
お金を置いておくなら、どの金融商品がいい?(画像出典:PIXTA)
「株以外で、お金を置いておくならどこがいいですか? なるべく安全な金融商品がいいです。教えてください。証券口座に待機資金として置きっぱなしでも増えるのでしょうか?」
物価は日に日に上がっているのに、銀行の預金金利はスズメの涙……。
リスクは取りたくないけれど、インフレには備えたい。どうすればよいんだろう?と悩みますよね。筆者は、株式投資を中心とする個人投資家ですが、「リスクは取りたくない」という気持ちもよく分かります。
なるべく安全にインフレに備えるには、どうすればよいのでしょうか? 本記事では、その考えをまとめてご紹介します。
株以外で、お金を置くならどこ?
手始めに「証券口座に待機資金として置きっぱなしでも増えるの?」という点についてですが、現在のところほとんど増えないと考えています。金利を付けたいのであれば、別の方法を検討するのがよさそうです。ご質問者さまは「株以外で、なるべく安全な金融商品」とおっしゃっていますが、株式投資は選択肢として完全に除外すべきとは限らないと筆者は考えているため、比較対象として株についても簡単に触れておきます。
最もリスクが高いのが「株式投資」です。これは「企業にお金を投資して、成功した分だけ配当金などの見返りをもらう」という仕組みです。
お金を「貸す」のと違い、株式投資には返済義務がありません。そのため、投資先の企業が倒産してしまった場合には、元本を回収できなくなるリスクがあります。この点には注意が必要です。
よく「株式投資はハイリスク・ハイリターン」と言われます。大まかな経験則としては、「3~4年に1回は20%程度の下落、50年に1回は50%程度の下落がある」とされる金融商品です。
その代わり、リスクが大きい分だけリターンも期待できます。筆者の経験上、適正価格で投資していれば、年率で7%前後のリターンが得られることもありました。これは、おおよそ10年ごとに資産が倍増するペースに相当します。
株式投資は、インフレに備えるという点では十分なリターンが期待できる一方、それに見合った大きなリスクがあることを忘れてはいけません。
不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」
次にリスクが高いのが不動産投資です。これは、「不動産を誰かに貸し出して、家賃収入を受け取る」という仕組みになります。一般的に、不動産投資は「ミドルリスク・ミドルリターン」と呼ばれます。
かつては不動産オーナーとして物件を所有する必要があり、巨額の資金が必要でした。しかし最近では、不動産投資信託(REIT:リート)が登場したことで、小口資金でも幅広い物件に分散投資できるようになりました。
不動産投資のリスクは、大まかに言えば「株式投資の7割程度」といったイメージで、期待できる利回りもそれに準じると考えています。おおよそ「3~4年に1回は15%程度の下落、50年に1回は35%程度の下落がある」ような感覚です。
株式投資よりリスクが小さい分、リターンも控えめになりますが、適正な価格で投資できていれば、年率5%前後のリターンが期待できると見ています。これは、おおよそ15年ごとに資産が倍増するペースです。
不動産投資もまた、インフレ対策として有効な手段です。というのも、賃料(家賃)をインフレに合わせて調整できるため、物価が上昇しても賃料収入が増える可能性があるからです。
債券投資は「インフレに負けている」
最後が債券投資です。これは、「銀行のように誰かにお金を貸し出して、利息収入を受け取る」という仕組みです。お金を貸す相手にはさまざまな種類があり、例えば国にお金を貸す「国債」、会社にお金を貸す「社債」などがあります。
貸し倒れのリスクが低い国債などは、金利が低めに設定されていますが、リスクの高い社債になると、金利(利回り)が高くなる傾向にあります。
債券の種類にもよりますが、特にリスクの低い国債などへの投資は、一般的に「ローリスク・ローリターン」な資産とされています。
