国債・債券

外国債券に投資するなら、先進国国債インデックスの「為替ヘッジなし」を選ぼう

個人投資家にとって外国の債券は利回りが高く魅力的ですが、円と外貨の交換レートによっては損をすることもあります。為替リスクを伴う外国債券投資は、コストとリターンのバランスを見極める必要があります。※サムネイル画像出典:PIXTA

All About 編集部

 
海外債券に投資するときの「為替ヘッジあり」「なし」どう選ぶ?

海外債券に投資する時の「為替ヘッジあり」「なし」どう選ぶ?(画像出典:PIXTA)

個人投資家にとって外国の債券は利回りが高く魅力的ですが、円と外貨の交換レートによっては損をすることもあります。為替リスクを伴う外国債券投資は、コストとリターンのバランスを見極める必要があります。

本記事では、個人投資家が外国債券に投資する際の考え方と、外国債券インデックス(例:FTSE世界国債インデックス)に投資する際の、為替との付き合い方について解説します。
 

そもそも債券って何?

投資初心者にとってはあまりなじみのない「債券」ですが、これは国や企業が投資家から資金を借り入れるために発行する仕組みで、定期的に一定の金利が支払われ、満期時には定められた元本が償還されることが約束された証券です。

流通している債券の発行体としては国が大きな割合を占めていますので、元本が確実に返済されるという前提で考えると、途中で支払われる金利によって債券の価値が決まると言ってよいでしょう。
 

個人投資家は債券投資においても「長期・分散投資」が基本

債券は金利の動きに左右され、金利が上がれば債券価格は下がる傾向があります。この関係を踏まえれば、金利が高い(価格が安い)タイミングで買い、低くなったときに売ることで収益が出せそうに思えますが、実際には金利のタイミングの見極めは専門家でも難しいものです。したがって個人投資家としては債券投資においても長期・分散投資が基本となります。

この目的で使用される債券インデックス※においては、債券が発行されるとインデックスに組み込まれ、残存期間が1年未満となるとインデックスから外れます。

※債券インデックスとは、市場全体の債券に投資した場合に資産合計額がどう変化するか示す指標。

そのうえでインデックスに組み込まれている間の支払金利や価格変動がインデックスの値に反映する仕組みです。債券価格は金利動向によって変化するものの、債券の残存期間が短くなると価格は徐々に元本(=額面100円)に近づくため、最終的には支払われる金利がインデックスの変動要因として大きくなります。

海外の先進国の10年国債の利回りは3~4%程度と投資に値する水準

このように債券投資の生命線は金利です。わが国は量的・質的金融緩和が2024年3月に終わり、長期金利が上昇してきましたが、10年国債の利回りがようやく1.4%程度と投資妙味のある水準とは言えません。

一方で海外に目を向けると、2025年の6月時点で先進国の10年国債の利回りは3%から4%程度と投資に値する水準だと言えましょう。ちなみに外国債券の代表的なインデックスであるFTSE世界国債インデックスにおける最終利回りは6月末時点で3.4%となっています。

※ここでの「先進国」とは、米国・イタリア・フランス・中国・英国などを含むFTSE世界国債インデックスの構成国を想定しています。

外国債券投資では「為替の取り扱い」に注意

外国債券投資で問題となるのが為替の取り扱いです。外国債券を買うには円を外貨に換えて外国債券を買い、売却する時には外国債券を売って外貨を入手し、その外貨を円に戻す必要がありますが、買った時と売った時の為替レートの差により金利を上回る損益が発生することがあります。

筆者がまだ信託銀行に在籍していたころのことです。1980年代から1990年代の日本の機関投資家は、米国の高金利を享受するため米国債投資をして高い金利を得ても、同時期に進んだ円高(1985年のプラザ合意に起因)により、円に戻した際に大きく価値が減って損失を出し続けたことがありました。

こうした事態を回避するため、為替予約という取引により将来の為替レートを確定させ、為替リスクをヘッジする方法があります。

しかしながらこの取引には2つの通貨間の短期金利差分のコストを払う必要があり、そうなるとせっかく高い金利を求めて投資をしているにもかかわらず、そのメリットを大きく損なってしまうことになります。

個人投資においても、外国債券投資は「為替ヘッジなし」を選ぼう

為替ヘッジとは、将来の為替レートを事前に固定することで、為替の変動リスクを回避する仕組みのことです。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金運用では、ヘッジコストを回避するため、為替の変動によるリスクを許容するのが基本です。

グローバル化した世界経済の中で、わが国はエネルギー、食料および工業製品を海外から輸入しなければ国民の生活が成り立ちません。個人投資における外国債券投資の意味は「外貨で保有することで、輸入品に対する購買力を維持する」という観点から考えると、「為替ヘッジしない方が適切」と考えられます。

加えて、為替には分散投資効果を認めることができます。例えば米国で金利が上昇すると米国債の価格は下がります。一方で金利上昇により米ドルでの短期資金運用における魅力が増すことから、為替が米ドル高・円安に振れる場合があります。

この結果、外国債券インデックスの値は円ベースでみると外国債券価格の下落と円安が相殺して動きが小さくなります。

このため、個人投資においても、外国債券はノンヘッジ(為替ヘッジなし)でよいと思われます。外国債券ファンドの商品名にはカッコ書きで(為替ヘッジあり)とか(為替ヘッジなし)といった記載がありますが、「(為替ヘッジなし)」を選択するようにしましょう。

新興国ではなく「先進国」国債のインデックスに連動するETF・投資信託がよい理由

金利の観点から新興国国債は国によっては10%を超える利回りのケースがあり、一見魅力的ですが、新興国はインフレ率も高く、通貨が弱くなる傾向があることから円ベースに引き直すと運用成果は意外にあがりません。

筆者はGPIFに勤務していたころ、事務方として新興国債券投資を開始する際、メーカー出身の経営委員より「新興国で事業展開しても、当該国の通貨安によって日本円に換算すると厳しい業績になることが日常茶飯的に起こるので、慎重に考えるべき」とコメントをいただいたものの、予定どおり進めた結果、思うような成果が上がらず苦労した経験があります。

このため、通貨が安定している先進国国債のインデックスで十分と考えます。

FTSE世界国債インデックスに連動するETF(上場投資信託)や投資信託が手数料も安く手ごろです。

教えてくれたのは……
陣場 隆(じんば たかし)さん


京都大学法学部卒業、ペンシルベニア大学ウォートン校MBA、三井信託銀行入社、国際金融部、国際企画部、融資企画部付、年金企画部、年金資金運用研究センター出向、三井アセット信託銀行公的年金運用部次長、証券営業部次長などを経て2006年末に同社退社。2007年より年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に勤務。調査室副室長、運用部長、調査数理室長を経て2020年定年退職。GPIF勤務の13年間で、運用機関構成の決定や基本ポートフォリオの策定を統括した。GPIFを定年退職後「今を生きる若い人たちに向けて年長者の知恵を伝えたい」という気持ちが強くなってきたため、執筆活動を開始
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