亀山早苗の恋愛コラム

「自由に仕事がしたい」妻と「妻の料理が食べたい」夫。結婚観がズレた30代夫婦の葛藤

30代でも「家庭内の仕事は女性がやるべき」と思い込んでいる男性がいる。共働きの夫婦が多い現代、家庭内のことも共有するしかないはずだ。だが、専業主婦の母を見てきた彼らに、妻と等しく家事を担う気持ちはないようだ。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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新婚生活、こんなはずじゃなかった……(画像:PIXTA)

新婚生活、こんなはずじゃなかった……(画像:PIXTA)

30代でも「女はこうあるべき」と女性に押しつける男性は少なくないようだ。初婚年齢が上がり、共働きが当然になっている今、「結婚して生活する」というのはどういうことなのか、二人でゆっくり話し合ってみた方がよさそうだ。

30代半ばの新婚夫婦

「昨年、私が34歳、彼が36歳で結婚しました。子どもはほしいと思っていますが、まだ仕事と家庭生活のバランスがうまくいかず、落ち着かない状態です」

アリサさんはそう言う。新生活を始めるとき、「細かいことも話し合って決めようね」と約束したにもかかわらず、夫は「料理は妻がするもの」と決めてかかっていた。

「僕は実家にいたから、料理はできないんだよねと夫は平然と言ったんです。つまり家事は何もできない。でも掃除や洗濯は頑張ってやるから、夕飯は作ってほしい。妻が作る料理を食べるのって夢だったんだとノーテンキなことを言っていた。しかも彼にとっては、専業主婦で料理上手の母親の味が基本。レトルトやできあいの総菜なんて、選択肢にないわけですよ」

アリサさんは一人暮らしが長いが、仕事が終わるのが夜遅いため、夕飯をきちんと食べる習慣がない。朝からステーキを食べることはあっても、夜は重いものはとらないような生活になっていたのだ。

「職住は近いんですが、それでも私が帰るのは夜10時を回る。夫は6時半くらいには帰宅しているんです。それなら夫が作っておいてくれるとか、自分の分だけ作って食べれば済む話なんですけどね」

一緒に生活するのは無理かもしれない……

駅近くの24時間スーパーに寄って帰宅し、それから夕飯を作ることもあるが、食べられるのは11時を過ぎる。アリサさんは、その時間にはもう食べないため、夫の分だけを作る。一緒に食べられなくても夫は「作ってほしい」というのだ。

「こんなに生活様式が違うと一緒に生活するのは無理かもしれないと思い始めています。いろいろ提案したんですよ。私が昼前に食べる重めの食事をあとで温めればいいと思い、そうしていたこともあるんです。でも作り置いたものはおいしくないと夫が言い出して。結局、今すぐ自分のために作ってくれるという状況がほしいんだと思う。それは専業主婦じゃないと無理」

アリサさんが仕事を辞めたら、とたんに食べてはいけなくなる。二人の収入はほぼ同じなのだという。

「私が夫を好きになって、自分からアプローチして結婚も私から言いだしたんです。だからある程度、夫のわがままは叶えたいんだけど、さすがにちょっと体力的に難しくなってきました」

疲れたようなアリサさんの表情が気になる。

結婚している意味があるのか?

「うちも働く時間帯が違うので、すれ違いになりやすい。結婚して3年たつけど、このまま結婚している意味があるのかなと思うようになりました」

ケンジさん(38歳)は、10歳年下の女性と結婚した。結婚した当初は35歳と25歳、周りの男友達からはうらやましがられたものだった。

「ただ、彼女は新卒で第一希望の会社に就職して3年目。これから仕事に全力で取り組むというところを結婚してもらった感じなんですよ。だから当時は週末だけ一緒に食事をするというスタイルだった。でも僕は平日、多少遅くなっても、妻に食事を作ってもらいたいというのが本音。そうお願いしたこともあるんですが、『今日は作れると思っても急な仕事が入ることもある。いちいち今日はやっぱり無理だったって連絡するのは嫌』ということでした」

もっと仕事をしたい妻と、家庭を大事にしてほしい夫。結婚する時点で分かっていたことかもしれないが、「妻がこんなに仕事にのめり込むとは思っていなかった」とケンジさんは言う。

「僕自身は、仕事は生活の糧を得るためと割り切っているところがある。でも妻は生きがいを求めている。そう指摘すると、『求めているわけじゃないけど、やりがいがあって楽しいんだもの。もっと追求したいと思うのは当然でしょ』という。会社が人生の面倒を見てくれるわけじゃないし、そんなに会社に尽くしてどうなるんだと言ったら、『会社に尽くしているわけじゃなくて、仕事に時間と労力を捧げてるの。私自身のために』と。僕にはよく分からない」

妻の料理が食べたいって、そんなにいけないこと?

妻からは「あなたが料理を作ってもいいのよ。上手になってくれたらうれしい」と言われたが、「男は妻の料理が食べたいんだよ」と言うしかなかった。どっちが作ったっていいじゃない、そもそも私は食にそれほどのこだわりはないからと言われてしまった。

「自分が否定されたような気持ちになりました。丁寧に作られた料理を食べて、互いのことを話して、きちんと生活するのが僕の理想だったんですが。妻は結婚したあと、恋愛のことなど考えずに自由に仕事ができるのがうれしいと言っていたんですよ。そのあたりから違和感があった」

仕事観に違いがあるなら、妻をサポートする側に回ればいいのだが、その気持ちはないらしい。妻にとって、今のケンジさんは「お荷物」に近いのではないかとさえ思えてくる。

「つい先日、妻にそう言われましたよ。あなたの存在が悪い意味で重いって。ものすごくショックだったけど、やはりもううまくやっていくのは難しいのかもしれません」

一緒に家庭を作っていきたいなら、家庭内で生じる仕事や役割も分担していくしかない。家庭内の仕事は女性がやるべきと頭から思い込んでいる男性が、なぜいまだにいるのかが不思議でならない。 
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