暮らしの中で食費がどのくらいを占めているかを知るための指標が、「エンゲル係数」です。今回は、このエンゲル係数を使って、「ちょうどよい暮らし」について考えてみましょう。
エンゲル係数とは?
エンゲル係数とは、「消費支出のうち、食費が占める割合」を示したものです。家計において、食費がどのくらいの比重を占めているかを測る指標であり、生活のゆとりや支出のバランスを知る手掛かりにもなります。以下の計算式を使って算出します。
・エンゲル係数=食費÷消費支出×100(%)
●日本の平均エンゲル係数はどのくらい?
総務省の「家計調査 家計収支編(2024年)」の「世帯主の年齢階級別 1世帯当たり1カ月間の収入と支出」というデータを参照すると、二人以上の世帯(勤労者世帯・無職世帯含む)の平均エンゲル係数は「28.3%」となっています。
これは、1カ月の食費が約8万5040円、消費支出全体が約30万243円というデータから算出されたものです。
ここでいう食費には、自炊に必要な食材のほか、外食費、お酒やお菓子などの嗜好品、さらには給食費など、食事に関する全ての支出が含まれます。
一方の消費支出には、食費に加えて、水道光熱費・通信費・教育費・娯楽費・医療費など、日常生活にかかる全ての支出が含まれます。
このようにエンゲル係数は、家計全体の中で「食費がどれくらいの割合を占めているか」を知ることができます。
エンゲル係数は「高い=悪い」ではない
「エンゲル係数が高い=食費にお金をかけ過ぎ」と単純に考えてしまいがちですが、実はそうとも限りません。例えば、
(A)消費支出10万円/食費3万円→エンゲル係数30%
(B)消費支出50万円/食費14万円→エンゲル係数28%
この例では、(B)のほうが食費は多いですが、全体の消費支出が多いため、エンゲル係数は低くなっています。
逆に、(A)のように生活費が少ない家庭では、必要な食費の割合がどうしても高くなりがちなのです。
つまり、エンゲル係数は「消費支出に対する食費の比率」であって、食費がかかり過ぎていることを示すものではないという点がポイントです。
自分にとっての「適正な食費」は?
では、どれくらいの食費が「ちょうどいい」と言えるのでしょうか。一般的には、消費支出に対して「25~30%」が目安とされています。ただし、それはあくまで1つの指標。
「外食が多い」「健康志向で食材にこだわっている」「地方で物価が安い」など、暮らし方や価値観によって適正なバランスは異なります。大切なのは、以下のような視点で自分の家計を見直すことです。
・食費が収入に見合っているか?
・他の支出(通信費・交際費など)とのバランスは?
・「ムダ遣い」ではなく「満足できる使い方」になっているか?
エンゲル係数から見えてくる「ちょうどよい暮らし」
「うちの食費、多過ぎるのかな?」「節約できているのかな?」と気になる方は、一度エンゲル係数を算出してみましょう。数字で確認することで、今の生活スタイルや支出の傾向を客観的に見直すきっかけになります。例えば、節約を意識し過ぎて「とにかく安い食材ばかりを選び、食事が味気なくなってしまった」という人がいる半面、「健康のためにオーガニック食品や減塩・無添加の商品を選ぶようにしていたら、いつの間にか食費が増えてしまった……。その結果、思ったように貯蓄ができなくなっている……」といったケースも見受けられます。
また、たまの手抜きのつもりでも、外食やテイクアウトを習慣にしてしまうと、気付けば家計を圧迫していた……ということもあります。
エンゲル係数は、「食費をいくら使っているか」よりも、「自分にとって納得できるバランスでお金を使えているか」を確認するヒントになります。自分らしく、心地よく暮らせる家計バランスを見つけていきましょう。