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「ディズニーランドでのYouTube撮影は違法ですか?」元映画プロデューサー弁護士の回答は

ディズニーランドなどテーマパークでのYouTube撮影は、再生数を稼げる一方で法的リスクも。違法行為をしないために知っておきたい法的注意点とは? ※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

ディズニーなどのテーマパークでのYouTube撮影は、再生数を稼げる一方で法的リスクも。※画像出典:PIXTA

人気テーマパークでのYouTube撮影は、再生数を稼げる一方で法的リスクも!? ※画像出典:PIXTA

ディズニーランドをはじめとする人気テーマパークでは、YouTuberによる動画撮影風景をよく見かけるようになりました。これは再生数を狙える一方で、著作権や利用規約など知っておくべき法的リスクも潜んでいます。

10月に発売された新書『アーティスト六法: 日本一わかりやすいエンタメ法律ガイド』(上野裕平著)では、東宝で映画プロデューサーとして活躍後、弁護士に転身した著者が、アイドルやイラストレーター、YouTuberなど全てのアーティストが陥りやすいトラブルとその対策について解説しています。

本書から一部抜粋し、今回はYouTubeのテーマパーク撮影に関する注意点について紹介します。
<目次>

Q. YouTubeでよく見るテーマパーク撮影、気軽にやっても大丈夫?

私はこれからYouTuberとして活動していこうと思っています。私はディズニーが大好きなので、メインのコンテンツはディズニーにしたいと思っています。例えば、ディズニーランドに行って撮影をした動画を作れば再生数も稼げると思います。

でも、ディズニーは著作権に厳しいという話をよく聞くので、法的に問題になるのが怖いですし、そのような行動が理由で炎上するのも怖いです。

とはいえ、ほぼ毎週のようにディズニーランドやディズニーシーの特集をテレビでやっていますし、実際にディズニーランドやディズニーシーの中に入って撮影をしている動画がYouTubeにはたくさんアップされています。

もしこういった動画が違法なら、そもそもYouTubeにアップされないはずなので、きっと大丈夫なんだと思うんですが……、どうでしょうか?

>まだある「エンタメ系トラブルQ&A」一覧

A. まずは各施設の利用規約の確認を!NGならやめましょう。

数年前に、小学生のなりたい職業ランキングでYouTuberが上位になったというニュースが駆け巡ったのは、記憶に新しいところです。

いまだにYouTuberを含むいわゆる動画配信者は、なりたい職業の上位に位置づけられているようです。動画配信は誰でも手軽に始めることができるので、自分もYouTuberをやってみようと考える人もきっと多いと思います。

一方で、YouTuberが炎上や違法行為でニュースを賑わせることが多いというのも、残念ながら否定はできないのではないでしょうか。誰でも手軽に始められるがゆえに、法律や権利についての知識がない状態で始めてしまい、知らず知らずのうちに違法行為をしてしまうというケースも多いように思われます。

今回の相談者もまさにYouTuberとして動画投稿を始めようとしていますが、それでは、ディズニーランドで撮影をした動画を公開するのは本当に“大丈夫”と言えるのでしょうか?

著作権よりもまず「利用規約」を要確認

多くの人が、ディズニーは著作権に厳しいというイメージを持っているのではないでしょうか。

小学校で小学生が卒業制作としてプールの底に描いたミッキーマウスとミニーマウスの絵を塗りつぶさせたという“伝説”もありますが、いわゆるキャラクタービジネスをメインの事業に据えている会社は、著作権をはじめとする知的財産権が収益を生み出す源ですから、その保護に力を入れるのは当然のことと言えます。

確かに、ディズニーは著作権に厳しいと言えばそのとおりなのですが、そもそも今回は著作権よりもまず気にしなければならないことがあります。

それはテーマパーク自体の「利用規約」です。

ディズニーランドやディズニーシーの大部分の土地は、運営会社である株式会社オリエンタルランドが所有しており、その敷地内にある施設も同社が所有しています。自分の所有している施設で他人に好き勝手に振る舞われることを見逃すわけにはいきませんので、施設内での一定のルールを定めることがあります。

ディズニーランドにおいても、株式会社オリエンタルランドとディズニーランドの利用者との間には、一定の約束が定められています。これは法律的に言うと、ディズニーランドの持ち主の「施設管理権」という権利に基づいて定められている利用規約ということになります。

