Q:1964年10月生まれの男性。厚生年金保険料を支払いながら年金を受給した場合、払った保険料は無駄になる?
「1964年10月生まれの男性です。まだ年金は受給していませんが、今年中に老齢年金の繰り上げ受給を始めようと考えています。あわせて、年金を受け取りながらアルバイトもする予定ですが、勤務先から『厚生年金保険料を支払う必要がある』と言われました。もし厚生年金保険料を支払いながら年金を受給した場合、将来の受給額に変化はあるのでしょうか? 将来、無駄になるのか、得になるのかを知りたいです」(ちさん)
年金を繰り上げして、厚生年金に加入して働く予定です(画像:PIXTA)
A:繰り上げ受給しながら働いても、厚生年金保険料は無駄になりません。厚生年金の加入期間に応じて老齢厚生年金額が再計算され、受給額が上乗せされます
年金を繰り上げ受給しながら厚生年金に加入して働いた場合でも、支払った厚生年金保険料は将来無駄にはなりません。65歳になった時点で、厚生年金の加入期間に応じて老齢厚生年金額が再計算され、受給額が上乗せされます。65歳以降も厚生年金に加入して働く場合は、「在職定時改定」により、老齢厚生年金額が年1回(原則9月)増額されます。老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)は原則として65歳から受給できますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間で、繰り上げて受給することが可能です。ただし、繰り上げする期間に応じて1カ月当たり0.4%ずつ減額(昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は、1カ月当たり0.5%)され、その減額率は一生変わりません。老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰り上げする必要があります。
60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金に加入して働く場合、「在職老齢年金制度」の対象となります。これは、老齢厚生年金の報酬比例部分の月額とおよその給与(月額)の合計が一定額(令和7年度は51万円)を超えると、年金の一部または全額が支給停止となる仕組みです。
相談者「ち」さんのように、繰り上げ受給し厚生年金に加入して働く場合でも、この制度の対象になります。収入と老齢厚生年金の月額の合計額によっては老齢厚生年金が支給停止となる可能性があるため、事前に確認しておきましょう。ただし老齢基礎年金は在職老齢年金の対象外となります。
繰り上げ受給による減額額や、働きながら厚生年金保険料を払った場合の将来の増額分については年金事務所で確認してみましょう。「在職老齢年金制度の影響額」や「繰り上げ時の減額額」などを試算してもらうことで、働き方や受給開始時期の具体的な検討がしやすくなりますよ。
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監修・文/深川 弘恵(ファイナンシャルプランナー)