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知る人ぞ知る「隠れ名古屋めし」!?味噌煮込みうどんとも味噌ラーメンとも違う「みそちゅう」って何だ?

名古屋の一部で熱烈なファンをつかんでいる「みそちゅう」。味噌煮込みうどんとも味噌ラーメンとも違う、隠れ名古屋めしともいうべき不思議な一品、ヤミツキになるその魅力とは……? ※写真:筆者撮影

大竹 敏之

大竹 敏之

名古屋 ガイド

名古屋めしと中日ドラゴンズをこよなく愛する名古屋在住のフリーライター。雑誌、新聞、Webなどに名古屋情報を発信。著書は『名古屋の喫茶店完全版』『名古屋の酒場』『なごやじまん』など。コンクリート仏師・浅野祥雲の研究をライフワークとし作品の修復ボランティア活動も主宰する

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ご当地グルメの宝庫・名古屋。味噌カツ、味噌煮込みうどん、ひつまぶし、手羽先、台湾ラーメン、小倉トーストなど、バラエティに富んだ地域固有のメニューの数々は「名古屋めし」と総称されます。
 
そんな中、まだまだ知られていない隠れ名古屋めし的メニューが存在します。その1つが「みそちゅう」。名古屋および周辺のごく一部の店でしか食べられず、しかし熱烈なファンがいる一品です。とはいえ地元でも「何それ?」と首をひねる人が少なくない「みそちゅう」とは、一体どんな食べ物なのでしょう?

お客の半数が注文! 「うどんのいなや」のみそちゅう

全メニューの中でダントツの人気。半数近いお客さんが注文されます」と言うのは「うどんのいなや」(名古屋市千種区)の2代目・中村裕さん。同店は1957(昭和32)年創業で、「みそちゅう」は40年以上前から出していると言います。
みそちゅう,うどんのいなや

「うどんのいなや」のみそ中華(みそちゅう)並700円(税込、以下同)。大盛800円、特盛900円

「うちは昔から製麺所も兼ねていて、義父が麺を卸していたうどん屋さんに『みそちゅう』があったんです。これをヒントに独自に開発しました」
 
麺はうどん、きしめん、中華そば、ひやむぎ、そば、持ち帰り用の煮込み麺があり、これに醤油ベースのうどんつゆ、カレーつゆ、味噌つゆ、ざるなどの味の種類を組み合わせてバリエーションを広げています。貼り出された品書きを見ると肝心の「みそちゅう」が見当たりませんが……?
 
「品書きには『みそ中華』と書いています。でも、お客さんも私らもみんな『みそちゅう』と言うんです(笑)」
みそちゅう,うどんのいなや

品書きには「みそ中華」と記されているが、お客もお店のスタッフももれなく「みそちゅう」と呼ぶそう

味噌煮込みうどんとも味噌ラーメンとも違う!

つまり、みそちゅうとは「味噌味のつゆに中華麺を入れたもの」ということ。それはすなわち味噌ラーメンでは……?
 
「ラーメンのスープではなく、自慢のかつおダシに赤味噌を加えたつゆを使うんです。みそうどん、みそきしも同じつゆを使います。ですから、あくまで和の味なんです
 
百聞は一食にしかず、というわけで実食。丼に茶褐色の味噌つゆがたっぷりと張られ、そこに浮かぶのはまごうことなき中華麺。具はネギ、もやし、チャーシューといたってシンプルです。つゆは見た目の通り、濃厚な味噌の風味。名古屋特有のまろやかでコクのある宗田カツオのダシも効いています。味噌ラーメンよりも名古屋人にはおなじみの味噌煮込みうどんのつゆに近く、それでいて味噌煮込みほど熱々ではないので、味噌のまろやかさをより感じられます。不思議とクセになる味で、一度食べたらハマってこればかり注文するお客さんが多い、というのにも納得です。
 
さらに「『みそちゅうのぬる』や冷製の『みそころちゅう』にもできるんです」とのこと。味噌汁や味噌煮込みうどんを冷製で食べることはありませんから、こんな食べ方にもみそちゅうの懐の深さを感じます。
みそちゅう,うどんのいなや

「うどんのいなや」は家族経営のアットホームな雰囲気も魅力。写真一番左が2代目の中村裕さん。地下鉄名城線・自由ヶ丘駅より徒歩1分

豆味噌のつゆにうまみたっぷりの「長寿うどん」

長寿うどん

「長寿うどん」は1980年代に長命うどんののれん分けとして開業し、その後「長寿うどん」に改名。JR笠寺駅、名鉄本笠寺駅からそれぞれ徒歩6~7分

「長寿うどん本店」(名古屋市南区)も自家製麺が売りの昔ながらの麺類食堂。市の中心部からは少々離れた場所にありますが、いつも老若男女の常連でにぎわいます。

ここでも呼び方こそ「味噌らーめん」ですが、うどんつゆを使った「みそちゅう」と呼ぶにふさわしいメニューを食べられます。

「味噌つゆは味噌煮込みうどんと同じもの。2種類の豆味噌をブレンドし、カツオ、しいたけのうまみをしっかり入れています」と店主の白藤哲也さん。
みそちゅう,長寿うどん

「長寿うどん」の味噌風味らーめん、並盛り760円

具はわかめ、ネギ、温泉玉子、しいたけ、切り干し大根。つゆはいかにも名古屋らしい濃~い茶色。クセがなく、見た目よりまろやかで最後まで飲み干せる親しみやすい味わいです。こちらは中華麺だけに偏ることなく、うどん、きしめんを含めてまんべんなく注文が入るそうです。

インパクトある味噌つゆの中でも中華麺が存在感を発揮

「うどんのいなや」と「長寿うどん」、いずれもつゆはラーメンスープとはまったく異なり、風味はあくまで和。かといって味噌のインパクトが強いためうどんつゆとも印象は異なります。しいていうなら味噌汁の中に麺がつかっている感じ。同じつゆにうどんもきしめんも合わせられますが、中華麺を合わせる「みそちゅう」の人気が高いのは、麺とつゆが絶妙に独立し合っているからでは、と感じます。

うどん、きしめんだともっとつゆと麺がなじんで、麺も味噌味となり、終始味噌をすすっている感じになるところ、中華麺の場合は一体感が出過ぎないため、コクのある味噌つゆの中でも、麺自体の風味や食感を独立したものとして味わえるのです。
 
「みそちゅう」は、名古屋流のダシが効いたうどんつゆ、そして名古屋をはじめとする東海地方独自の豆味噌(一般的な呼び方は赤味噌)があるからこその麺料理であることは確か。味噌ラーメンとはまったく別物で、かつ他の地域では絶対に味わえません。加えて、名古屋および周辺地域でもごく一部にしか存在しない超地域限定の一品でもあります。

ちなみに、愛知県めんるい組合に問い合わせても「みそちゅうについてはよく分かりません」とのこと。さらに名古屋の製麺所兼食堂の草分けである「長命うどん」本店でもみそちゅうはありませんでした。
 
このように地域固有でありながら極めて限定的で、まさしく隠れ名古屋めしと言える「みそちゅう」。注目度が高まって採用する店が増えれば、群雄割拠する名古屋めしの中でも存在感が高まっていくかもしれません。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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