2025年7月現在、日本の国債金利は依然として低水準で、個人向け国債(変動10年)の表面利率は年0.96%です。銀行預金よりはましだと思いますが、仮に物価が年3%上昇しているとすれば、「インフレに負けている」というのが実情です。
その代わり、景気が悪化した場合でも利払いが滞るリスクは非常に低いため、インフレには弱いものの、不況時のデフレ局面には強い傾向があります。
これら以外にも、所得税を納めている方であれば、生命保険なども検討の対象になると思います。
生命保険の中には、「いつでも100%以上のお金が戻る積立保険」など、還元率が非常に高いものもあります。このような制度を生かすことで、定期預金のようにお金を積立貯金しながら、所得控除を受けることが可能です。
もちろん、還元率が高い生命保険は多くなく、ほとんどの場合はインフレに対してマイナスになってしまいますので、よく選ぶ必要があります。
まとめると、
- ハイリスク:株式投資(インフレ○)
- ミドルリスク:不動産投資(インフレ○)
- ローリスク:債券投資(デフレ○)
- その他:生命保険などによる節税(要精査)
大事なのは“さじ加減”!筆者のゆるめな投資スタンス
ここまでの話を踏まえて、筆者だったらどんなポートフォリオを組むかを考えてみます。ご質問者さまは「株以外で」と条件を提示してくださいましたが、特別な理由がない限り、株式投資を毛嫌いする必要はないと考えています。
確かに株式投資はハイリスクですが、ハイリスクだからこそ、投資額(購入量)を調整することでリスクを抑えられます。
筆者は、不動産投資に1000万円を投資するのと、株式投資に700万円を投資するのでは、期待できるリターンと、想定すべきリスクの大きさはおおよそ同程度だと考えています。
重要なのは「どれに投資するか」だけでなく、「いくら投資するか?(配分のさじ加減)」です。どんなにローリスクな商品でも、大量に買えばリスクは高くなりますし、逆にハイリスクな商品でも、少額であればリスクはごく小さく抑えられます。
まるで料理の味付けと同じで、大切なのは“さじ加減”なのだという感覚で考えていただけるとよいかと思います。
株式と債券を半分ずつ買う方法も
無難なポートフォリオとして思い浮かぶのが、「カウチポテト・ポートフォリオ」です。これは、株式と債券を半分ずつ買うというシンプルな構成です。景気がよければ、株式の半分が上昇し、景気が悪ければ、債券の半分が価値を保ってくれる。どんな景気環境でも、資産の半分は“働いてくれる”という点で、分かりやすくバランスの取れた方法です。
もしどうしても株式投資が苦手であれば、不動産と債券を半分ずつ持つという組み合わせもアリだと思います。
ポートフォリオを組むときは、「隠れた資産も含めて」全体のバランスを考えるのがいいと考えています。
例えば筆者の場合、退職金や年金の積立がありますが、これらの金融資産は、どちらかといえば「不景気に強く、好景気に弱い」性質を持っています。そのため、手元の運用資産では、株式や不動産を多めに持とうかなと考えています。
また、すでに持ち家がある方は、すでに「不動産」という資産を保有しているとも言えます。その場合、さらに不動産投資を追加するのはバランスが悪く感じられるかもしれません。むしろ、現金や債券に多めに配分するというのも1つの選択肢です。
さらに、職業による収入の安定性も、資産配分を考えるうえで重要です。
例えば公務員などの安定した職業(=守りの仕事)をしている方であれば、景気がよくても収入が大きく増えるわけではありません。こうした方は、資産運用では多少リスクを取る余地があるとも言えます。
一方で、フリーランスなどの景気に敏感な職業の場合は、景気が悪化するとボーナスや報酬が減ることもあるため、運用資産では“守り”を意識したほうがよいバランスになるかもしれません。
ちなみに筆者自身は、「低リスクな株を選んで、分散投資する」スタイルが好みなので、資産の大部分は株式に充てています。
この辺りは、ご質問者さまの「構想」や「好み」がとても大切です。ぜひ、ご自身のライフスタイルや価値観に合ったプランを考えてみてください。
筆者だったら、まずは無難な「カウチポテト・ポートフォリオ」などをベースにしつつ、そこから少しずつ好みに合わせて微調整していくと思います。