子育て

「早生まれは不利」説はムダな思い込み? 早生まれ男子の中学受験を伴走した脳科学者の結論

「うちの子、早生まれだから……」その心配、実は子どもの才能を潰す「ムダな思い込み」かもしれません? 脳科学者が解き明かす、早生まれの子が持つ意外なアドバンテージと、脳の「コスパ重視」な成長の秘密とは? ※サムネイル画像:PIXTA

執筆者:All About 編集部

「早生まれは、何をするにもハンデがあってかわいそう…」そんな風に思っていませんか?※画像出典:PIXTA

「早生まれは、何をするにもハンデがあってかわいそう……」そんな風に思っていませんか? ※画像出典:PIXTA

「早生まれは、何をするにもハンデがあってかわいそう……」そんな風に思っていませんか? でも、脳科学の視点から見ると、実はその「ハンデ」こそが、子どもの脳を大きく成長させる、最高のチャンスかもしれません。

東北大学加齢医学研究所教授で脳科学者の瀧靖之さんの著書『本当はすごい早生まれ』では、早生まれの子どもたちが持つ隠れた可能性や、脳の発達と学習の関係について、科学的な知見と自身の経験を交えながら解説しています。

今回は本書から一部抜粋し、「早生まれ」であることが、なぜ脳の「可塑性」という性質を最大限に活かし、成長を促す上で有利に働くのか、そして、脳が持つ「コスパ重視」な驚くべき成長戦略の秘密について紹介します。
<目次>

早生まれに備わっている力とは?

「早生まれが本当はすごい」のは、脳に「可塑(かそ)性」という性質があるからともいえると思います。「可塑」というのは聞きなれない言葉だと思います。これは「思い通りに物の形をつくること」をいいます。

脳には、「思い通りに脳自体をつくることができる・変化させることができる」という性質が備わっています。

実は、この可塑性は何歳になっても残ります。例えば10歳になっても、30歳になっても、50歳になっても、70歳になっても、新しいことを学ぶことができるのは、脳に可塑性があるからです。

ただし、可塑性は「若い脳の方が高い」ということもわかっています。新しいことを学ぶのであれば若いうちの方がいい、ということは、皆さんも実感として感じているはずです。

早生まれの大きなメリットとは?

早生まれの子というのは、結果的に他の子よりも一足早く集団生活に入り、様々なことをスタートすることになります。

多くの他者とコミュニケーションをするのも、体操をするのも、絵を描くのも、合唱をするのも、合奏をするのも、勉強をするのも、遅生まれの子よりも脳が若いうちに始めることになるのです。

これは実は、早生まれの大きなメリットです。

なぜなら脳の可塑性を、より早いうちから高めることになるからです。脳が若いうちに、いろいろな経験ができるということですね。1年早く難しい問題にチャレンジしていくことになるからです。

結果的に早生まれという状況は、脳の可塑性を高めることにつながるともいえます。思考、判断、記憶などの脳に対する負荷を、周りの子よりも早い段階でしっかりかけていくということは、脳の機能的な側面から見ればかなり大きなプラスなのです。

ここで少し、脳の基本戦略、特に「成長戦略」についてお話をしておきましょう。

脳は、「まず、周囲の環境を受け入れ、次にほとんど使わないものを少しずつ切り捨てていく」という方針を持っています。若い脳は特に、あらゆる環境に対応できるような柔軟な状態になっています。何においても、小さな子がすぐに覚えてしまうのは、そのためです。

しかし、その後、使われなくなったネットワークは少しずつ切り捨てていくと考えられています。なぜなら、そのようなネットワークを脳に持っていても、多くの場合エネルギーの無駄だからです。

脳はコスパ重視なのです。

脳は効率重視だった!

言語を例にとって、この性質を説明するとわかりやすいと思います。8カ月くらいまでの赤ちゃんは、どんな言語のどんな発音や抑揚も、完璧に聞き取ることができると考えられています。しかしそれ以降、周囲から聞こえてこない音は、少しずつ聞き取りにくくなると考えられます。

例えば、日本人の「L」と「R」を聞き取るための音感も、磨かれずに落ちていくと考えられます。なぜなら、日本語を母語として育つ場合、「L」と「R」を聞き分ける能力をほとんど使わないからです。

脳の限られたリソースを、使わないものに当てるのは無駄。コスパが悪いのです。

このような、「周囲の環境を受け入れ、次にほとんど使わないものを少しずつ切り捨てていく」という脳の成長は、脳の部位によって違いはありますが、脳が発達する限り続いていきます。

脳の発達戦略と早生まれは相性抜群

早生まれの子というのは、あらゆる物事を、遅生まれの子より、脳が若いうちに取り込むことになります。

つまり、「周囲の環境を受け入れる」という戦略がはまる確率が高い、ということがいえるかもしれません。いつでも少し若い脳で、つまり受け入れやすい脳で、物事に取り組むことになるからです。

実際に、その年の4月の子と3月の子が、同じことを学んでいるというのは、すごいことです。早生まれの子は、実は1年先を行っているのです。
  瀧靖之(たき やすゆき)プロフィール
東北大学加齢医学研究所教授。医師。医学博士。1970年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。東北大学加齢医学研究所臨床加齢医学研究分野教授。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターセンター長。早生まれの息子の父。脳科学者としてテレビ・ラジオ出演など多数。
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