「保険に入りたいけど、経費もかかるし後回しにしている……」そんな方に知ってほしいのが、労災保険の「特別加入制度」です。
今回は、個人事業主やフリーランスでも加入できるこの制度の内容や保険料、手続き方法などを分かりやすくご紹介します。
労災保険ってそもそも何?
労災保険は、本来、会社などに雇われて働く人を対象とした公的な保険制度で、仕事中や通勤中のケガ・病気・死亡などに対して補償を受けられる制度です。しかし実は、個人事業主やフリーランスの方も、一定の条件を満たせば「特別加入制度」を通じて労災保険に加入することが可能です。
この制度は、建設業などで働く「一人親方」や「中小企業の事業主」「個人事業主」など、雇われてはいないが自ら働いて収入を得ている人たちのために設けられています。加入にあたっては、新たに特別加入団体を作って申請する方法、特別加入団体を通じて加入する方法の2つがありますが、加入すれば、就労中の万が一に対する補償が受けられるようになります。
「働けなくなったら、収入が激減する」という立場にある方々にとって、まさに「備えておきたい保険」と言えるでしょう。
●労災保険の特別加入の対象になる個人事業主
近年は労災保険の特別加入の対象が拡大しています。主に以下の方々の加入が認められています。
・原付・自転車での貨物運送事業者
・特定受託事業者として想定される職種
該当するのは、営業、講師、インストラクター、デザイン、コンテンツ制作、調査、研究、コンサルティング、翻訳、通訳、データ、文書入力などがあります。
・芸能関係作業従事者
・アニメーション制作作業従事者
・創業支援等措置に基づき事業を行う者
高年齢者等の雇用の安定に関する法律に基づく、65歳から70歳までの就業確保措置のうち、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度で働く人などが該当します。
・ITフリーランス
・柔道整復師
・あんまマッサージ指圧師・はり師・きゅう師
・歯科技工士
個人事業主の方が加入手続きをする際は「特定作業従事者」「一人親方等」など区分の違いがありますので、よく確認しましょう。
特別加入制度での保険料と給付額の目安
特別加入制度での保険料や、休業(補償)等給付などの給付額を算定する基礎となるものを「給付基礎日額」と言います。特別加入制度に加入する際、給付基礎日額を3500円から2万5000円の範囲で選択することになり、この金額に基づいて、保険料や給付額が決定されます。 年間保険料の計算方法は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)に、それぞれの事業に定められた保険料率を乗じます。
保険料率の詳細は以下のリンクを参照してください。
厚生労働省「特別加入制度のしおり(特定作業従事者用)」P13
例えば、ITフリーランスに従事している場合の保険料率は3/1000。給付基礎日額が2万円の場合、年間保険料は2万1900円となります。
また、介護作業従事者の場合、保険料率は5/1000。給付基礎日額が2万円の場合、年間保険料は3万6500円となります。
給付基礎日額を高く設定すると、万が一の際の補償額も増えますが、保険料も高くなります。自身の収入や生活状況に応じて、適切な給付基礎日額を選択することが重要です。
特別加入制度への加入方法と必要な手続き
個人事業主やフリーランスの方が労災保険に入るには、新たに特別加入団体を作って申請する方法、特別加入団体を通じて加入する方法の2つがあります。新たに特別加入団体を作って労災保険の特別加入を申請する場合は、「特別加入申請書」を、労働基準監督署を経由して所轄の都道府県労働局長に提出します。
また、すでにある特別加入団体を通じて加入する場合は、団体が手続きを代行してくれます。
どちらの場合も申請の際は、特別加入を希望する人の業務の具体的な内容、業務歴および希望する給付基礎日額などの情報が必要です。
まとめ
労災保険は、働く人を守るために設けられた制度で、給付内容も充実しています。個人事業主やフリーランスでも「特別加入制度」を利用すれば、仕事中や通勤中の万が一のリスクに備えることが可能です。自分の身を守る手段として、ぜひ検討してみてください。参照:労災保険への特別加入|厚生労働省