銅メダルを獲得した選手が身に着けていたもの
【東京世界陸上 】
— TBS 陸上 (@athleteboo) September 14, 2025
女子マラソン
ジェプチルチル 選手 2:24:43
アセファ 選手 2:24:45
パテルナイン 選手 2:27:23
7位 小林香菜 選手 2:28:50 入賞
13位 佐藤早也伽 選手
28位 安藤友香 選手
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スタートの7時30分時点で気温28℃、湿度82%という過酷な状況の中、日本代表の小林香菜選手が本当に素晴らしい走りで7位に入賞し、金メダルは最後の最後にすさまじいラストスパートを決めたケニア代表のジェプチルチル選手が獲得しました。
しかし、とても過酷な環境だったため、35km付近で3位を走っていたケニア代表のマサイ選手が、急に中央分離帯に座り込んで途中棄権するなど、30km過ぎのレース後半において有力選手の途中棄権や失速が相次ぎ、最終的には10名もの選手が途中棄権をしたというレースとなりました。
今回の東京2025世界陸上は気温30℃以上に達する日も多く、とりわけ長時間の屋外競技となるマラソンや競歩などの長距離種目は、暑熱対策が結果を大きく左右するといえます。女子マラソンでも、気温が上昇した後半には、上位選手らがずっと氷を手に持ちながら走る場面が見られました。
そのような厳しい暑さの中、ウルグアイ代表のパテルナイン選手が暑さをものともせず、レース後半でどんどん順位を上げて銅メダルを獲得したのは、大変驚きでした。
というのも、パテルナイン選手は出場選手全体の中でも持ちタイム(自己ベスト)は遅い方の選手で、スタート前までは全くのノーマーク選手だったからです。
そして、彼女はスタートからゴールまで終始、ヘアバンドのようなものを頭に巻いて走っていたのが印象的でした。 そのヘアバンドのようなものは、「Omius(オミウス)」という冷却アイテム。女子マラソンの翌日に行われた男子マラソンでも、最後の最後まで優勝を争い惜しくも銀メダルとなったドイツのペトロス選手も着用していました。
「Omius」を着用した選手が男女共にメダルを獲得したことから、「Omius」に高い冷却効果があると考えられますが、実際にはどのようなアイテムで、どういった冷却効果があるのでしょうか。
Omiusとはどのようなアイテムなのか

東京2025世界陸上・女子マラソン銅メダルのウルグアイ代表パテルナイン選手が着用していた、「Omius」の冷却ピース付きヘッドバンド ※画像:Omius 公式Webサイト
女子マラソンは8月に行われたため、パリでも比較的気温が高く25℃近くまで気温が上がるという状況でした。そうした中、オランダのハッサン選手が「Omius」を頭に巻いて暑さをものともせずに金メダルを獲得したことで、このアイテムの注目度が一気に高まりました。
これ以降、夏場のマラソン、競歩、トライアスロンといった屋外での長時間競技において、「Omius」を着用するトップアスリートが現れるようになりました。
今回の東京2025世界陸上はパリ五輪よりもさらに気温が高い状況でマラソンが行われることが予想されたため、おそらく複数の選手が「Omius」を着用してくるだろうと筆者は予想していましたが、実際に女子マラソンでも多くの選手が着用していました。
銅メダルのパテルナイン選手のみならず、有力選手としては、日本代表の佐藤早也伽選手、中国代表の3選手、ケニア代表のチェロノ選手らが使用していました。
また、女子マラソンの翌日に行われた男子マラソンでも、先述したように銀メダルを獲得したドイツ代表のペトロス選手や、そのほかにも複数名の選手が着用していました。
そうした「Omius」着用者のうち、とりわけパテルナイン選手が今回もたらした結果は驚きです。自己ベストが2時間27分9秒という、日本代表3選手の自己ベストよりも6分ほど遅く、出場選手全体の中でもどちらかといえば遅い方でありながら、気温が30℃近くまで上昇したレース後半に驚異的なペースで順位を上げ、一気に3位まで駆け上がって銅メダルを獲得しました。
後半これほど順位を上げることができたのは、「Omius」の冷却効果があったことが要因の1つではないかと、筆者は考えます。
また、「Omius」を着用していた日本代表の佐藤早也伽選手も、レース前半で先頭集団から脱落し、一時は30位近くを走っていましたが、後半ペースが落ちることなくどんどん順位を上げていき、最後は13位まで順位を上げてのフィニッシュでした。佐藤早也伽選手が後半あまりペースが落ちなかったのも、「Omius」の冷却効果が影響しているのではないかと考えます。
この高い冷却効果があると考えられる「Omius」は、実は「特許製品」なのですが、どのような技術によって冷却効果を実現しているのでしょうか。
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