
生成AIで作ったマリリン・モンローのイラスト。有名人の顔が写ったイラストなどをAI生成してWebサイトなどにアップロードすると「肖像権侵害」となる可能性がありますが、これは問題ありません。その理由は本稿で明らかにしています ※画像:筆者生成
アメリカでは、このようにAI利用に対する制限の動きがあり、州によってはAIに有名人の顔・声が利用されることを制限するような法律が制定されるなどしています。
日本では、今のところAI利用を制限するような法律はありませんが、現状の法律などの中でもいろいろと注意すべき点は多いです。
今回は、そうした注意すべき点の中から、有名人や一般人の顔を生成AIで利用する場合の注意点について解説します。
肖像権と有名人の顔を利用する場合
人の顔についての権利は、「肖像権」という権利で守られていますが、これは日本では法律で認められた権利ではなく、裁判例(最高裁判所昭和44年12月24日判決)で認められた権利です。具体的には、自分の顔などをみだりに撮影されたり、自分の顔が写った写真をみだりに公表されたりしない権利です。
「みだりに」という言葉が入っていることがポイントで、人の顔写真を撮影したり公表したりすることすべてが肖像権侵害となるわけではなく、その人の尊厳を傷つけるような方法で行われる撮影・公表が肖像権侵害に当たります。
そして、裁判では、人は写真だけでなく自分の顔が描かれたイラスト画についてもみだりに公表されない権利(肖像権)があると判断されています(最高裁判所平成17年11月10日判決)。
そのため、有名人にも当然この肖像権はありますので、有名人の顔が写っている写真やイラスト・似顔絵を生成AIで生成して、それをWebサイトなどにアップロードすると、その有名人の肖像権を侵害してしまう可能性があります。
具体的には、有名人の顔が写っている写真やイラスト・似顔絵を生成AIで生成して、次のような利用等をすると肖像権侵害と判断される可能性が高いでしょう。
- AIで生成された写真やイラスト・似顔絵がその有名人を傷つけるような内容である(その有名人をばかにするような内容など)
- AIで生成された写真やイラスト・似顔絵をアダルトサイトに掲載するなど、その有名人が望まないような利用をした
- AIで生成された写真やイラスト・似顔絵を利用して利益を得た(この場合はどちらかというとパブリシティ権侵害の問題となる)
また、ハリウッド俳優など海外俳優の肖像については特に注意が必要です。2024年10月に、カリフォルニア州において、俳優の声や肖像などが許可なくAIで再現されることを防ぐことを目的とした法案が議会で可決されています(AB 2602法案)。他にも、ミネソタ州でも同様の法案(いわゆるNO FAKES法案)が提出されるなどして議会で議論されています。
このようにアメリカでは俳優の声や肖像などが許可なくAIで再現されることを防ぐことを目的とした法整備が進んでいることから、ハリウッド俳優等の肖像をAIで利用することは特に注意が必要です。
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