物価が高くなる分だけ給与も増えれば問題はないのですが、残念ながらそううまくはいかないようです。だからこそ、少しでも出費を抑えようと節約している人は多いでしょう。
「おかげで○○万円も浮いた!」といった成功体験はあちこちで聞かれますが、一方で、思ったより貯まらない、むしろ支出が増えてしまったという失敗談もいろいろあるようです。
今回はAll About編集部が実施した節約に関するアンケートから、33歳女性の失敗談を紹介しながら、“続けられる心地よい節約”について、ファイナンシャルプランナーでAll About 家計簿・家計管理ガイドの二宮清子さんが解説します。
回答者のプロフィール
回答者本人:33歳女性家族構成:既婚(子なし)
雇用形態:業務委託
職業:事務職
世帯年収:700万円
現在の年収や暮らしに満足しているか:どちらとも言えない
「自分にお金をかける」のが苦手な性分
節約をし過ぎて失敗したという女性。彼女は、「元々家事に不慣れであった上に、放っておくといわゆるセルフネグレクトのような状態になります」といいます。
食材は1円でも安いもの、安くて量の多いものばかり選んでいたそう。夫婦共に“鶏肉”が好きだったため、結婚式に備えたダイエットも兼ねて食事を鶏むね肉メインに変更。その結果……。
「結婚式までの三か月間、本当に家ではむね肉しか食べませんでした。柔らかくしたりひき肉にしたり、なるべく飽きないよう色々していたのですが、どうしても飽きてしまいました。それでも貫きました。辛かったです」
「心まで貧しくなってしまっていた」
女性はこの経験を「節約で心まで貧しくなってしまっていた」と振り返ります。「結婚式終わってから、豚こま肉と少しのお魚を解禁しました! 魚は買いに行くのも少し面倒だし割高ですが、調理が楽なのでとても助かっています」
食材を増やしたことでQOL(Quality of life)が上がったことがうかがえます。また、夫から「シンプルにケチ」と言われたことをきっかけに、「考え方から改善中」とコメントしています。
いつの間にか節約が「我慢大会」に
心を貧しくせず、生活の質を保ちながら節約するためには、どのようなことに注意したらいいのでしょうか。二宮清子さんにお聞きしました。二宮:この女性のエピソードを見て感じたのは、「節約」がいつの間にか「我慢大会」になってしまっていたということです。
彼女のように、節約を頑張るあまり心まで疲弊してしまうケースは、実はとても多いのです。鶏むね肉だけの生活は、確かに家計には優しいかもしれませんが、食の満足感を失えば日々の幸福度まで下がってしまいます。
お金は使わないことが美徳ではなく、「自分や家族の幸せのために使う」ことが本来の目的。だからこそ、必要な支出まで削るのは本末転倒です。
節約のコツは、“出費を減らす”だけでなく、“満足度を保つ工夫”をすること。例えば、買い物の頻度を減らしたり、冷凍食品や作り置きを活用したり、安い食材でも栄養や彩りを意識すれば、気持ちも豊かに過ごせます。
安い食材ばかり選ぶのではなく、「使い切る」「ムダを出さない」「買い過ぎない」といった、「ムダをなくす工夫」も心掛けてみましょう。心が豊かであってこその「いい節約」。無理な我慢ではなく、“続けられる心地よい節約”を目指したいですね。
【二宮清子プロフィール】
ファイナンシャルプランナー。家計管理や節約を軸に、生活に寄り添った提案を行うファイナンシャル・プランナー。家庭科の教師としての勤務経験があり、赤字家計を脱出した自分の体験から、ユーザー目線でのアイデアを発信している。All About 家計簿・家計管理ガイド。
<調査概要>
節約の体験談に関するアンケート
調査方法:インターネットアンケート
調査実施日:2025年8月28日
調査対象:全国20~60代の200人(男性:63人、女性:137人)
※回答者のコメントは原文のまま記載しています。
※本記事で紹介している人物のプロフィールや数値などは、プライバシー保護のため編集部で一部改変している場合があります。
<参考>
帝国データバンク「『食品主要195社』価格改定動向調査」(2025年10月)