
子どもが頭をぶつけてしまった! 緊急性の高いケースは?
お子さんが頭を打つと、心配になるものです。一方で、「よくあること」と思って放置するケースもあるかもしれません。しかし、危険なサインを見逃すと命に関わることもあります。ここでは、お子さんの頭部外傷や脳振とうの緊急性を見極める方法と、見過ごされがちな後遺症のリスクを解説します。
「頭をぶつけただけ」で起こるリスク
子どもが頭を打つのは日常的で、13歳までに3人に1人が経験するといわれています。多くは大事に至りませんが、中には命に関わる例もあります。2006年の英国の研究(※1)では、22,772人の「頭をぶつけた」子どものうち、
- 281人にCTで異常所見
- 137人が脳神経外科手術を受け
- 15人が死亡
■学習面への影響
- 集中力・注意力の低下(授業に集中できない、ぼーっとする)
- 記憶力の低下(新しいことが覚えにくい、思い出すのに時間がかかる)
- 処理速度の低下(情報処理が遅くなる)
- 学業成績の低下(認知機能の低下による影響)
- 情緒不安定(イライラしやすい、落ち込みやすい)
- 疲労感の増加(疲れやすい、強い眠気)
- 睡眠障害(寝つきが悪い、夜中に目が覚める)
- 頭痛(けがから時間がたっても続く)
- めまい(ふわふわ感や立ちくらみ)
- 光や音への過敏(まぶしい光や大きな音がつらい)
「危険な頭のぶつけ方」を見分けるサイン
お子さんが頭を打った直後の判断は難しいもの。ぶつけた場合の「危ないサイン」を知っておきましょう。英国NICEガイドライン(※2)を参考に、緊急性を3段階で示します。
(英国では 2003年に発表されたNICE ガイドラインにより 16 ~ 64 歳の死亡率低下が報告されています)
1. 赤信号……直ちに119番で救急車を要請すべきサイン
以下のサインが見られたら、重症頭部外傷の可能性が高く、命に関わる危険があります。ためらわず、直ちに救急車を呼んでください。
- 意識消失: 特に、5分以上「気を失った」「意識がなかった」状態が続いた場合
- けいれん: けがの後にけいれんやひきつけを起こした場合
- 意識レベルの低下: 呼び掛けても起きない、ぐったりしているなど
- 頭蓋骨骨折の兆候: 耳や鼻からの出血や透明な液体、耳の後ろや目の周りのあざ、頭のへこみ、乳児の大泉門の膨らみなどが見られる場合
- 神経学的異常: ろれつが回らない、手足の動きが悪い・左右差がある、真っすぐ歩けないなどがある場合
- 危険な受傷機転: 高速での交通事故、3メートル以上(幼児は1メートル以上)の高さからの転落などの経緯がある場合
2. 黄信号……急いで救急外来を受診する
救急車を呼ぶほどの緊急性の高さはないものの、当日中に必ず救急外来を受診してください。
- 短時間の意識消失:5分未満
- 記憶喪失(健忘):けがの前後5分以上の出来事を思い出せない
- 嘔吐:3回以上
- 異常な眠気:呼び掛けに鈍い、普段より眠そう
- 持続する頭痛:治まらない、悪化する
- 高リスク年齢:1歳未満の乳児
3. 青信号……自宅で慎重に経過観察する
上記の赤信号・黄信号のサインがいずれもなく、お子さんが元気で意識もはっきりしていて、普段通りに遊んでいる場合は、ご自宅での経過観察でよいでしょう。 具体的には、打った直後に泣いたものの、その後は意識もはっきりしていて普段通りに遊んでいる場合は、病院を受診してもそのまま自宅での経過観察をすすめられることが多く、問題ないことがほとんどです。
ただし、遅れて症状が出る可能性もあります。少なくとも24~48時間は、注意深く様子を見守ってください。もし途中で黄信号・赤信号のサインが現れた場合は、すぐ受診しましょう。
救急外来で多くの頭部外傷を診た経験から思う、親がすべき大切なこと
救急外来で診る子どもの頭部外傷の原因は、「ベビーカーから落ちてしまった」「よちよち歩きで転んだ」「目を離したすきに階段から落ちた」「よそ見をしていて友達と頭をぶつけた」「チャイルドシートや抱っこ紐から落としてしまった」など、さまざまです。場所も、家庭内、保育園・幼稚園、外出先などを問いません。子どもがフローリングに頭を打ちつけた大きな音を聞いたり、たんこぶで腫れた頭や、激しく嘔吐する様子を見たりすると、自分や子どもを責めてしまうかもしれません。しかし大事なのは初期対応と冷静な判断です。
頭を打った痛みが消えるわけではありませんが、まずは子どもを抱きしめて安心感を与え、優しい言葉で正しく症状を聞くことです。子どもは症状を正確に伝えられないものです。ましてや怒られるかもしれないと感じると、正しい症状を伝えない可能性もあります。しつけも大切ですが、まずは子どもの気持ちに寄り添った対応が必要です。
また、打った直後に元気でも、数日たってから何となく元気がなくゴロゴロするようになったり、頻繫に嘔吐したり、頭痛を訴えたりするケースもあります。その場合、「硬膜下血腫」を起こしている可能性もあります。初期24時間(特に6時間)が重要とされますが、1~2週間の経過観察が必要です。
いずれにしても、子どもの受診には「説明と同意」が可能な保護者の付き添いが必須となります。 そばにいる大人がしっかりと子どもを見守ることが重要です。
まとめ:お子さんの「未来の脳」を守るために
子どもの頭部外傷は決して軽視できません。初期対応と正しい判断が、お子さんの将来を左右します。今回挙げた、「危険なサイン」を知っておくことは重要でしょう。しかし、判断に迷うこともあると思います。そのときは「過剰かな?」と思っても、医療機関を受診してください。放置して取り返しがつかなくなった場合、大きな後悔につながります。一人で抱え込まず、かかりつけ医や地域の医療機関に相談しください。早期の対応と適切なサポートが、お子さんの「未来の脳」を守る第一歩です。■参照
※1:J Dunning,J Patrick Daly,J-P Lomas,et.al.Derivation of the children's head injury algorithm for the prediction of important clinical events decision rule for head injury in children.Arch Dis Child. 2006 Nov;91(11):885-91.
※2:NICE guideline「Head injury: assessment and early management」