スキルアップトピックス

「手っ取り早く教えてもらえませんか」と詰め寄る部下に困っています。逆パワハラですよね?

「手っ取り早く教えてください」と提案する部下に、「楽しようとして……」とモヤモヤしたことはありませんか? その言動の背景にある世代間の価値観の違いと、すれ違いのポイントを具体的な事例と共に解説します。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

「手っ取り早く教えてください」と迫る部下に悩んだことはありませんか?悪気のない部下の言動に隠された、世代間の価値観のズレとは。 ※画像出典:PIXTA

「手っ取り早く教えてください」と迫る部下にモヤモヤしたことはありませんか? ※画像出典:PIXTA

業務で「手っ取り早く教えてください」と提案する部下。その一言にモヤモヤしてしまうのはなぜでしょうか。

部下からの逆パワハラで“もう無理”と思ったときに読む本 悩める上司への処方箋』(加藤京子著)では、「手っ取り早く教えてほしい」と要求する部下とのコミュニケーションにおけるすれ違いの原因についてお伝えしています。

今回は本書から一部抜粋し、事例とともに部下の悪気ない言動の裏にある世代間のズレをひも解きます。
<目次>

【事例】それ、手っ取り早く教えてもらえませんか、と詰め寄る部下がいて、困っています

若手の「効率化」への提案が、上司にとって「手抜き」と映ってしまうこと、確かにあります。でも、手っ取り早く……という言葉に引きずられ、やみくもに相手を否定してしまうと、歩み寄りはできなくなります。最近、あなたは、少し疲れています。

(上司の悩み)
ある日、あなたは、部下(25歳)から「その仕事、手っ取り早く教えてもらえませんか?」と言われてしまいました。あまりにストレートな表現にびっくりしましたが「まずは、自分で考えること、それも大切だ」と伝えました。

そうすると「え? ご存知なんでしょう? わかっているのであれば、なんで秘密にするんですか?」と詰め寄られてしまいました。

悪気はないようですが、楽なことばかり要求する部下です。どうしたら良いのでしょう。あなたは、悩みつつも、素直に「手っ取り早く教える」……という気持ちになれません。説明しようとすると「もういいんで!! 要するにどうすればよいのですか!」と吐き捨てるように言い始めました。

あなたを見る「表情」、ため息交じりの「返事」、表情からは「モタモタするなよ」「早く教えろよ」圧力も伝わります。

毎日、とても憂鬱です。

逆パワハラ部下のタイプ

自分の行動が他人にどのように影響を与えるか、意識が及んでいないようです。しかし悪気はなく、自分の価値観に根づいた発言とも映ります。

無自覚に相手を追い詰めているように映りますが、繰り返し行われると、上司の権威を下げる意図も垣間見えてきます。

上司(あなた)の気持ち

手っ取り早く……という言葉にカチンときていますよね。あなたは、その「手っ取り早く」という表現を快く思いません。

なぜかというと、今までのあなた自身の知識や努力が軽視されているように思えるからです。今まで頑張ってきた「仕事の複雑さや深さを軽んじられた」と感じるからです。

あなたの本音は、「何でもすぐ答えをほしがるな」です。「仕事には、『時間や積み重ね』が必要だ」「何もしないうちから闇雲に質問するな」ですよね。

上司と部下のすれ違いポイント

部下は、「時間がないのに、なんで教えてくれないの?」「もったいぶらずに教えてくれればいいのに、なんだよ!」「結局、効率よりも手順を重視するのか……」です。「教えてくれないこと」が、無駄な作業や工程を増やし、いたずらに時間を消費させている、とも思います。

一方、あなたは、教えないことが、「ムダだ」とは思っていません。

まず、ここでは、部下が育ってきた時代的な背景や心理的な要因を考えてみましょう。

①学習のスタイルが変化した
従来の「経験を積み重ねて学ぶ」より、「必要な部分を必要なときに素早く学ぶ」スタイルを好むようです。答えを求めればインターネット検索で簡単に見つかる時代ですので、本当に必要な情報を最速で取得して最適化することが当たり前なのでしょう。

断片情報を効率的に入手し、それらを活用することで問題を解決するスキルを磨いてきたため、手っ取り早く必要な部分だけ教えてもらうことを好みます。

②耐える力が不足している可能性がある
「時間をかけてじっくり学ぶ」「じっくり問題に向き合う」等の耐性が不足しているようです。
長期的な努力より、目先の成果を重視する傾向が強いため、「長時間かけて学ぶ」というプロセスに対して、フラストレーションを感じやすいです。

③成功事例を目にすることが多い
SNSやメディアで「すぐに結果を出す人」がクローズアップされています。同年代の活躍を見ながら、「早く学び、早く成功する」ことへの憧れの念を抱きます。

ですので、「まずはやってみましょう」を嫌います。「失敗したくない」「早く一人前になりたいのに」という焦りが高じます。

部下にとっての上司は「古くてコスパの悪い人たち」

少し横道に逸れますが、たとえば、ゲームの攻略方法について、です。

ゲーム攻略方法と仕事の覚え方には共通点があります。たとえば、目標設定、ステージをクリアする、ルールを守る等です。そして、若者世代は、その攻略方法を「知っている人がいたらシェアしよう」「有益な情報はどんどん広めよう」というスタンスです。

攻略法をみつけたのにシェアしない人は、「なぜ秘密にするの? 広まったら困るの?」となります。一瞬でわかる情報を、長時間かけて試行錯誤する意味は「ない」と感じるからです。

確かに、わざわざ正解を遠ざけて、連敗する必要はないと考えるのも一理あります。

彼らにとって、年配者の上司たちは、「攻略本がない時代のゲームをやっている人たち」、あるいは「攻略方法をみつけても教えてくれない人たち」であり、つまりは、「古くてコスパの悪い人たち」です。

上司から見て、若者が「合理的」と映るのは、ゲームのやり方一つとっても、「効率を重視する文化」が背景にあることが良くわかります。ここで、お互いの「スタンダード」がずれているのがわかります。
  【加藤 京子(かとう・きょうこ)プロフィール】
H・Rサポート、株式会社クレドコラ(credocara)代表。青山学院大学文学部フランス文学科卒業後、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)入社。1998年に社会保険労務士資格取得、2000年に独立開業~現在H・Rサポート(港区西新橋にて社会保険労務士事務所経営)、2004年には研修講師として活動開始し、管理職選抜・昇格審査事業の一環として、部下育成の相談(面談)を受託。年間約100日(20年間)、約2万人対応。現在、研修講師および人材アセスメントのチーフコンサルタントとして活動中。著書に『Z世代に嫌われる上司 嫌われない上司』(ぱる出版)がある。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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