■ディズニーリゾートの場合
株式会社オリエンタルランドは東京ディズニーリゾートのホームページ上で「テーマパーク利用約款」を公開しています。これを見ると、東京ディズニーリゾートでは撮影自体が禁止されているわけではありませんが、「営利活動(当社が許可した場合を除きます。)」、「商業目的の撮影」、「他のお客様のご迷惑となる撮影および公衆送信」あたりがYouTube用の撮影との関係で抵触しており、このような行為を行った場合には、退園や入園拒否、それに準ずる対応が取られることになります。

言い換えれば、株式会社オリエンタルランドの許可がなければ、このような撮影は原則できないということです。

■ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの場合
それでは、他のテーマパークではどうなっているか見ておきましょう。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、公式ホームページの「ルールとマナー」というページの中に「パーク内での撮影について」という項目があります。

東京ディズニーリゾートとは異なるルールとなっており、生配信を除いて、公衆送信自体は禁止されていません。したがって、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの場合は、この規約を遵守すれば動画撮影や撮影した動画のYouTubeへのアップロードは可能ということです。

■ジブリパークの場合
もう一つ、ジブリパークを見ておきましょう。ジブリパークでは公式ホームページの「利用のご案内」というページに、「ご来場に際してのお願い」という項目があります。

ジブリパークでは撮影可能エリア以外での撮影は禁止。また、撮影可能な場所でも商業目的の撮影やライブ配信はNGですし、SNS投稿も禁止です。つまり、YouTubeへのアップロードを目的としての撮影は原則できません。

こうして見てみると、テーマパークごとに異なったポリシーを持っており、統一的なルールはないということがわかります。

あくまで施設管理権に基づく利用規約ということですので、施設管理権を持つ者が原則自由に決めていいルールなのです。

著作権は気にしなくていいのか

テーマパークの利用規約だけ気にしていれば、著作権は気にしなくていいのかというと、もちろん決してそのようなことはありません。

テーマパークのキャラクターグリーティングやパレード、ショーを撮影した画像や映像には、多くの場合にはそのテーマパークやキャラクターのライセンス元、ディズニーランドであればディズニーが著作権を有する著作物が複製されているということになります。

これをYouTubeに公開する行為が著作権侵害となることは充分にあり得ます。

日本の著作権法には罰則が設けられており、最も重いものだと10年以下の拘禁刑又は1000万円以下の罰金が科せられる場合があります。

実際に2007年には、ディズニーリゾートで撮影したアトラクションのパレードをDVDに複製して無断で販売した行為によって、著作権法違反容疑で逮捕されたという事例があります。

また、これとは別に、民事手続による救済として、著作権者から権利侵害行為の差止請求や損害賠償請求等を受ける可能性もあります。

来園者の映り込みは肖像権の侵害?

もう一つ気をつけなければいけないのが、他の来園者の映り込みです。

肖像権という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。肖像権は人の顔や風貌について、勝手に写真や動画を撮影されたり、勝手に公開されたりしない権利のことです。

したがって、テーマパークで知らない人を勝手に撮影して、勝手にYouTubeで公開するというのは肖像権侵害にあたる可能性があります。もっとも、少しでも映っていれば肖像権侵害が成立するかというと、必ずしもそうではありません。

どのような場合に、どのような基準で肖像権侵害が成立するかという点については、現時点で明確な基準を述べることは困難で、ケースバイケースと言わざるを得ません。

しかし、これまでの判例の蓄積から、肖像権侵害が成立するには、少なくとも映像や写真の人物が肖像権侵害を訴えているその人であることが特定できる必要があると言えます。

逆に言えば、この点を回避すれば肖像権侵害が成立する可能性が低くなるので、一般的には通行人にはモザイクやぼかしを入れるという処理をすることが多いです。

もっとも、後からこのような処理をすれば、無制限に他人を撮影していいということではありません。そもそも許可なく勝手に撮影すること自体が肖像権の侵害にあたる行為ですし、それを不愉快に感じる人も多いです。また、そのような行為は先に述べたように、多くの場合、「他のお客様の迷惑になる行為」として禁止されています。

したがって、不特定多数の人が往来する場所での撮影には、細心の注意を払う必要があります。
  上野裕平(うえの・ゆうへい)プロフィール
1987年東京都生まれ。 東京大学文学部卒業後、東宝株式会社に入社。 映画プロデューサーとして10年超で数多くの作品に携わる。 同社在職中の2021年に司法試験予備試験に合格し、翌2022年に司法試験に合格。現在は東京芝法律事務所にて執務を行う。
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