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2028年4月から遺族年金制度が見直されます。本改正では子どものいない30代女性に影響がある一方で、子どもに対する加算が増額され対象者が広がるなど、いくつかのポイントがあります。本記事では見直し内容と対象者を分かりやすく解説します。
遺族年金には「遺族厚生年金」と「遺族基礎年金」の2種類があります
遺族年金とは、家計の支え手を亡くした方の生活を保障するための制度です。遺族年金には2種類があり、それぞれ支給対象者が異なります。・遺族基礎年金
国民年金に加入していた方が亡くなった場合、18歳になった年度末までの子ども(または20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態にある子)を持つ配偶者、または子どもに支給されます。
・遺族厚生年金
厚生年金に加入していた方が亡くなった場合、配偶者や子ども、父母、孫、祖父母のうち、優先順位の高い方に支給されます。なお、遺族厚生年金は、子どもがいない配偶者にも支給されます。
今回の制度改正では、両制度に見直しが行われ、2028年4月から段階的に実施される予定です。
遺族厚生年金の変更点とは?
これまで、遺族厚生年金の支給には年齢や性別によって違いがありました。例えば、子どもがいない夫婦の場合、夫が亡くなった際に妻が30歳未満であれば給付期間は5年間に限られていましたが、30歳以上であれば生涯にわたり支給されていました。
一方、妻が亡くなった場合、夫が55歳未満であれば遺族厚生年金は支給されません。55歳以上であっても支給開始は60歳からであり、残された遺族の性別によって支給条件に差があることが課題とされてきました。
今回の改正では、子どものいない60歳未満の配偶者は、性別に関係なく原則5年間の有期給付となるため、性別や年齢による不公平が解消されます。 これにより、これまで支給対象外だった55歳未満の男性配偶者にも遺族厚生年金が支給されるようになります。一方で、これまで無期限で受給できていた30歳以上の女性も、原則5年間の有期給付となることが大きな変更点です。
女性で制度変更による影響を受ける年代は?受けない年代は?
女性に着目し制度変更を考えた場合、2028年4月時点で子どものいない40歳未満の女性が新制度の対象となります。ただし、30歳未満の女性はすでに有期(5年間)の給付対象であったため、今回の変更で実質的に影響を受けるのは、子どものいない30代の女性(30~39歳)です。
一方、2028年4月時点で40歳以上の女性は制度変更の影響を受けません。女性に対しては、施行日に対象年齢を40歳に引き上げた上で、20年かけて段階的に60歳まで引き上げることになっています。
また以下のような方も、制度変更の影響を受けません。
・18歳になった年度末までの子ども(または20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態にある子)がいる方
・すでに遺族厚生年金を受給している方
・60歳以降に死別された方
有期給付では加算や継続給付など一定の配慮がとられます
改正後、子どものいない60歳未満の配偶者は性別に関係なく5年間の有期給付となりますが、以下のようなケースでは5年目以降も給付が継続される可能性があります。・障害がある方(障害年金の受給者)
・年収が低く、生活が困難と判断される場合(単身で月収10万円以下など)
また、有期給付には「有期給付加算」が上乗せされるため、受給額は現在の約1.3倍になる見込みです。短期間の支給となる分、金額が手厚くなる配慮がされています。
遺族基礎年金の「子の加算」も変更に
遺族基礎年金には、子どもの人数に応じた「子の加算」があり、今回の改正により加算額が引き上げられます。【改正前】
1人目・2人目:23万4800円
3人目以降:7万8300円
【改正後】
いずれも:1人あたり28万1700円
※上記の金額は2024年度価格の年額であり、制度改正時には再算定されます。
なお、この変更はすでに遺族基礎年金を受給している方にも適用されますので、すでに受給中の遺族にとっても朗報です。
さらに、加算対象となる年金の種類も拡大され、老齢基礎年金のみを受給している方にも支給されるなど、対象者が広がります。
まとめ
今回の遺族年金制度の見直しは、女性の就業率向上や男女平等の観点からすすめられている改革です。特に、2028年4月時点で子どものいない30代女性は影響を受けるため、制度内容をしっかりと確認しておく必要があります。
年金制度は非常に複雑です。ご自身が対象になるか不安な方は、ファイナンシャル・プランナーや年金事務所などの専門機関に相談することをおすすめします。