今回大化けした千円札は、2025年7月19~20日にかけて開催された第41回AW(オークションワールド)オークションにおいて落札されたものです。8万2000円(手数料込みで9万1020円)と実に額面の80倍以上となりました。なぜこれほど高額で落札されたのでしょうか?
一番のポイントは「582」

額面の80倍の金額で落札された実際の千円札(表面) ※画像:第41回AWオークション
A-A券とは、紙幣発行時の初期のもののこと。記番号はA-Aから始まり、A-B、A-C……と続きます。いつからか初期発行のものが珍重され始め、高値がつくようになりました。その中でも、番号が若いものは特に珍重されており、今回落札された千円札の「582」という番号は出来立てほやほや、発行直後のごく初期のものであることが分かります。
野口英世の千円札は記番号が黒色(2004年11月1日発行開始)、褐色(2011年7月19日発行開始)、紺色(2019年3月18日発行開始)の3種類あり、落札された千円札は2004年に発行された最初のものです。新紙幣として発行された直後にすぐ両替しないと入手できないため、高額で落札されたわけです。
初期発行、かつ若い番号は入手困難品
今回のように、初期発行かつA-A券で若い番号の紙幣がオークションに出品されることは、実はあまりありません。なぜなら、若い番号の紙幣は、関係各所に贈呈されるからです。例えば、野口英世の黒色A-A券1番は日本銀行金融研究所貨幣博物館に贈呈されています。実は最初に発行される1番は野口英世の千円札だけでなく、全ての紙幣が貨幣博物館に贈呈されているのです。貨幣博物館に行くと、新紙幣である渋沢栄一の一万円札などの「AA000001AA券」も展示してありますので、ぜひ見てみてください。入場は無料です。
また、野口英世の千円札の場合、2番の紙幣は公益財団法人野口英世記念会(野口英世記念館)に贈呈されています。最終製造番号券となる「HM300000A券」も同会に贈呈されました。
このように、初期発行のA-A券(新紙幣はAA-AA券)で、かつ若い番号のものが市場に出回ることはなかなかないのが実情です。とはいえ、どこかにあるのも事実であり、何かの拍子に流通することもあるかもしれません。また、初期のものは難しくても記番号の色が変われば一般に流通するはずなので、見つけられる可能性はあると考えられます。
もしもこのような高額になる紙幣を見つけたら、ぜひ大切に保管してください。年月がたてばたつほど、価値が高まるかもしれません。
<参考>
第41回AWオークション Lot番号:383 日本 野口英世1000円札 Bank of Japan 1000Yen(Noguchi) 平成16年(2004~) (UNC)未使用品
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