか。

【対策1:受験資格要件の緩和】
先述しましたが、厚生労働省は【実務経験5年以上】という受験要件を、2年または3年以上に短縮する方向で検討を進めています。また、受験資格の対象となる資格についても拡大する方向とのことです。受験のハードルが下がることは、新規参入者の増加につながりやすくなります。一方で、ケアマネジャーの質が下がってしまう懸念があるのも事実です。

また、ケアマネジャーよりも元の資格を使って仕事をしたほうが稼げるという問題は残り続けると、筆者が考えます。例えば、現在看護師の人は、ケアマネジャーになるよりも看護師のまま働き続けたほうが、年収はかなり多くなるでしょう。

年収が高いのになぜわざわざ看護師を辞めてケアマネジャーにならなければいけないのか。よほどのモチベーションが高い人、介護についての思いがある人でなければ、そう思って当然と言えるかもしれません。

【対策2:処遇改善策の推進】
居宅介護支援の介護報酬に処遇改善加算を導入し、賃上げを実現することが、業界団体などから強く要請されています。ケアマネジャーとして働く人にも処遇改善加算として給料の上積みするよう、国として支援してほしい。これは至極当然と言わざるを得ません。

社会的にも大きな意義を持っているのに、資格取得の難易度が高く、なおかつ圧倒的に人数が足りていないという状況ならば、報酬を増やさなければいけないですし、その報酬を事業所だけの責任とするのは現実的に無理です。

介護報酬の全体が増えない今の状況において、赤字の事業者も多いです。ケアマネジャーに適正と思われる給料を支払うと赤字幅が大きくなりつぶれてしまうかもしれません。それは利用者側としても困ってしまうわけです。

一時的かもしれませんが、現時点では国がその費用を負担することも必要ではないでしょうか。

【対策3:研修制度の抜本的改革】
研修負担を軽減するための制度改革が進められているといいます。特に地方在住のケアマネジャーの負担軽減が期待されています。主な改革のポイントは以下の通りです。

・オンライン受講の本格導入
・研修の分割受講制度の確立
・地域医療介護総合確保基金による受講費用の補助拡大
・全国統一的な研修カリキュラムの整備

地方在住のケアマネジャーにとって、時間やお金をかけて研修会場に行かずオンラインで研修が受けられるのはうれしいはず。資格取得だけではなく、資格維持に必要な更新研修制度のハードルを下げることも、重要ではないかと思われます。

【対策4:ICT活用による業務の効率化システム化】
可能な業務は徹底的にシステム化を図り、利用者1人当たりにかかる業務負担の軽減が急務とされています。主な効率化のポイントとして挙げられているものは以下の通りです。

・AIによるケアプランの作成支援
・タブレット端末を活用した訪問記録の電子化
・オンラインによるサービス担当者会議の実施
・電子署名による書類のペーパーレス化

なお、ケアマネジャー全体の高齢化が進んでいる中で、最新技術を使いこなせる人材を確保することは、難しい部分もあると考えられます。使い勝手のいい技術やサービスがどんどん出ているとはいえ、覚えるための勉強や練習も必要です。ただ導入すればいいわけではないあたりに、難しさのポイントがあるのではないでしょうか。

【対策5:潜在ケアマネジャーの復職支援】
出産育児や引っ越しなどによる転職、休職などで、資格は持っているものの現場を離れている「潜在ケアマネジャー」の復職を支援することも重要です。これには、潜在看護師を掘り起こすための取り組みが参考になるはずです。

看護師の資格は持っているけれど、子どもを出産するタイミングで休職し、その後復帰していない人は多いです。こうした人が復職しやすくするために、例えば子どもを預けられる施設と連携したり、夜勤はしなくていいという新しい雇用の受け入れ方を模索したりなど、さまざまな取り組みが病院やクリニックで行われています。

こうした取り組みを介護事業者にも推進していく必要があるのではないでしょうか。さらに国や自治体が後押ししてあげる必要もあるのではないかと考えます。

>次ページ:動画で見る【ケアマネジャー不足問題】
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