・やらない理由が見当たらない!「ふるさと納税」は高所得者ほど得するおいしい制度
・今年のふるさと納税は「9月末までに駆け込む」のが正解な理由とは? 始め方も解説!
今回はその中でも一番時間と手間がかかりそうな「寄付先選び」「返礼品選び」のポイントを解説します。
約1800ある自治体から、どうやって「寄付先」を選ぶ?
ふるさと納税では2000円の自己負担ですむ寄付の上限額が決まっていて、その範囲内で寄付金額と寄付先を決めることになりますが、どこにいくら寄付するかは自由に決められます。例えば上限額が15万円だとすると、全額を1つの自治体に寄付してもいいし、3万円ずつ5自治体に分けたり、1自治体に10万円と5自治体に1万円ずつに分けたりしてもかまいません。ただし、「ワンストップ特例」を利用する場合は、自治体の数を5つ以内に抑える必要があります。
といっても、約1800もある道府県、市町村の中からどうやって寄付先を選べばいいのか、最初は迷う方も多いのではないでしょうか。
●4割以上が「生まれ育った地域」への寄付を経験
実は、すでに利用している人へのアンケート調査(ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクの調査・発表)によると、寄付先として「生まれ育った地域」を選んだことがある人は、全体の41.1%に上ります。 その内訳を見ると「今も住んでいる家族や友人の役に立つから」(52.3%)や「恩返しをしたいから」(43.3%)といった動機が上位を占めています。自治体によっては、寄付の使い道として個別の公立高校を指定できるところもあり、母校への恩返しとして寄付するケースもあるようです。まず自分の出身地やゆかりの地から探すというのは、制度本来の趣旨に沿ったごく自然な寄付動向といえるでしょう。
また、顕著な傾向として挙げられるのが、「災害支援」を目的に寄付先を選ぶ方法です。東日本大震災をはじめ、熊本地震や能登地震、各地の豪雨など、大きな災害が起こるたびに、被災自治体への寄付が急増します。返礼品はもらえませんが、スピーディーに、ピンポイントで地元を支援できる方法として認知され、活用されているのです。
人気の返礼品は? 今年のトレンドは「米」と「日用品」
そして、やはり寄付先選びの重要なポイントとなるのは、何といっても返礼品です。ふるさと納税は、わずか2000円の自己負担で、各地のおいしい特産品が味わえることで人気を集めてきました。実際に魅力的な返礼品がある自治体に寄付が多く集まる傾向があり、各自治体ともラインアップの充実に力を入れています。中には期間限定品や申し込みサイト限定品などもあり、その数はどんどん増え続け、いまや80万点以上ともいわれています。その中から自分にピッタリの返礼品を選ぶのは至難の業といえるでしょう。
そこで、実際にどういう返礼品が選ばれているのか、「ふるさとチョイス」が発表した「2025年上半期 お礼の品人気カテゴリーランキング」のデータを見てみましょう。
●2025年上半期 お礼の品人気カテゴリーランキング(「ふるさとチョイス」調べ) 以前は牛肉が不動の1位でしたが、米価格の急騰を受けて、昨年から米が首位に躍り出ました。8位には無洗米も入っています。「普段から食べる(使う)もの」「どうせ買わなければならないもの」という観点から選ばれやすく、寄付額は前年同期比で約2.2倍に増加。米価格の行方が不透明な中、時期を分けて送られる定期便や新米の先行予約などが注目を集めています。
2位の日用品も同様の理由から、家計節約の目的で必需品のトイレットペーパーやティッシュペーパーなどが人気を集め、その寄付件数は前年同期比で約1.5倍に増加しています。ほかにも、各地の焼き物やガラス器などの工芸品、ジュエリー、家電製品、防災用品などが選ばれています。
3位の牛肉は各地のブランド牛を中心に安定的な人気を誇り、特に使い勝手のよい切り落とし肉や満足感のあるハンバーグなどが支持されています。
4~6位にはフルーツ各種が並んでいます。シャインマスカットやラ・フランスなど、産地から直接送られてくる新鮮なフルーツは人気が高いため、すぐに品切れになるケースも多く、次年度分の先行予約や旬のフルーツの定期便などが注目されています。フルーツの価格も上昇傾向にある中、ふるさと納税を通して申し込むと、生産地価格での原価計算なので「コストパフォーマンス効果がより高い」という声もよく聞かれます。
7位の鮭や9位のうなぎなど、産地から直送される旬の魚介類も根強い人気です。中には、都会ではあまり流通しない珍しい魚介類やその加工品など、ふるさと納税ならではの逸品も見つかります。また、数年前には輸出できなくなって余った冷凍ホタテなども話題となりました。こうした余剰品や規格外品といった「訳あり品」も、生産者を応援する取り組みとして注目されています。
10位のビールは4月の値上げの影響で急増したようで、特徴のあるクラフトビールなどが人気を集めています。また、各地自慢の地酒や「日本ワイン」なども話題になっています。
現地体験型の返礼品も注目度アップ
こうした各地の特産品のほか、現地で使える旅行券や宿泊券、イベントやアクティビティの体験チケットといった「体験型」の返礼品も徐々に増えています。特に、全国各地で行われる花火大会やお祭りの鑑賞チケット、マラソン大会の参加券など、なかなか手に入りにくいものもふるさと納税を通じて申し込めるため、注目度が高まっています。
また、旅行の予定に合わせて現地の宿や飲食店で使える地域通貨や電子マネーを準備したり、逆に寄付をきっかけに関心を抱き、現地を訪れて住民と交流を持ったりするケースも増えています。こうした動きは寄付先の地域経済に好影響を与え、ふるさと納税本来の目的にも合致したものといえるでしょう。
返礼品選びのポイントと注意点は?
数ある返礼品の中から、なかなか手に入らない逸品や体験を選ぶのか、生活防衛に役立つ普段使いの品を受け取るのかはあなた次第です。ふるさと納税申し込みサイトでは、寄付金額やカテゴリ、アイテムなどの条件を入れて返礼品を検索できるようになっています。どういうものが欲しいのか、いくつ選ぶのか、ある程度的を絞って探すといいでしょう。なお、返礼品を選ぶ際は、その内容とともに配送の時期や方法もしっかり確認しておくことが大切です。一気に届いてしまい、冷蔵庫や冷凍庫がいっぱいになってしまったとか、期限内に食べ切れなかったというのは、ふるさと納税の「あるある話」です。もともと返礼品は通常の通販とは異なり、配送時期がまちまちで、日時指定ができないケースもあります。さらに、一次産品は収穫の状況によってずれることもあるので、長期不在時の対応などもあらかじめ確認しておくと安心です。
執筆:塩田真美(しおたまみ)
出版社の女性誌・マネー雑誌の編集部を経て、フリーの編集者・ライターとして活動。主に女性誌や広報誌、金融関連サイト、書籍などで、人物インタビューのほか、NISA(少額投資非課税制度)、株主優待、ふるさと納税、節約術などの記事を手掛ける。