学校や家庭で“扱いづらい”とされるギフテッド児の困難を理解し、寄り添い援助する方法を解説する『ギフテッドの子を正しく理解し、個性を生かす本』(宮尾益知監修)から一部抜粋し、ギフテッド児が学校で問題視される理由を紹介します。
ギフテッド児が学校で問題視されてしまうのはなぜ?
ギフテッド児はIQが高いにもかかわらず、小学校に入るとさまざまな困難に直面します。クリニックを受診するのは小学校低学年から10歳ぐらいの子どもが多く、学校で問題視されて親御さんに連れて来られるパターンが一般的です。学校で問題視されるのは、ギフテッドの特性が周囲との関係においてトラブルになりやすいからです。
ギフテッド児は知的に高度ですが、自分が興味のないことには関心を示しません。授業中も好きな本を読んだり、空想にふけったりしてしまいます。先生がそれを指導すると反抗的な態度を示します。
一方、興味のあることはとことん突き詰めていくので、難解な質問で教師を困らせ、答えられないとバカにします。いまの義務教育のなかで、ギフテッド児に個別に対応できるほどの余裕が学校側にないのでしょう。先生から否定的な態度をとられ、通学をいやがるようになるケースも少なくありません。
成績が芳しくないギフテッド児も多い
ギフテッド児は記憶力、理解力が高く、全教科にわたり成績優秀な子もいます。その一方で、興味ある特定の分野では突出した能力を発揮するのに、学校の成績が芳しくないギフテッド児もたくさんいます。得意・不得意のギャップが非常に大きいことが一因です。またギフテッド児に多いのは、手先が不器用、運動が苦手という問題を抱えるケースです。手首足首が柔軟に動かせない特性があるので、ボールなどの道具を使う運動、書字や図工、音楽、裁縫や料理などがうまくできません。できないことはやりたがらないため、上達もしません。
手足や目の動きを協調させる運動が苦手な発達障害に、発達性協調運動症(DCD)があります。10代になってこうしたことがあるとDCDとの重なりがあるギフテッド・2E(高IQと発達障害を併せ持つ)と診断される子もいます。
現在のところ、教育現場では周知がじゅうぶんとはいえず、周囲の理解不足から、傷つけられる子も多いと考えられます。
ギフテッド児の特性に、学校の先生が対応しきれない
IQの高さと学校の成績は必ずしも連動しません。ギフテッド児は興味がない授業は聞こうとせず、地道な努力も苦手です。一方、興味があることには知的に高い発言や難解な質問をし、先生が対応しきれないことも「生意気な子」と否定的な見方をされ、先生との関係がうまくいかない場合もあります。以下は先生との関係で起こりがちな問題の具体例です。
■先生に怒られる
- 授業中、勝手なことをする:興味のないことや知っている話題を扱うときは、授業を受けずに自分の好きなことをしている。
- 先生を無視する、バカにする:授業を聞かない。先生の話や指示を無視する。先生の知識不足をバカにする。
- クラスメイトをバカにする:クラスメイトをバカにして傷つけ、怒らせてクラスで問題となる。
- 難解な話題を突きつける:授業中に政治経済、社会問題などの難解な議論をもちかける。
- 教員・学校を批判する:先生の言動や学校の制度等の矛盾や問題点を指摘し、見解を求める。
- 授業を妨害する:自分の知識や方法を披露し、結果的に授業の進行を妨げてしまう。
- 不器用で運動や工作などは苦手:発達の問題で運動機能の弱さがある子も。先生の側に理解がなく、からかわれてしまうケースも。
- 平均レベルに達しない教科も多い:学校のテストの成績が全般的によいわけではなく、苦手な分野は平均以下ということもある。
- 努力できず、上達しない:できないことには手を出したがらないので上達もしない。先生からダメな子だと思われる。
東京生まれ。徳島大学医学部卒業、東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て2014年にどんぐり発達クリニックを開院。