VTuber・YouTuberの契約内容の実態
日本でYouTuberが登場し始めたのは2010年頃。現在まで活躍しているYouTuberの代表例としては、HIKAKINが挙げられるでしょう。彼は、「UUUM」という事務所に所属しており、UUUMにはほかにも、東海オンエアやはじめしゃちょーなど人気YouTuberが所属しています。彼らのように、YouTuberも人気が出てくると事務所に所属することがあり、中には芸能事務所に所属するYouTuberもいました(芸能事務所アミューズに所属していた、だいにぐるーぷなど)。
比較的初期のYouTuberと事務所との契約内容は、タレントと芸能事務所とのそれにだいぶ似通っていました。その頃は、退所したら違約金が発生するといった文言が契約書に記載されているようなことはあまりなかったと見受けます。
その後、2016年にキズナアイが登場したことをきっかけに、日本でVTuberらが活躍するようになると、人気のあるVTuberは事務所に所属するようになりました。また、ANYCOLORが運営するVTuberプロジェクト「にじさんじ」や、カバーが運営するVTuber事務所「ホロライブ(プロダクション)」といった“VTuber専門事務所”も多く設立されるようになりました。 その後、VTuber市場は年々拡大していき、2020年あたりからは、ライブ配信アプリ「17LIVE」専用のVTuber事務所、「IRIAM」専用のVTuber事務所といった、ライブ配信アプリに特化した事務所も多くできるようになりました。
VTuberと事務所との契約内容が以前よりも厳しい内容になり始めたのは、この頃からだったと思われます。特に、事務所を退所した場合は違約金を請求するといった、それまでにはあまり見られなかった文言が契約書に入ってくるようになりました。
ほかにも、「退所後2年間は配信活動をしてはならない」など退所後の配信活動を制限したり、毎月の配信時間のノルマを課したりする契約もよく見られるようになりました。こうした流れに影響を受けてか、この頃から、YouTuberが事務所に所属する際の契約内容も以前より厳しいものになり始めたように思われます。
500万円の違約金訴訟
そうした中、退所したVTuber(の中の人)に対して、VTuber事務所が500万円の違約金請求を行い、裁判まで起こすという事例が出てきました。日本経済新聞が2025年2月14日に報道した、「30代で念願のVTuber、1カ月で適応障害 違約金訴訟」によると、都内に住む女性が2022年7月にVTuber事務所と契約を結び、VTuber活動を始めたものの、事務所が課した厳しいノルマ(月20本以上のライブ配信、月10本以上の動画収録)をこなすため、過労死ラインをはるかに超える労働時間となり、契約から1カ月ほどで体調不良に。
女性が精神科を受診したところドクターストップがかかったため、事務所に活動休止を申し出たところ、事務所が違約金500万円の支払いを求めてVTuberの女性を訴えたという事例です。
女性と事務所が交わした契約書には、契約違反をした場合、違約金500万円を請求すると書かれていたようですが、これまでに筆者も、そうした文言が入っている契約書をいくつも見てきましたが、実際に訴訟までに発展した事例は聞いたことがなかったので驚きました。
では、この裁判は結局どうなったのでしょうか。
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