子育て

中学受験で「苦手を克服する」発想はNG! 知らないと損する、脳科学的に正しい受験勉強のコツ

「うちの子、苦手な科目ばっかりで……」そんな悩みを抱える親たちに知ってほしい、脳科学の視点から見た効果的な勉強法とは? ※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

 子どもの成績を上げる秘訣は「苦手克服」ではなく、意外なところにあるかも?※画像出典:PIXTA

 子どもの成績を上げる秘訣は「苦手克服」ではなく、意外なところにあるかも? ※画像出典:PIXTA

「うちの子、苦手な科目ばっかり……」子の受験勉強を見ていてそんな悩みを抱えていませんか? 実は、子どもの成績を上げる秘訣は「苦手克服」ではなく、意外なところにあるかもしれません。脳科学の視点から見た、効果的な勉強法とは?

東北大学加齢医学研究所教授で脳科学者の瀧靖之さんの著書『本当はすごい早生まれ』では、脳の仕組みに基づいた効果的な学習方法や、子どもの能力を最大限に引き出すためのヒントが満載です。

今回は本書から一部抜粋し、受験勉強において「苦手科目を克服させる」という一般的な考え方とは異なる、脳科学に基づいた意外なアプローチと、何歳になっても学び続けることができる脳の「可塑(かそ)性」という驚くべき力について紹介します。
<目次>

脳科学から見た受験勉強のコツ

脳科学から見た受験勉強のコツをお伝えしておきましょう。

脳というのは、ひと言でいえば「やればできる臓器」です。やればやっただけ、成果を見せてくれるのが脳なのです。ただ、脳をうまく使うためにはコツがあるのも事実。だから勉強には正しいやり方があるのです。

脳には、あることを頑張ると、脳全体のパフォーマンスが上がるという性質があります。これは「汎化(はんか)」と呼ばれる脳の特徴です。「汎」というのは、「広くゆきわたるさま」を意味する漢字です。汎化はあらゆることから生じます。

例えば「部活を真剣に頑張ると、成績が伸びる」というのも汎化の一つです。「最後まで部活をやっていた子が、第一志望の学校に入学した」というのはよく聞く話の一つですが、脳科学から見れば驚くことではありません。

脳のパフォーマンスが全体的にアップするのは、心理的影響も大きいと思います。つまり、何かに自信を持つことで、他のものへの自信につながる。方法論的にいえば、あるものを極めることで、極め方がわかる、ということがあるかもしれません。

これを受験勉強の科目に置き換えて考えれば、得意な科目をさらに伸ばすという方法になります。

脳科学的には「凹みを埋める」のはおすすめしない

受験勉強においては、「凹みを埋める」のが当たり前の方法です。例えば算数(もしくは数学)が苦手で、国語が得意な子に対しては、算数の点数を上げるように指導することが多いと思います。

脳科学から考えると、おすすめは「凸をさらに伸ばす」方法です。国語が得意なら、国語を突き抜けさせる。

「国語はできるから、算数をやりなさい」ではなく、さらに国語に力を入れるのです。すると、他が伸びてくる。国語が伸びるだけではなく、全体の成績が伸びてくるのです。

うちの息子は、成績的には特に突出していたわけではありませんでしたが、国語が得意でした。ですから、国語だけは、小学3年生の頃に中学2年生の問題まで解かせていました。苦手だった算数は、それにつられるように少しずつ伸びていきました。

また、可塑性についても思い出しておきましょう。脳には、「思い通りに脳自体をつくることができる・変化させることができる」という性質がありました。これはつまり、シンプルにいえば「勉強をすれば、成果が出る」ということです。

すぐに成績に現れなくても、脳は勉強をすれば変わっていきます。受験勉強が無駄になることは、決してありません。

脳の「変わりたい力」を最大限活かす

可塑性という性質のすごいところは、何歳になってもその性質が残ることです。「学ぶのに、遅すぎることはない」というのは気休めではなく、脳科学的な事実なのです。

しかし年齢が上がるにつれて、暗記科目はつらくなります。小学生の頃は何の工夫もしなくてもできた暗記が、中学生、高校生になってくると難しくなってきます。

そのような場合は、まず簡単なものに取り組み、その後難易度を上げると良いでしょう。全体像をざっと把握してから、細部に入って行くというイメージです。

医学部でも、学生は少なからず、まずは一般の人でもわかるようなやさしい参考書を読んでから、専門書に取りかかります。

このようなステップを経ると、覚えやすいからです。歴史漫画を読んでから、歴史の問題を解いてもいいですね。

これは「流暢性効果」といって、「ちょっと知っていると、興味関心が湧く」という現象です。
最初に脳に簡単な情報を入れておくことで、その後の類似の情報が理解しやすくなるのです。

昔、古典の勉強として『源氏物語』を頑張って読もうとしたのですが、もう全然頭に入らない。仕方がないので、現代語訳で読んでから原文にあたったら、びっくりするくらい内容が頭に入ってきました。これも流暢性効果のひとつです。

これは英語も同じです。日本語訳の『ハリー・ポッター』を読んでから原書を読んだという方は、「英文が頭の中で勝手に翻訳されて、スラスラ読めた」といっていました。

逆に原書から読んだという方は、「9と3/4番線が出てきたところで挫折した」といっていました (まだ物語の入り口です)。

翻訳を読んでから、漫画を読んでから、映画を見てからなど、とっつきにくそうな本や科目がある場合には、先に他の方法で情報を仕入れておくといいかもしれません。

流暢性効果で興味が湧いてきたら、それで終わりにせず原文に当たるという習慣をつけましょう。これで学力は大いに伸びていきます。
  瀧靖之(たき やすゆき)プロフィール
東北大学加齢医学研究所教授。医師。医学博士。1970年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。東北大学加齢医学研究所臨床加齢医学研究分野教授。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターセンター長。早生まれの息子の父。脳科学者としてテレビ・ラジオ出演など多数。
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