Q. 毎月分配型の投資信託を持っていますが、トランプショック後は分配が減り、継続保有すべきか迷っています
「運用中の投資信託の半分が毎月分配型です。これまで分配金を再投資していましたが、トランプショックの影響で、これまでのような不労所得は期待できず、このまま静観していいのか悩んでいます」(かこかこさん/66歳)<金融資産>現預金2500万円、リスク資産2500万円(うち投資信託が1400万円)
A. 毎月分配型はいろいろな欠点も踏まえた上で検討することが大事
中野:運用しながら少しずつ取り崩して使いたいというニーズはあると思いますが、毎月分配型の投資信託は、あまりおすすめできません。毎月分配型の投資信託には、さまざまな欠点があります。まず、利益が出ていないときでも元本を削って分配する、いわゆる“タコ足配当”が多い。しかも、分配金が高ければ高いほど喜ばれる傾向があるので、新興国通貨を使った通貨選択型など、質の悪い商品も数多く出回っていたり、運用コストが非常に高かったりします。
田村:お金が必要ないのなら、わざわざ分配金を受け取る必要はありません。分配金が支払われるたびに税金が引かれてしまうので、そのぶん損をしてしまいます。そもそも、ご相談者は現預金も十分お持ちなので、毎月分配型を持つ必要がないように思います。
中野:ご相談者は、分配金を再投資しているとのことですが、仮に“タコ足”ではない、ちゃんと利益からの分配だったとしても、分配金から約2割の税金が引かれ、目減りしたお金をまた再投資しているわけです。正直に言うと、あまりよい投資行動ではないでしょう。
少し説明を補足すると、毎月分配型の投資信託は、確かに売れています。新NISA制度では、こうした商品は非課税の対象外ですが、地方銀行などを中心に積極的に販売されていて、多くの人が購入しています。やはり、「毎月分配金が入ってきてうれしい」と感じる方が多いのでしょう。中には、元本を取り崩しているだけの分配金を、ただ受け取って満足している方も、きっといるのではないでしょうか。
また、「実績分配型」というタイプもあります。これは“タコ足”配当ではなく、値上がりした利益の範囲内で分配する仕組みの商品です。しかし、以前人気だった米国株の投資信託では、これまで相場が右肩上がりだったので分配金を出せていましたが、トランプ相場の影響で米国株が下落すると、おそらく分配金はゼロになっていると思います。
つまり、毎月分配型であっても、「不労所得が継続して得られる」とは限らないということです。「実績分配型」で“タコ足ではない”とされるものほど、下げ相場では突然分配金が出なくなる、というリスクがあるのです。分配金が減ったり、止まったりすると、多くの人がその投資信託を手放してしまいます。
田村:そうすると、投資信託の価格自体も下がってしまうんですよね。
中野:ですので、「毎月分配型は万能だ」と誤解しないように、ぜひこの機会に認識していただきたいと思います。
※本記事の内容は、2025年4月23日に公式YouTubeチャンネル「All About マネー」で配信された内容に基に作成しています。
回答してくれたのは……
中野晴啓(なかの・はるひろ)なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長。
元セゾン投信創業者。長年にわたり「長期・分散・積立」投資を提唱し、日本の個人投資家に向けた資産形成の啓発に尽力。2023年、なかのアセットマネジメントを設立し、個人投資家本位の資産運用をさらに追求している。温かく率直な語り口と、実直な投資哲学に定評がある。著書に『ほったらかし投資はやめなさい』(宝島社)など、資産運用に関する書籍を多数執筆。
田村正之(たむら・まさゆき)日本経済新聞 編集委員。
金融・経済分野を中心に、個人の資産形成やマネーリテラシーに関する記事を多数執筆。分かりやすく実践的なアドバイスに定評があり、多くの読者から信頼を集めている。各種メディアや講演活動などでも活躍し、生活者目線の情報発信を続けている。著書に『間違いだらけの新NISA・イデコ活用術』(日経BP日本経済新聞出版)など、他多数。
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